「溶解(ようかい)」と「融解(ゆうかい)」は似ている化学現象ですが、まったく別物です。ただ、どちらも「とける」ことが現象の中心にあるため、違いがわかりにくいという方もいるのではないでしょうか。
以下では、具体例も交えながら、「溶解」と「融解」の違いについて解説します。
結論:何かにとける「溶解」、自らとける「融解」
一方、「融解」とは、結晶構造をもつ固体が、自ら溶けて液体に変わる現象を指します。
「溶解」をもっと詳しく
「溶解」とは、ある気体・液体・固体が他の液体や固体と混ざり、それぞれが均一に分布した状態になることを指します。英語では dissolution と言います。気体と気体が混ざることは「溶解」とは言いません。
液体への「溶解」
「溶解」は、特に気体・液体・固体が、他の液体に溶けることを指します。たとえば、食塩水は、食塩という固体を、水という液体に「溶解」した結果できたものです。
「溶解」の流れは、次のように、他の用語と合わせて押さえるとイメージが湧きやすくなります。
まず、「溶質」とは、液体に溶かされる物質のことです。上記の例では、食塩が溶質です。
続いて、「溶媒」とは、物質を溶かす際に用いられる液体のことです。漢字を分解して考えると、「溶」質を溶かす際に「媒」介する物質となります。上記の例では、水が溶媒です。
そして、「溶液」とは、溶質が溶媒に溶けた(溶解された)結果できる混合液です。上記の例では、それが「食塩水」となっています。
固体への「溶解」
「固体」にが溶けるという現象はメージしにくいかもれませんが、こちらも「溶解」として定義される現象です。たとえば、合金や鉱物は、固体に何かが「溶解」した例です。
合金は、もとの金属という固体に、ある金属原子がもとの構造を保ったまま混ざっています。また、鉱物も、ある原子と原子が、もとの構造を保ったまま混ざりあい、新たな固体を形成しています。
ちなみに、固体にある物質が溶け込み、また新たな固体としてできあがったものを固溶体と言います。
「溶解」の使い方の例
- 炭酸水は、炭酸ガスが水に溶解してできたものである。
- 食塩よりも、砂糖の方が、水に対する溶解度が高い。
たとえば、20℃で 100g の水に対して、食塩は約35g、砂糖は約204g 溶けるとされています。この時、それぞれ「20℃の水に対する食塩の溶解度は 35g」「20℃の水に対する砂糖の溶解度は 204g」と表現します。
また、「溶解」のしやすさは、物質ごとに違うのはもちろん、溶媒の温度によっても変わっています。一般に、溶媒の温度が高いほど、物質は「溶解」しやすくなります。
「融解」をもっと詳しく
「融解」とは、結晶構造を持つ固体が液体に変わることを指します。英語では melting と言います。「融解」は、「溶融(ようゆう)」とも表現されます。
結晶構造とは、分子や原子が規則正しく配置されていることを言います。「溶解」との違いは、固体に限定した話であるという点と、それ自身のみで姿を変えるという点にあります。
たとえば、氷が溶けて水に変わることや、鉄が高温で溶けることは「融解」と言います。また、溶かすために加熱することを「融解する」と表現します。
結晶でない固体が液体になることは「軟化(なんか)」
「融解」に対して、結晶構造を持たない固体が液体になることは「軟化」と言います。
結晶構造でない物質の代表的な例としては、ガラスが挙げられます。「軟化」の場合は、すぐに液体になるのではなく、文字通り固体が徐々に軟(やわ)らかくなっていくという変化を遂げます。
「融解」の対義語
「融解」の対義語は「凝固(ぎょうこ)」と言います。こちらも、化学現象です。
「凝固」は、液体から固体へと変化する現象を指します。ある物質について考える時、その物質が「固体」から「液体」へと変化する温度と、「液体」から「固体」へと変化する温度は一致します。前者を融点(融解点)、後者を凝固点と言います。
「融解」の使い方の例
- 鉄が融解する温度は、1538℃と言われている。
- 食塩は、800℃で融解する。
①は、鉄が溶けて液体になりだす際の温度が 1538℃であると述べています。
②では、食塩を水等に混ぜるのではなく、食塩そのものを加熱して液体にしようとする時の話をしています。「溶解」か「融解」かで、出てくる温度の規模感がまったく異なるため、使い分けには注意しましょう。
まとめ
以上、この記事では、「溶解」と「融解」の違いについて解説しました。
- 溶解:ある気体・液体・固体が、他の液体や固体に溶け込んで等しく混ざること
- 融解:結晶構造をもつ固体が、自ら溶けて液体に変わる現象