「直接民主主義」と「間接民主主義」という2つの言葉を聞いたことがあるでしょうか。
「自分たちのことは自分たちで決める」という考え方である民主主義の種類としてこの2つが存在しています。
この記事ではこの2つの違いについてわかりやすく解説していきます。
結論:【誰が決めごとをするのか】が直接民主主義と間接民主主義の差
全員ではなく、代表者を人々が選び、その代表者が決めごとをするのが間接民主主義。
直接民主主義をもっと詳しく
直接民主主義とは「全員で決める」という考え方です。
この考え方は「自分たちのことは自分たちで決める」という理念を持つ民主主義の理想形とも言えます。
なぜなら、直接民主主義は「100人いたら100人で決めごとをする」ので「人々が思っていること」と「実際に決定されること」とのズレが最小限になり、そのため「自分たちのことは自分たちで決める」度が高くなるからです。
しかし、「全員で決める」ということは口で言うほど簡単なことではありません。日本を例にとって考えてみましょう。
現在、日本には約1億3000万人の人が暮らしています。この1億3000万人が一堂に集まり、話し合って何かを決定することが可能でしょうか。
不可能ではないかもしれませんが意見を1つに集約させることはとても難しいであろうということは容易に想像がつきます。
また、「日本の経済を好転させるためにはどのような政策が有効か」という議題があるとします。それについて1億3000万人が関心と知識を持つことはとてもハードルが高いものです。
そして、議題とは基本的に1つではなく、常に同時進行で複数の問題が議論されます。それらについて一般市民が自分たちの生活をしながら、議題についての個別の意見を持つことは不可能に近いでしょう。
つまり、直接民主主義は民主主義の理念に限りなく近い考え方でありながら、それを恒常的に行っていくことには膨大な労力が必要になるということです。
日本における直接民主主義の例
- 国民投票
- 住民投票
- 国民審査
間接民主主義をもっと詳しく
間接民主主義は「全員ではなく、代表者が決めごとをする」という考え方です。この考え方は「自分たちのことは自分たちで決める」という民主主義の理念と相反するように見えます。
なぜなら、「自分たち」ではなく、「自分たちの代表者」が決めごとをするからです。
ということは、「全員で決める」直接民主主義と比較したとき、間接民主主義は「人々が思っていること」と「実際に決定されること」とのズレが大きくなります。
それはつまり、「自分たちのことは自分たちで決める」度が低くなるということです。
では、間接民主主義がと直接民主主義よりも考え方として劣っているかというと、そういうことではありません。
その理由は先ほど挙げた直接民主主義の問題点にあります。
その問題点とは「意見の集約に時間がかかりすぎる」、「一般市民が様々な社会問題に対し自分の生活をしながら、知識・関心・意見を持つことは難しい」というものでした。
この2つの難点を間接民主主義は解決することができます。
間接民主主義は「全員ではなく、代表者が決めごとをする」ものです。それはつまり直接民主主義と比べ、そもそも議論に参加している頭数が圧倒的に少ないということになります。
1億3000万人で議論するよりも、100人で議論したほうが意見を1つにまとめることが簡単なのは明らかです。間接民主主義は直接民主主義に比べ、かかる時間という点において優れていると言えます。
また、議論に参加するのは一部の代表者だけなので、一般市民が自分の生活をしながら社会問題に対して常に知識・関心・意見を持つ必要はなくなります。それが必要となるのは議論を行う代表者だけです。
代表者たちは議論を行うことが仕事となるので、議論に専念することができます。
自分の生活と両立しながら議論を行う場合と専念する場合とで、後者のほうが議論の質が上がるのは火を見るよりも明らかなことです。
間接民主主義は直接民主主義と比べ、議論の質が優れていると言えます。
日本における間接民主主義の例
- 議会制
- 選挙
まとめ
以上、この記事では直接民主主義と間接民主主義の違いについて解説しました。
- 直接民主主義:「自分たちのことは自分たちで決める」度は高いが、時間や手間がかかり、議論の質は低い
- 間接民主主義:「自分たちのことは自分たちで決める」度は低いが、時間や手間はかからず、議論の質は高い
何を重視するかの差で、どちらが優れている、劣っているというものではありません。
「国民の意見がしっかりと聞きたい!」というものに関しては直接民主主義的制度で対応し、「早急に対応していかなければならない」というものに関しては間接民主主義的制度で対応する。
このように、2つの制度をうまく組み合わせることで各国の政治は成り立っています。