「尊厳死」と「安楽死」の違いとは?わかりやすく解説

違いのギモン

人間なら誰でもいつかは死を迎えることになりますが、その形にはさまざまなものがありますよね。

そして、その死を迎え方には「尊厳死」や「安楽死」というものもあります。これらは日本では認められていませんが、一部の国では認められていて、いろんなところで議論になる死の形です。

ところで、「尊厳死」と「安楽死」は似たような言葉ですが、きちんと使い分けがあります。それについて知っている人はあまりいないのではないでしょうか。

そこで、今回は「尊厳死」と「安楽死」の違いについて解説していきたいと思います。

結論:目的が違う

「尊厳死」と「安楽死」とでは目的が違います。

「尊厳死」は人間が尊厳を持って死ぬために行われます。

一方、「安楽死」は人間を苦痛から解放してあげるために行われます。

「尊厳死」をもっと詳しく

尊厳死は人間が尊厳を持って死ぬために行われます。

具体的には回復の見込みがない傷を負っていたり病を抱えてたりする人に対して、本人の生前の意思に基づき、人工呼吸器や点滴などの生命維持装置をはずし、人工的な延命処置を中止して、寿命が来た時に自然な死を迎えさせることを指します。

これは、植物状態などの時、人工的な延命措置によって生命を維持することは人間としての尊厳を保っていないと本人が考えた場合、人工的な延命処置を受けず、自然な死を選ぶ権利があるという考え方に基づいています。

確かに、機械のように生かされている状態は人間としての尊厳がないと考えることができますよね。

 

そして、尊厳死は長い間違法でしたが、最近ではQOL(人生の質)を重視する考えかたが広まり、尊厳死が認められる国も出てきました。例えば、スイスやオランダやベルギーなどでは尊厳死が認められています。ただ、日本を含め、多くの国ではまだ認められていません。

そして、尊厳というものは人間の主観的な概念なので、厳密な定義があいまいであるという問題点もあります。

 

ちなみに、尊厳死は専門的には安楽死の一種であり、消極的安楽死とも呼ばれます。

そして、ここまでは尊厳死の専門的な定義について解説してきましたが、一般的にはもう少し広い意味で使われています。

一般的には自分の意思で決めた死にかたを実現することができればすべて尊厳死だと言うことができます。

「安楽死」をもっと詳しく

安楽死は人間を苦痛から解放してあげるために行われます。

ちなみに、安楽死も日本では認められていません。

ただ、助かる見込みがない人に延命処置を強制することは本人だけでなく家族の負担も大きいため、安楽死が認められている国もあります。

そして、安楽死は大きくわけて、純粋安楽死、間接的安楽死、消極的安楽死、積極的安楽死の4つにわけられます。

消極的安楽死は尊厳死の項で解説したので、ここからはそれ以外の3つの安楽死について解説していきたいと思います。

純粋安楽死

純粋安楽死とは末期患者の苦痛を取り除くための処置を行っていたら、寿命の短縮が起きない形で死を迎えることになった安楽死のことです。

そして、これは理想的な安楽死の形です。

間接的安楽死

間接的安楽死とは末期患者の苦痛を取り除く処置を行っていたら寿命の短縮が起こってしまった安楽死のことです。

積極的安楽死

積極的安楽死とは、回復の見込みがなく、苦痛が激しい末期の傷を負った人や病気を持っている人などに対して、本人の意思に基づき、薬物の投与などによって人為的に死を迎えさせることです。

そして、これまでにも述べてきたとおり、日本では認められていませんが、1993年に起きた東海大学安楽死事件の判決では、安楽死が認められる4つの条件が示されました。

 

条件の1つめは患者に耐えがたいような激しい肉体的苦痛があることです。

次に2つめは患者の死が避けられず、その死期が迫っていることです。

また、3つめは患者の肉体的苦痛を除去したり緩和したりする方法を尽くし、安楽死のほかに代替手段がないことです。

そして、4つめは患者自身による安楽死を望む意思表示があることです。

 

これらの条件を満たせば合法であるとされていますが、実際に安楽死が認められた例はありません。

まとめ

以上、この記事では、「尊厳死」と「安楽死」の違いについて解説しました。

  • 尊厳死:人間が尊厳を持って死ぬために行われる
  • 安楽死:人間を苦痛から解放してあげるために行われる

このように、「尊厳死」と「安楽死」は違う言葉です。これらは本人の意思を尊重した死の迎えかたと言えるでしょう。しかし、どちらも日本では認められていません。

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和佐 崇史
文章を書くこと、読むことが大好きな大学生です。中学2年生で漢検2級を取得するなど、言葉については詳しい自信があります。Webライターとしてはこれまで累計1,000記事以上を執筆してきました。