ことわざ「死人に口なし」の意味とは?類義語から英語訳まで解説

言葉

今回ご紹介する言葉は、ことわざの「死人に口なし(しにんにくちなし)」です。

言葉の意味や使い方、類義語、英語訳についてわかりやすく解説します。

☆「死人に口なし」をざっくり言うと……

読み方死人に口なし(しにんにくちなし)
意味死んだ者は無実の罪を着せられても釈明ができないということ、死んだ者からは何の証言も得られないということ
類義語死人に妄語、死屍に鞭打つ、死者に鞭打つ
英語訳Dead men tell no tales. (死んだものは何も話さない。)

「死人に口なし」の意味をスッキリ理解!

死人に口なし(しにんにくちなし):死んだ者は無実の罪を着せられても釈明ができないということ

「死人に口なし」の意味を詳しく


「死人に口なし」には、意味が二つあります。それぞれ、「死んだ者は無実の罪を着せられても釈明ができないということ」「死んだ者からは何の証言も得られないということ」です。

二つの意味のどちらにも共通するのは、死んでしまった人間には何も話すことができないということです。一見当たり前の事実が、転じてことわざとして意味を持つようになりました。

 

まず、一つ目の「死んだ者は無実の罪を着せられても釈明ができないということ」についてです。当たり前ですが、死んでしまった人は、何をされたとしてもそれに対してコメントすることはできません。

それは、たとえその人が全く見覚えの無い罪をかぶせられた場合もです。そのため、死んでしまった人は時に、生きている人に利用されることがあるのです。

逆に、生きている人は、たとえ自分が犯した罪や悪事も、死んだ人のせいにすれば追及されることは無いのです。

 

次に、二つ目の「死んだ者からは何の証言も得られないということ」についてです。重要な事実を握っていた人も、死んでしまえばそれについて証言することはできません。

その重要な事実を知っている人がその人だけだとしたら、その人と共に闇に葬(ほうむ)られるわけです。これは、時に殺人につながることもあります。

 

何か、絶対に知られたくない重要な事実をある人に知られてしまったとします。口止めを頼むのが一番賢い手段でしょう。しかし、必ずしも口止めができるとは限りません。

例えば、元から自分と敵対する人に対しては、口止めなど普通はしません。すると、人によっては、その事実を闇に葬るためにも殺人に手を染めるわけです。

 

もちろん、殺人につながるような場面以外でも使用します。その人が持っていた知恵や考え方が、その人が死んでしまったことにより聞けなくなってしまうと惜しむことも一つの例です。

このように、「死人に口なし」ということわざを使う場面は、基本的にあまりよくない状況です。人の死が絡んだことわざですので、使い方にも気を付ける必要があります。

「死人に口なし」の使い方

  1. 逮捕された犯人は死人に口なしをいいことに、亡くなった被害者を悪者にしようとしている。
  2. 妻は亡くなった夫の悪口をひたすら言い続けている。夫からしたら、死人に口なし、弁明できず悔しいだろう。
  3. 殺人事件の犯人は、自分が会社のお金を横領したことを知った人を殺害した。死人に口なしということでの犯行だったが、横領よりもさらに重い罪を犯す結果となった。
  4. 彼はノーベル賞を狙える研究をしていたが、昨晩亡くなった。死人に口なし、研究の重要な部分を聞いておくべきだった。
  5. 彼は、亡くなった友人の成果を、死人に口なし、自分の成果にしようとしている。

➀、➁は、一つ目の意味である、「死んだ者は無実の罪を着せられても釈明ができないということ」の例文です。

➂~➄は、二つ目の意味の、「死んだ者からは何の証言も得られないということ」の例文です。

 

➀は、犯人が自分の犯した罪は、自分が殺害した被害者が元は悪かったということで、人のせいにしようとしている場面です。

➁は、妻は夫が無くなり、弁明されないことをいいことに、夫の悪口を言い続けている様子です。

➂は、会社のお金を横領した事実を知る者を、その事実と共に葬り去ろうとして殺害してしまった場面です。結果としては、二つの罪を犯すことになりました。

➃は、研究についての重要な部分を聞いて無かったことで、研究者とともにその研究も葬り去られてしまった場面です。

➄のように、亡くなった人が証言できないことをいいように、その人の成果を自分のものにしようとするような場面でも使います。

「死人に口なし」の類義語

「死人に口なし」には以下のような類義語があります。

  • 死人に妄語(しにんにもうご):生きている者が嘘をついて、死んだ者に罪を被せてしまうこと
  • 死屍に鞭打つ(ししにむちうつ):死んだ人の生前の言葉や行動を非難すること
  • 死者に鞭打つ(ししゃにむちうつ):死んだ人の生前の言葉や行動を非難すること

一つ目の、「死人に妄語」の「妄語」とは、嘘をつくことを意味します。

「死人に口なし」の英語訳

「死人に口なし」を英語に訳すと、次のような表現になります。

  • Dead men tell no tales.
    (死んだ者は何も話さない。)
  • Hares may pull dead lions by the beard.
    (死んだライオンのヒゲなら、ウサギでも引っ張れる。)

“hare” は野ウサギ、 “beard” はヒゲを意味します。

まとめ

以上、この記事では「死人に口なし」について解説しました。

読み方死人に口なし(しにんにくちなし)
意味死んだ者は無実の罪を着せられても釈明ができないということ、死んだ者からは何の証言も得られないということ
類義語死人に妄語、死屍に鞭打つ、死者に鞭打つ
英語訳Dead men tell no tales. (死んだものは何も話さない。)

「死人に口なし」は、二つの意味で用いられますが、どちらも「亡くなった人は何も話すことができない」ことが共通しています。

それをいいことに亡くなった人に罪を被せたり、文句を言ったりするのはよくありません。また、何か大事なことを知っている人からは早めに情報を聞いておくことも必要かもしれません。

「死人」という言葉を使ったことわざですので、使い方には気を付けましょう。