「ゼネコン」と「ハウスメーカー」と「工務店」の違いとは?

違いのギモン

町には、色々な建物があります。住宅、ビル、橋、学校、東京タワー。一体どのような会社が建てたのでしょうか。

建設に携わる企業の形態としては、「ゼネコン」「ハウスメーカー」「工務店」の3種類があります。どれも聞いたことがある単語だと思いますが、具体的に、それぞれがどのような仕事をしているのか、分からない人も多いでしょう。

今回は、そんな「ゼネコン」「ハウスメーカー」「工務店」の違いを、わかりやすく解説します。

結論:公共事業と、規格化された住宅と、自由な住宅

「ゼネコン」は、企業や国や地方自治体と契約し、大規模な建設業務を行います。

「ハウスメーカー」は、ある程度規格が決まった住宅を個人に販売します。

「工務店」は、拠点とする地域周辺で、住宅を建てたい人と話し合い、家を作ります。

「ゼネコン」をもっと詳しく

「ゼネコン」とは、主に企業や国、地方自治体から建築業務を請け負い、大規模な建設を行う会社のことです。

「ゼネコン」は、 “general contractor” を略した言葉であり、直訳すると「全般的な請負者」となります。つまり、何か1つの分野に対し専門的なのではなく、土木・建築関連の仕事を広く行います。

具体的には、次のような設備の建設・整備・補修を行います。

  • 公益施設:市役所・庁舎・大使館・学校・美術館
  • 企業拠点:物流施設・工場・研究施設・オフィスビル
  • インフラ:道路・トンネル・発電施設・ダム・駅・立体駐車場
  • アミューズメント:大型商業施設・展望台・ホテル・テーマパーク

挙げたものは、一例であり、これ以外にも幅広い建築業務を請け負います。

また、「ゼネコン」の中でも、特に規模が大きく、年間売り上げが1兆円以上の企業のことを「スーパーゼネコン」と言います。具体的には、次の5社が「スーパーゼネコン」に該当します。

  • 鹿島建設
  • 清水建設
  • 大成建設
  • 竹中工務店
  • 大林組

これらの企業が、日本の代表的な建造物の多くを作ってきました。例えば、東京スカイツリーを施工したのは、大林組です。一方、東京タワーを施工したのは、竹中工務店です。

「ゼネコン」と談合

談合とは、公共事業などの入札の際に、ライバル企業と協力し、入札する企業を事前に決めておくことです。

通常であれば、ライバル企業同士が競争することにより、各企業が利益が出るであろうギリギリのラインまで受注額が下がります。

しかし、企業同士が談合した場合、あらかじめ受注する企業が決まっているため、企業は相場よりも高い値段を宣言しても、受注できることになります。その結果、発注した側は不当に高い報酬を支払うことになります。

 

このような、競争を避け、価格を操作することを合意した企業同士の結び付きのことを「カルテル」といいます。カルテルの形成による不当な企業間の関係は、独占禁止法により禁止されており、公正取引委員会が取り締まっています。

談合と「カルテル」の形成は、業種・業界を問わず、少ない企業が市場を独占している場合に行われます。そして、規模が大きな公共事業を行う場合、それを実現する技術・人員・資金があるゼネコンは限られてしまうため、「ゼネコン」の談合や「カルテル」の形成が問題となることがあります。

 

2017年の12月にも、東京地検特捜部と公正取引委員会が、リニア中央新幹線建設工事を担当していた4社(鹿島建設、大成建設、清水建設、大林組)を強制捜査しました。これの企業は、先ほど紹介した「スーパーゼネコン」に該当する企業です。

この「ゼネコン」4社の談合により、リニア開業が予定の2027年に間に合わないのではないかと懸念されています。

「ハウスメーカー」をもっと詳しく

「ハウスメーカー」とは、日本国内で社会的に広く認知されている住宅の建設・販売会社です。顧客は、主に個人であり、ある程度パターン化された家をつくります。英語では “housing manufacturers” です。

個人向け住宅に関するCMを流したり、住宅展示会を開催している企業は「ハウスメーカー」です。「ゼネコン」や「工務店」とは違い、人々に対して広く、積極的に宣伝することが多いです。

具体的には、次のような企業が「ハウスメーカー」に該当します。多くの企業名には「ハウス」「ホーム」という言葉が入っています。

  • タマホーム
  • 一条工務店
  • 住友林業
  • ダイワハウス
  • 積水ハウス
  • セキスイハイム
  • ハウス工業
  • パナソニックホームズ
  • ヘーベルハウス
  • ミサワホーム

個人住宅の中でも、アパートやマンション、一戸建てなどの種類がありますが、基本的に「ハウスメーカー」はその全てを建設・販売します。しかし、企業により、得意・不得意がある場合もあります。

「工務店」との一番の違いは、家の間取り・大きさが規格化されていることです。つまり、「ハウスメーカー」に家を建築してもらった場合、同じ設計の家が他に多数存在する可能性があります。

 

規格化のメリットとしては、工事期間が短く住むこと、洗練された設計であること、住宅展示会で住宅を建てる前に同じ設計の家に入れることがあります。

デメリットとしては、家を建てたい人の希望・融通が反映されづらいことや、広告費により「工務店」よりも割高であることが挙げられます。

 

また、「ハウスメーカー」は建築後のアフターケアが充実しているのも特徴です。

元々住宅瑕疵担保履行法(じゅうたくかしたんぽりこうほう)により、新しく建築した住宅には、10年間の欠陥補償が義務付けられています。しかし、「ハウスメーカー」は、それに加えて独自に保証やメンテナンスを行っていることが多いです。

さらに、「ハウスメーカー」の多くが、住宅トラブルの24時間対応のコールセンターサービスを実施しています。

「工務店」をもっと詳しく

「工務店」とは、拠点とする地域周辺で、住宅を建てたい人と話し合い、家を作る店や会社のことです。

「工務店」の強みは大きく2つあります。1つは、広告・宣伝を熱心に行うことがない分、建設費が「ハウスメーカー」よりも安い傾向にあることです。

もう1つは、家の規格が決まっていない分、間取りや大きさなど、家の要望を取り入れてもらいやすいことです。実際に建設する人と直接話し、イメージを具体的に伝えることもできます。

そのため、自分の家にこだわりがある人は、「ハウスメーカー」よりも「工務店」の方が適しています。

まとめ

以上、この記事では、「ゼネコン」「ハウスメーカー」「工務店」の違いについて解説しました。

  • ゼネコン:企業や国や地方自治体と契約し、大規模な建設業務を行う
  • ハウスメーカー:積極的に宣伝を行い、ある程度規格が決まった住宅を建設・販売する
  • 工務店:拠点とする地域周辺で、住宅を建てたい人と話し合い、家を作る

「ゼネコン」は、公共事業や大規模工事を担うという点で、「ハウスメーカー」や「工務店」とは区別されます。

「ハウスメーカー」と「工務店」の区別としては、合理的で大規模な現代風の「ハウスメーカー」と、地域の建設を支える昔ながらの「工務店」と定義できます。

「ゼネコン」も「ハウスメーカー」も「工務店」も、私たちの街づくりに重要な役割を担っています。しっかりと違いを知っておきましょう。