今回ご紹介する言葉は、カタカナ語の「コンピテンシー」です。
「コンピテンシー」の意味・使い方・語源についてわかりやすく解説します。
☆「コンピテンシー」をざっくり言うと……
英語表記 | competency(能力) |
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意味 | 良い結果につながる行動の特性 |
語源 | ラテン語の “competō” |
「コンピテンシー」とは?
「コンピテンシー」の意味を詳しく
「コンピテンシー」とは、結果に結び付きやすい個人の性質のことです。個人をコンピテンシーに基づいて評価することが増えています。
新しい人材評価の方法「コンピテンシー評価」
個人を評価するときには、様々な評価軸があります。結果に基づいて評価したり、性格にもとづいて評価したりしますよね。
結果主義は一見公正な評価のように思えます。しかし、たまたま運が良かったために良い結果を残せた人と、結果は出せなかったものの高い能力を持つ人であれば、後者の人の方が将来の成長が期待できます。
一方、性格に基づく評価をしても、評価される性格が結果に結び付くとは限りません。たとえば、「明るい性格」は、人と接する仕事には生かされる性格かもしれませんが、地道な作業をする上ではあまり重要ではありません。
そこで、コンピテンシーに基づく評価「コンピテンシー評価」が広まっています。コンピテンシー評価では、「行動」から人を評価します。性格や結果に基づくものではありません。
たとえば、「1日に何人と会話したか」とか「コミュニケーション能力が高い」といった指標は、結果や性格に基づく従来の評価基準です。一方、「人の話をよく聞く」のは行動です。
人の話をよく聞くことは、何においても重要です。人の話をよく聞ける人の方が良い結果を残しやすいと考えるのは自然でしょう。
ただし、コンピテンシー評価には問題点もあります。
具体的な行動に基づいて客観的な評価をしようとしても、評価する人の主観が入ってしまいます。行動の特性は数字で表せないからです。そのため、評価が偏るおそれがあります。
また、コンピテンシーはあまり持っていなくても良い成果を出せる人もいます。こうした人にとっては、コンピテンシー評価は自分が不当に低く評価されると感じるでしょう。
OECDが定める「キー・コンピテンシー」と現代の教育
「コンピテンシー」は、先進国が集まる「経済開発協力機構(OECD)」によって、教育の目標に取り入れられています。
ここでは、コンピテンシーは「課題解決能力」という意味でとらえられています。教育の目的の一つに、コンピテンシーの養成が挙げられます。初めて直面する課題に対してしっかりと取り組んで解決する能力は、急速に変化する現代社会を生きる中で必要だからです。
これまでの教育は知識や技能を身に着けさせることを目指してきました。しかし現代では、コンピテンシーを重視する動きが広まっています。
2003年にまとめられた『コンピテンシーの定義と選択(DeSeCo)』では、コンピテンシーのうち、とりわけ大事なものが「キー・コンピテンシー」として紹介されています。
以下に、3つの「キー・コンピテンシー」を挙げます。
- 社会・文化的、技術的ツールを相互作用的に活用する能力
- 多様な集団における人間関係形成能力
- 自立的に行動する能力
[出典:http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/039/siryo/attach/1402980.htm]
OECDの定義するコンピテンシーは、あくまでも教育の目標となるものです。しかし、教育は大人になってから役に立つためのものです。コンピテンシーは大人にとっても、現代社会を生きる上で必要とされる能力だと言えます。
「コンピテンシー」の使い方
- 我が社に、コンピテンシーによる人事評価制度が取り入れられた。
- 知識優先の詰め込み教育から脱却して「コンピテンシー・ベース」の教育に転換すべきだ。
- 表面的な部分ではなく、コンピテンシーを身に着けないと行動は変化しない。
上の例文のように、「コンピテンシー」は人事評価と教育の場面でよく使われます。日常生活で使うならば、「素質」や「能力」と言い換えた方が自然です。
「コンピテンシー」の語源
「コンピテンシー」の語源は、ラテン語の “competō” です。“competō” には、戦うという意味があります。
“competō” は、「ともに求める」という意味から来ています。これに由来する英単語が “compete” で、同じく「戦う」という意味があります。
“competency” は、動詞 “compete” の名詞形です。“competency” は「戦えること」という意味から発展して、「能力」という意味を持つようになりました。
ちなみに、“compete” の形容詞形は “competent” です。これは、「有能な」という意味があります。
まとめ
以上、この記事では「コンピテンシー」について解説しました。
英語表記 | competency(能力) |
---|---|
意味 | 良い結果につながる行動の特性 |
語源 | ラテン語の “competō” |
結果主義とは異なる、新しい人材評価の軸として注目しておきたい言葉です。コンピテンシーを身に着ければ、様々な場面で対応できる原動力となるでしょう。