シビリアンコントロールの意味は?日本における意味を簡単に解説

言葉

シビリアンコントロールとは「軍人ではなく、民主的な選挙によって選ばれた代表が、軍隊を統制する権利を持つこと」という意味です。

政治用語ですので、意味を知らない人が多いでしょう。

この記事では、シビリアンコントロールの意味やそれらを行う理由なども詳しく説明します。

☆「シビリアンコントロール」をざっくり言うと……

英語表記シビリアンコントロール(civilian control)
意味軍人ではなく、民主的な選挙によって選ばれた代表が、軍隊を統制する権利を持つこと
語源「文民による軍隊の統制」という意味の英語 “civilian control of the military”
類義語文民統制
政治統制など
対義語軍部大臣現役武官制

「シビリアンコントロール」の意味

シビリアンコントロール

軍人ではなく、民主的な選挙によって選ばれた代表が、軍隊を統制する権利を持つこと
例:シビリアンコントロールが崩れて戦争が始まった。

シビリアンコントロールとは、軍部の人間ではなく民主的な選挙によって選ばれた代表が、その国の軍隊をコントロールする権利を持つ原理のことです。

または、そのような状態を表す言葉でもあります。

 

軍自体が独立して自由に行動できる権利を持ってしまうと、自らの軍事力を利用して暴走してしまう危険性があります。

軍の暴走を防ぐために、軍隊のトップは文民にするという考えがシビリアンコントロールです。

そのなかでも特に、民主的な選挙によって選ばれた国民の代表者が軍隊を統制・管理する権利を持つのです。

日本における文民の意味

文民を簡単に言うと、「軍人ではない人」のことです。

文民とは「一般市民」「非戦闘員」というニュアンスがあります。

現在の日本において文民とは、「自衛隊の中に職業上の地位を占めていない者」を指すと考えられます。

日本における「シビリアンコントロール」

現在の日本には軍隊が存在しないため、厳密に言えばシビリアンコントロールは存在しません。

しかし、自衛隊という防衛力を軍事力に類似したものとして考えると、日本の体制もシビリアンコントロールだと言えます。

日本では、以下のような複数の機関が自衛隊への統制力を持っています。

  • 国会による統制
  • 内閣による統制
  • 防衛省による統制

これらの中でも、以下の文章から自衛隊を統制する代表者は防衛大臣だと考えることができます。

防衛大臣が国の防衛に関する事務を担当し、主任の大臣として自衛隊を管理し、運営をする

そして、日本国憲法66条には「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない」と明記されています。

そのため、内閣を構成する国務大臣、内閣総理大臣、そしてそれに含まれる防衛大臣は文民だと言えるのです。

国会議員は文民でなければならないのか

日本の憲法や法律に「国会議員が文民でなければならない」という文言は存在しません。

しかし、日本において文民ではないとされる現役の自衛隊隊員が国会議員と自衛隊隊員を兼任するのは実質的に不可能です。

法律で「兼任してはいけない」と禁じられているわけではありませんが、2つの業務に同時に従事することが時間的に不可能であるためです。

ただし、過去に元自衛隊隊員が国会議員になったという実例はあります。

明治時代における「シビリアンコントロール」

これまでで現代の日本の体制は、シビリアンコントロールだと解説しました。

しかし、明治時代の日本ではシビリアンコントロールが機能していなかったのです。

明治時代の日本では、軍隊をコントロールする権利を持っていたのは天皇でした。

天皇は軍人ではありませんが、「選挙によって選ばれた文民」でもないため、シビリアンコントロールは機能していなかったと言えます。

「シビリアンコントロール」の使い方


シビリアンコントロールの機能や賛否について語られるときに、シビリアンコントロールという言葉が使われることが多いです。

  1. 某国のシビリアンコントロールが崩壊したことで、戦争が増えてしまった。
  2. シビリアンコントロールは、軍隊の暴走を防ぐために必須である。
  3. 昔の日本では、シビリアンコントロールが機能していなかったらしいね。
シビリアンコントロールの注意点

シビリアンコントロールは、あくまで「国」の軍事力の統制について使われる言葉です。

民間の軍事組織や一部地域の軍事力についてシビリアンコントロールという言葉は使わないので注意しましょう。

「シビリアンコントロール」の語源

シビリアンコントロールの語源は英語の “civilian control of the military” です。

“civilian control of the military” の単語には以下のような意味があります。

  • civilian
    文民、つまり軍人でない人のこと
  • control
    統制すること・管理すること
  • military
    軍人・軍隊・軍部

直訳すると「文民による軍隊の統制」になります。

つまり、軍隊が軍隊を管理するのではなく、軍人以外が軍隊を統制することという意味の英語です。

「シビリアンコントロールと同じ意味を持つ英語だと言うことがわかります。

“civilian” の日本語訳

「軍人ではない人」を表す文民という言葉は、 “civilian” を訳すために作られた日本語です。

それ以前に「文民」という言葉は存在しなかったのです。

「シビリアンコントロール」の類義語

シビリアンコントロールには以下のような類義語があります。

  • 文民統制(ぶんみんとうせい)
    シビリアンコントロールの日本語訳
  • 政治統制
    シビリアンコントロールの別名
  • 文民優越
    シビリアンコントロールの別名
  • 文官統制(ぶんかんとうせい)
    防衛相内で官僚が自衛官よりも優位にある制度
  • 文官優位
    防衛相内で官僚が自衛官よりも優位にある制度

「シビリアンコントロール」と「文官統制」の違い

「シビリアンコントロール」を日本語訳すると文民統制や、政治統制になります。

また、文民統制に非常に似た「文官統制」という言葉が存在します。

間違われやすいですが、文官統制はシビリアンコントロールとは異なります。

「文官統制」とはあくまで、防衛相内で官僚が自衛官よりも優位にあるという制度であり考え方のことです。

文官統制の廃止

日本において文官統制は、2015年に廃止されています。

現在は、防衛官僚と自衛官は対等の立場であり、両者が防衛大臣を支えるという形になっています。

「シビリアンコントロール」の対義語

シビリアンコントロールには以下のような対義語があります。

  • 軍部大臣現役武官制
    軍部大臣の就任資格を現役の軍人に限定する制度

軍部大臣現役武官制とは、軍部大臣の就任資格を現役の大将・中将に限定する制度のことです。

つまり、軍部の統制を行う大臣に、現役で高い立場の軍人しかなれない制度です。

日本における軍部大臣現役武官制

軍部大臣現役武官制は、大日本帝国憲法下の日本において制定されていました。

つまり、明治時代の日本では軍部大臣現役武官制という体制が取られていたのです。

「シビリアンコントロール」のまとめ

以上、この記事ではシビリアンコントロールについて解説しました。

英語表記シビリアンコントロール(civilian control)
意味軍人ではなく、民主的な選挙によって選ばれた代表が、軍隊を統制する権利を持つこと
語源「文民による軍隊の統制」という意味の英語 “civilian control of the military”
類義語文民統制
政治統制など
対義語軍部大臣現役武官制

シビリアンコントロールの意味だけでなく、類義語までしっかりと理解しておきましょう。