「市」と「区」と「郡」の違いとは?書き方の順番まで解説

違いのギモン

みなさんが住んでいるところは、「市」でしょうか、「区」でしょうか、それとも、町や村でしょうか。町や村の場合は「~郡~町」などとなっている人も多いと思います。

では、「市」と「区」と「郡」の違いはどこにあるのでしょうか。よく考えたら知らない、という人も多いのではないでしょうか。そこで、今回はそんな3つの言葉の違いについて解説していきたいと思います。

結論:市は都道府県の下の、区は政令指定都市の下の、郡は町や村の上の区分

「市」は人口が多く、密集している自治体のことです。

一方、「区」は主に、政令指定都市の中にある区分です。

そして、「郡」は町や村の上にある行政区画です。

日本の行政区画について

「市」と「区」と「郡」の違いについて解説する前に、日本の行政区画(※1)について簡単に解説しておきたいと思います。

日本の行政区画は基本に、

都道府県>郡>町・村

となっています。都道府県の中に郡があって、さらにその中に町や村があるということです。そして、町や村が市に昇格した場合には、郡の枠組みから外れ、

都道府県>市

となります。

これが基本的な日本の行政区画です。

  • 行政区画(※1):国が円滑に国を統治するために領土を細分化した区画のこと

「市」とは

「市」とは、人口が多く、密集している自治体のことです。現在、日本にはおよそ800の市があります。そして、市は一定の条件を満たした町や村がなることができます。その条件は以下の通りです。

  1. 人口が5万人を超えていること
  2. 中心となる市街地を構成する戸数が全体の戸数の6割以上であること
  3. 各都道府県が条例で定める都市的施設その他の都市的条件を満たしていること

このうち、❷は「市」が人口の密集している自治体であるため、満たす必要があります。ちなみに、戸数とは家の数のことです。

また、❸は各都道府県により異なりますが、都市的施設とは、例えば病院、学校、図書館、銀行、博物館などです。

ただ、市町村の合併の特例に関する法律(通称:合併特例法)により、町と町、町と村などが合併した時には、人口が3万人を超えていれば市に昇格できるようになりました

 

そして、いったん市に昇格することができれば、これまで解説してきた条件を満たせなくなっても町や村に戻ることはありません。その証拠に、日本には市の条件を満たしていない市がいくつも存在します。

例えば、北海道の歌志内(うたしない)市には2017年時点で3500人程度しか住んでいません。

ただし、住民が望めば町や村に戻ることもできます。そして、特に条件はなく、議会で承認を得た上で、都道府県に申請すれば可能です。しかし、これはデメリットのほうが大きいので、まだ例はありません。

ただ、合併で市になった自治体から一部が分離独立して町や村に戻った事例はそこそこ存在します。その理由としては、そもそも合併に反対していた、役所などが遠くなり不便になった、などがあります。

 

ちなみに、町・村から市になるメリットはいくつか存在します。まず1つ目は権限の拡大です。市は町・村より多くのことを自治体で決めることができます。

2つ目は、「市」というブランドを手に入れることができるという点です。「町」、「村」などと聞くと、小さくてさびれているイメージがありますよね。しかし、「市」にと発展しているようなイメージはあります。つまり、市になると自治体のイメージが良くなるのです。

このような理由から、多くの町・村は市への昇格を目指していますが、これをめぐって事件が起こることもあります。

例えば、愛知県東浦(ひがしうら)町では市に昇格する条件を満たすために国勢調査で人口を水増しし、前副町長が逮捕されました。

「区」とは

「区」とは政令指定都市が設置できる行政区画のことです。

ちなみに、そもそも政令指定都市は市の中で一定の条件を満たした自治体がなることができ、その条件は法律上では人口が50万人以上であること、と定められています。

しかし、実際には50万人を超えていても政令指定都市になれない場合が多いです。例えば、東京都の八王子市は2017年時点で人口58万人弱ですが、政令指定都市ではありません。

そのため、実際には人口が80万人以上で、人口が増加傾向にあることが条件なのではないかと言われています。

 

そんな政令指定都市は都道府県並みの権限を持つことができます。そして、政令指定都市は「区」を設置することができます。ただ、政令指定都市の区はただの行政区画であり、自治体ではありません。

 

ここまで政令指定都市の区を見てきましたが、ここまでの説明を見て疑問を持った人も多いと思います。それは、東京の区の存在です。確かに、東京都の区は「~県~市~区」などではなく、「東京都~区」ですよね。

しかし、もともと、東京都の区の部分は「東京市」と呼ばれていました。そして、東京市は政令指定都市だったので、区を設置しました。ですが、東京市は1943年に東京都になり、東京市は消滅してしまいました。

ただ、東京市に設置されていた区はそのまま残りました。そのため、東京都の区も「政令指定都市が設置した行政区画」と言えるのです。

しかし、そうは言っても現在は政令指定都市の中にあるわけではないので、東京都の区の部分は他の自治体とは別の扱いを受けています。

そして、東京都の区はもちろんただの行政区画ではありません。基本的には「市」と同じような自治体です。

「郡」とは

「郡」とは町・村の上にある行政区画のことです。以前は町や村を含む自治体でしたが、1923年に郡制が廃止されて以降はただの行政区画です。ほとんど存在意義はありません。

ただ、基本的に住所を書く時には「~郡~町」などとしなければなりません。例えば、東京都の奥多摩町に手紙を送る時には「東京都西多摩郡奥多摩町」と書くべきです。

ちなみに、郡は町や村の上位区分なので、市に昇格した時には郡から外れます。

また、ほとんどの町・村は郡に属していますが、1つだけ例外があります。それは東京の島々です。東京都の島には大島町、八丈町などがありますが、郡には属していません。

その代わり、支庁がこれらの自治体をまとめています。

まとめ

以上、この記事では、「市」と「区」と「郡」の違いについて解説しました。

  • :人口が多く、密集している自治体のこと。
  • :政令指定都市の下位区分。東京23区は例外で市のようなもの。
  • :町・村の上位区分。意義はほとんどない。

「市」と「区」と「郡」にはこのような違いがあったんですね。今度、友達に自慢してみるのもいいかもしれません。

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和佐 崇史
文章を書くこと、読むことが大好きな大学生です。中学2年生で漢検2級を取得するなど、言葉については詳しい自信があります。Webライターとしてはこれまで累計1,000記事以上を執筆してきました。