「大乗仏教」と「上座部仏教」の違いとは?共通点まで解説

違いのギモン

仏教はキリスト教、イスラーム教とともに「世界三大宗教」の1つに数えられ、世界中に3億8400万人の信者がいます。

その信者は主に東アジアや東南アジアに集中しています。

日本でも仏教はかなり身近な存在ですが、みなさんは仏教の宗派についてご存知でしょうか。

今回はそんな、身近ですが、詳しくは知らない仏教の宗派、「大乗仏教(だいじょうぶっきょう)」と「上座部仏教(じょうざぶぶっきょう)」の違いについて詳しく解説していきます。

結論:他者の救済を前提としているか、自己完結を前提としているかの違い

「大乗仏教」は、大衆の中に入り、教えを広め、多くの人を救っていくなかで「悟り」を開くことを目的としている宗派のことを指します。

それに対し、上座部仏教は基本的に自己完結的で、個人が修行し、「悟り」を開くことを目的としている宗派のことを指します。

そもそも「仏教」とはどんな宗教か


仏教は紀元前450年ころ、ゴータマ・シッダールタによってインドで開かれた宗教です。

手塚治虫が書いた『ブッダ』という作品は、この仏教の開祖であるゴータマ・シッダールタの生涯を描いたものとして知られています。

この「ブッダ」(仏陀)という言葉には「(この世の真理を)悟った人」という意味があります。

仏教の目的というものは、この「悟り」を修行によって獲得し、生きることの苦しみから解放されよう、というものです。

この「悟り」を目指していくプロセスが、外向的な性格を持つか、内向的な性格を持つかが、「大乗仏教」と「上座部仏教」の違いと言えます。

「大乗仏教」についてもっと詳しく


大乗仏教」は、大衆の中に入り、教えを広め、多くの人を救っていくなかで「悟り」を開くことを目的としている宗派のことを指します。

「大乗」には「大きな乗り物」という意味があります。

これには、修行者だけではなく、大衆も「悟り」の道へと導いていくべきである、という考えが表れています。

また、「大乗仏教」は「北伝仏教」と呼ばれることもあります。

 

釈迦(ゴータマ・シッダールタ)は自分の悟りだけでなく、他人に教えを説いて、人々の救済に尽くしました。

「大乗仏教」はこの点を重視し、自分たちこそが「釈迦(しゃか)の真意を伝えている」と主張するようになり、上座部仏教と分離していくようになりました。

「大乗仏教」は西暦紀元前後の仏教の改革の中で誕生し、アフガニスタンから中央アジアを経由して、中国・韓国・日本に伝わっていきました。

現在の日本にある仏教も分類としては「大乗仏教」に属します。

 

仏教は本来は「悟り」を求めていくものであったが、時代が下っていくうちに、釈迦の存在そのものが神格化されていきました。

その神格化の色がとりわけ「大乗仏教」では強く、それにより、次第に様々なブッタ(悟った人)を拝み、その力にあやかることで自らの「悟り」を促進させようと考えるようになります。

その結果として、仏教にはもともと多くの戒律(宗教のルール)が存在し、重視されていましたが、「大乗仏教」では戒律よりも「信仰の心」が重視されていくようになりました。

 

日本のお坊さんを見ればこのことがよくわかります。

本来、仏教徒は結婚することも酒を飲むこともできませんが、それを守っている日本の仏教徒はほとんどいません。

時代の経過に伴い、仏教そのものが持っていた性質が大きく変化したということです。

「上座部仏教」についてもっと詳しく


上座部仏教は基本的に自己完結的で、個人が修行し、「悟り」を開くことを目的としている宗派のことを指します。

「小乗仏教」という言葉がありますが、これは「大乗仏教」が「上座部仏教」を侮辱して呼ぶ際に使っていた言葉なので適切な表現ではありません。

「上座部仏教」は「大乗仏教」のことを「改変を行いすぎた結果、本来の釈迦の教えから離れてしまっている」と批判することもあります。

しかし、これは釈迦の教えのどの部分を重視するかの差でしかなく、どちらが真の「仏教」であるかを決めることはできません。

 

「上座部仏教」はタイ、ミャンマー、カンボジア、ラオス、スリランカなどの国に伝わり、今もなお存続しています。

南へと伝わっていったことから「上座部仏教」は「南伝仏教」と呼ばれることもあります。

 

「大乗仏教」が戒律重視から変容を遂げ、「信仰の心」重視へと変化していったのに対し、「上座部仏教」では、現在でも、戒律重視の側面が色濃く残っています。

実際に、タイの男性の多くは一生に一度は有給をとって出家し、数多く存在する戒律を守る生活を数か月送ります。

その戒律は全部で227個あり、「セックスをしない」「酒を飲まない」「金銭に触れない」「大声で笑ってはいけない」「誰かをくすぐってはいけない」などその内容は多岐に渡ります。

まとめ

以上、この記事では「大乗仏教」と「上座部仏教」について詳しく解説しました。

  • 大乗仏教:他者の救済を前提としている。「信仰の心」を重視する。主に東アジア。
  • 上座部仏教;自己完結を前提としている。戒律を重視する。主に東南アジア。

身近に感じていた仏教にも、たくさんの知らないことがあります。

それぞれの宗派の違いを比較してみるのも、おもしろいかもしれません。