今回ご紹介する言葉は、故事成語の「傾城(けいせい)」です。
言葉の意味、使用例、例文、由来、人物、英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「傾城」をざっくり言うと……
読み方 | 傾城(けいせい) |
---|---|
意味 | 絶世の美女 |
由来 | 『漢書』の「外戚伝」(がいせきでん)より |
英語訳 | beauty,courtesan |
「傾城」の意味をスッキリ理解!
「傾城」の意味を詳しく
「傾城」とは、絶世の美女のことです。
この時、「城を傾ける」とは、国を滅ぼすことを意味します。男性が政治や軍事を放りだして、国を滅ぼすほどの美女を指します。
日本では、平安時代から江戸時代まで遊女の別称として使用されていました。近世では、おいらんなどの上級の遊女を指します。
ちなみに、古代ではどのような基準で「美人」と呼ばれたのでしょうか。古代中国の「美人」は、男女を問わず外見の美しい人であると同時に、品性の高い人を指したそうです。具体的な外見としては、つぶらな瞳に美しい歯、豊かな黒髪に優雅なスタイルが美人の特徴だったようです。
古代日本では、色白でしもぶくれの黒髪の持ち主が美人と呼ばれたようです。国や時代によって、美人の条件も変わると言えます。
「傾城」の使用例
「傾城」を以下のような語句として使用することができます。
- 傾城に誠なし:遊女が客に誠意をもって接するはずがない
- 傾城買い:遊女を買って遊ぶこと
- 傾城狂い:美女の色香に迷うこと、遊女遊びに夢中になること
「傾城」の例文
- 彼女ほどの美人を見たことがない。まさに傾城と言えるだろう。
- 傾城に誠なしだから、遊女の言うことは本気にしない方が良い。
- お金のある限り傾城買いをしたい。
- 酒を飲んで傾城狂いをするぞ。
「傾城」は日常生活ではあまり使用されない故事成語です。現代では、歌舞伎などで耳にする機会があるかもしれません。
「傾城」の由来
「傾城」は、『漢書』の「外威伝」(がいせきでん)という章に記載された言葉です。
『漢書』では以下のように「傾城」が語られています。
美しい女性は、国を滅ぼすほどの力を持っていることを意味しています。
ちなみに、『漢書』は、前漢一代の歴史を記した書物です。班昭(はんしょう)、班固(はんこ)らによって編集され、82 年頃に成立しました。中国の王朝の二十四史の一つです。
「傾城」の人物
「傾城」と呼ばれた中国の歴史上の人物を紹介します。
虞美人
虞美人(ぐびじん)は、秦の時代を生きた女性です。傾城の美女と称されます。彼女の美しさに項羽王は夢中になりました。戦いの場にも虞美人を連れ添ったほどです。
劉邦との戦いに徐々に追い込まれた項羽は、負けを覚悟して別れの詩を虞美人に詠いました。そこで「敗戦が決定した今、愚よ、お前をどうしたらよいのだろう」と贈っています。死ぬ間際に、自分の軍よりも虞美人といられなくなることを嘆くほど、虞美人に夢中になっていたことが分かります。
楊貴妃
楊貴妃も傾城の美女として名高い中国の人物です。世界三大美女であり、中国四大美女の一人です。彼女の伝説は、白居易(はっきょい)の「長恨歌」に記されています。これは唐代の話です。
「長恨歌」では、楊貴妃と玄宗皇帝の話が描かれています。楊貴妃はもともと玄宗皇帝の息子の妃でした。しかし、彼女の美しさに惚れた玄宗皇帝は息子から彼女を奪い、自分の妃にしました。
玄宗皇帝は楊貴妃に夢中になり、政治をおろそかにして宴会を楽しみました。その結果、人々の反感を買い、安史の乱が勃発します。
「傾城」の英語訳
「傾城」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- beauty
(美人) - courtesan
(上流の遊女)
まとめ
以上、この記事では「傾城」について解説しました。
読み方 | 傾城(けいせい) |
---|---|
意味 | 絶世の美女 |
由来 | 『漢書』の「外戚伝」(がいせきでん)より |
英語訳 | beauty,courtesan |
男性を夢中にし、軍や政治を滅ぼす「傾城」について解説しました。魅力的な女性はどの時代にも存在するのですね。現代にも「傾城」に当てはまる人が存在するか着目してみましょう!