今回ご紹介する言葉は、四字熟語の「罵詈雑言(ばりぞうごん)」です。
言葉の意味、使い方、類義語、対義語、英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「罵詈雑言」をざっくり言うと……
読み方 | 罵詈雑言(ばりぞうごん) |
---|---|
意味 | 口汚い言葉を言ってののしること。また、その言葉。 |
類義語 | 悪口雑言、罵詈讒謗、爬羅剔抉など |
対義語 | 称賛、賛美、謳歌など |
英語訳 | stream of abuse at ~(~に悪口をあびせる)など |
このページの目次
「罵詈雑言」の意味をスッキリ理解!
「罵詈雑言」の意味を詳しく
「罵詈雑言」は、さまざまな酷い言葉で、相手をののしったり避難する行為を意味します。
また、人に向けて発せられる、非常に悪い言葉そのものを指すこともあります。
主に、単純な「悪口」よりももっと酷い言葉や行為を表現します。
また、とにかく出まかせで、でたらめな、口汚いののしりの言葉、というニュアンスがあります。
「罵詈雑言」は必ず言う対象が存在し、その対象に直接悪口を発する様子を表します。
ただ、近年ではネットの掲示板などで、誰かに悪口を言っている様子を第三者が客観的に見て「罵詈雑言」と形容するケースも多くなっています。
「罵詈雑言」の漢字の意味
「罵詈雑言」を構成する漢字には以下のような意味があります。
- 罵:ののしること、悪口を言うこと
- 詈:あてこすりを言うこと、人に悪口をいうこと
- 雑言:いろいろな悪口やでたらめな言いがかり
「罵詈雑言」は「悪口」という意味の言葉を重ねて、「悪口」の意味を強調した言葉なのです。
ちなみに、「罵」「詈」の部首の「罒(ぼう・もう)」は、「網(あみ)」のことを表す象形文字がもとになった漢字です。
また、「罵」の「馬(うま)」は、動物のウマを表すほかに、「悪いもの」「ののしること」のたとえとしても使われる漢字です。
「罵」「詈」という漢字には、「人に悪い言葉を網のようにかぶせてしまう」というイメージが表されているのです。
「罵詈雑言」の読み方・表記
「罵詈雑言」の読み方は以下のとおりです。
正しい読み方 | ばりぞうごん |
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別の読み方 | ばりぞうげん |
誤った読み方 | ばりざつげん |
また、「罵詈雑言」を「馬時雑言」と表記するのは間違いなので注意しましょう。
「馬時雑言」は「罵詈雑言」と「馬耳東風」が混ざってできた表現だと考えられます。
「罵詈雑言」の使い方
- 逮捕された有名人に罵詈雑言が浴びせられた。
- 彼らに罵詈雑言を並べた。
- ネット上では、いろいろなところで罵詈雑言が吐かれている。
- 彼女は周囲の罵詈雑言に屈しなかった。
- 大事業に失敗した彼に待っていたのは罵詈雑言の嵐だった。
上記の例文のように、「罵詈雑言」は以下のような言い回しで用いられることが多いです。
- 罵詈雑言を浴びせる
- 罵詈雑言を吐く
- 罵詈雑言を並べる
- 罵詈雑言の嵐
①~➂は「ひどい悪口を言う」というだいたい同じような意味の言い回しです。
この意味をさらに強調したい時には「罵詈雑言の嵐」と表現します。
「罵詈雑言」の語源
「罵詈雑言」のうち「罵詈」の語源は中国の前漢までの歴史を記した歴史書『史記』の「魏豹伝」という章です。
この章の中で、劉邦(りゅうほう)という人が魏豹(ぎひょう)という人を、配下になるように説得します。
しかし、魏豹は以下のように言ってこの誘いを断ります。
「劉邦は諸侯や群臣を奴隷を罵(ののし)るように詈(ののし)り、少しも上下の礼節がない」
ここから「罵詈」という単語が生まれました。
そして、やがて「雑言」と組み合わされ「罵詈雑言」という表現で用いられるようになりました。
「罵詈雑言」の類義語
罵詈雑言には以下のような類義語があります。
- 悪口雑言(あっこうぞうごん):口から出まかせにさまざまな非難の言葉を言うこと
- 罵詈讒謗(ばりざんぼう):口汚く悪く言ってののしること
- 爬羅剔抉(はらてっけつ):人の欠点や秘密を暴き出すこと
- 誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう):根拠のない悪口を言いふらして他人を傷つけること
- 悪口雑言(あっくぞうごん):汚い言葉で悪口を言うこと
- 誹謗(ひぼう):悪口を言うこと
- 中傷(ちゅうしょう):根拠がないことを言って名誉を傷つけること
- 罵倒(ばとう):ひどく罵ること
- 悪言(あくげん):人を悪く罵る言葉
- 嘲罵(ちょうば):あざけってののしること
- 悪態(あくたい):悪口を言うこと
- 悪口(わるくち):他人を悪く言うこと
- 罵(ののし)る:ひどい悪口を言うこと
- 罵詈怒号(ばりどごう)
- 悪口罵詈(あっくばり)
- 罵詈讒謗(ばりざんぼう)
- 讒謗罵詈(ざんぼうばり)
「悪口雑言」の「悪口(あっこう)」は、人を悪く言う言葉のことです。
「罵詈讒謗」の「讒謗(ざんぼう)」は、非難することを言います。また「讒謗罵詈」とも表現されます。
「爬羅剔抉」の「爬(は)」は爪でかくこと、「羅(ら)」は網にかけてとらえる様子を表します。
「剔抉(てっけつ)」はえぐり出す様子です。この「集めて、えぐり出す」という意味が転じて「隠れた人材を探し出す」ことを表す場合もあります。
「罵詈雑言」の対義語
「罵詈雑言」には以下のような対義語があります。
- 称賛(しょうさん):ほめたたえること
- 賛美(さんび):ほめてたたえること
- 謳歌(おうか):多くの人がほめたたえること
- 賛辞(さんじ):ほめ言葉
- 拍手喝采(はくしゅかっさい):手を叩いて大声でほめること
- 褒め称える(ほめたたえる):立派さ、素晴らしさを褒めること
「罵詈雑言」の英語訳
罵詈雑言を英語に訳すと、次のような表現になります。
- stream of abuse at ~
(~に悪口をあびせる) - profanity
(口汚い言葉)
“stream” は「流れ」、 “abuse” は「悪口、毒舌」をそれぞれ表す名詞です。
また、 “stream” は、 “torrent” に置きかえることができます。 “torrent” は「激流」のほかに、批判や悪口の「連発」、感情の「激発」を意味する名詞です。
まとめ
以上、この記事では「罵詈雑言」について解説しました。
読み方 | 罵詈雑言(ばりぞうごん) |
---|---|
意味 | 口汚い言葉を言ってののしること。また、その言葉。 |
類義語 | 悪口雑言、罵詈讒謗、爬羅剔抉など |
対義語 | 称賛、賛美、謳歌など |
英語訳 | stream of abuse at ~(~に悪口をあびせる)など |
「罵詈雑言」は、マイナスイメージの強い言葉のひとつです。相手に対する攻撃的な意図や悪意によって用いられる場合がほとんどです。
物語や説明文といった文章表現のなかならばともかく、日常で他の人に対して使うべき言葉ではありません。
使われることも避けたいですね。
言葉そのものはコミュニケーションのためのツール・記号にすぎませんが、同時に、私たちが最も大切にすべきものでもあります。ほんの些細な言葉が、ときに誰かを傷つけてしまうのです。