日本経済を支えるサラリーマン。日々カッコ良くスーツを身にまとう彼らですが、会社勤めの人は常に会社の「倒産」というリスクを抱えています。一方、似たような意味の言葉に「破産」があります。
「倒産」と「破産」。どちらも会社の事業がうまくいかず、会社がなくなる時などに使用する言葉です。しかし、「倒産」と「破産」は、微妙に意味が異なります。
今回は、もしもの時のために知っておきたい、「倒産」と「破産」の違いを説明していきます。
結論:「倒産」の手続きの一つが「破産」
「破産」は、いくつかある「倒産」の手続きの中で、財産を債権者に分配し、会社が消滅する手続きです。
「倒産」をもっと詳しく
「倒産」とは、企業が債務を返済することができなくなり、実質的に破綻(はたん)状態になることです。また、それに伴う債務整理のための処理や手続き全般も指します。個人で「倒産」することはできず、法人のみが「倒産」することができます。
「倒産」には「連鎖倒産」というパターンもあります。これは自社の事業が問題なく収益をあげているにも関わらず、関係の深い企業の影響で倒産してしまうことです。
例えば、会社Aが、会社Bに代金後払いで商品を納入した後、会社Bが倒産した場合です。仮に会社Bに代金の支払い能力がなかった場合、会社Aは代金をもらえません。会社Aの規模の小さければ小さいほど、経営に影響を与えます。最悪の場合、会社Bに連鎖して会社Aも倒産してしまいます。
「倒産」の手続きは大きく分けて2つに分けることができます。それは会社が消滅する「清算型」と会社が存続する「再建型」です。「清算型」は「破産」や「特別清算」、「再建型」は「民事再生」や「会社更生」などが当たります。
「特別清算」とは?
「特別清算」とは、「倒産」後に裁判所の監督下で行う清算手続きです。法人のなかでも株式会社のみが行うことができます。
「破産」は換金した財産を債権者に平等に返済するため、債権者の意向が反映されません。しかし、「特別清算」は債権者の多数決・同意により分配額が決まります。
「倒産」の手続きとしては「破産」よりもマイナーですが、「破産」よりも悪いイメージが小さいです。そのため「倒産」後に再び起業する予定があれば、メリットは十分にあります。
「民事再生」とは?
「民事再生」とは、「倒産」した企業が再生計画(経営状態を回復させ、債務が返済できそうな計画)を作成し、借金が大幅に減った状態から会社の事業再建を図る手続きです。民事再生法に基づいて行われます。
経営者の経営権は維持され、財産の処分なども会社主導で行います。対象は主に中小企業や個人です。再生計画は、債権者の決議による可決・裁判所の認可により成立します。
2015年に航空会社スカイマークは経営破綻の後、「民事再生」を行いました。
「会社更生」とは?
「企業再生」とは、「倒産」した企業の債務を整理し、裁判所主導の下、会社の事業再建を図る手続きです。会社更生法に基づいて行われます。
経営陣は全員退任し、経営の権限を全て失います。その上で裁判所により選ばれた「更生管財人」が債権処理を行います。「会社更生」は株式会社のみが行うことができ、対象は主に大企業です。
構成計画は、債権者・担保権者・株主による可決の後、裁判所の認可により成立します。「会社更生」が成立すると、株主の権利は喪失します。
「会社更生」は「民事再生」に比べ、手続きが複雑となり、長い時間が必要となります。経営陣も締め出されます。その代わり「民事再生」よりも確実に会社を再建することができます。2010年には航空会社JALが経営悪化により「会社更生」により倒産しました。
「破産」をもっと詳しく
「破産」とは、総資産によって債務を返済することができなくなった時に、財産を強制的に換金し、全ての債権者に可能な限り返済する裁判上の手続きです。個人・法人共に「破産」を行うことができます。方法は「破産法」により規定されています。
「破産」は「倒産」の手続きの1つであり、「清算型」に分類されます。清算が終了した後は、会社は消滅します。
会社が「破産」した場合、経営者は個人的な責任を負いません。あくまで倒産した会社と経営者は別の存在として扱われるため、債務を引き継ぐこともありません。
個人が自ら「破産」を申したてることを「自己破産」といいます。「自己破産」を行うと、債務の返済義務はなくなります。しかし、一定の職業への制限(弁護士、司法書士、警備員、質屋など)、財産の没収、クレジットカードの利用不能などのデメリットもあります。
まとめ
以上、この記事では、「倒産」と「破産」の違いについて解説しました。
- 倒産:債務の返済・経営の継続が困難となること。またそれに付随する手続き。
- 破産:「倒産」の手続きの1つ。会社は消滅する。
景気の低迷や世界情勢、天候など、会社の経営は様々な要因により影響を受けます。時にはリーマンショックの様に、急激な変動も起こりえます。「倒産」「破産」はやむを得ず経営が立ち行かなくなった場合の、最後の手段となります。
「倒産」するからといって、必ずしも会社がなくなるとは限りません。経営者だけではなく、会社員も「倒産」「破産」について理解を深めていくことは重要でしょう。