故事成語「羹に懲りて膾を吹く」の意味と使い方:例文付き

言葉

今回ご紹介する言葉は、故事成語の「羹に懲りて膾を吹く(あつものにこりてなますをふく)」です。

意味・由来・類義語・英語訳について、わかりやすく解説します。

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「羹に懲りて膾を吹く」の意味をスッキリ理解!

羹に懲りて膾を吹く前の失敗にこりて、必要以上に用心すること

「羹に懲りて膾を吹く」の意味を詳しく

「羹に懲りて膾を吹く」とは、前の失敗にこりて必要以上に用心してしまうことです。

「羹」(あつもの)とは、肉や魚などの入った熱い汁物のことです。「膾」(なます)は、冷たい酢の物ですね。熱い汁物を食べるときに口をヤケドした人が、冷たい食べ物を食べる時にも、フーフーと冷まそうとしてしまう様子を表しています。

熱いものを食べるときに冷ますのは、失敗から学んでいると言えそうです。しかし、冷たいものまで冷ます必要はありませんよね。冷たい膾を吹くという言葉から、ヤケドをおそれるあまりビクビクしている様子が伝わってきます。

羹は熱い食べ物ですが、「熱い物に懲りて膾を吹く」は誤りです。

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「羹に懲りて膾を吹く」の使い方

  1. 解答欄を間違えないよう指さし確認しながら解くとは、まさに羹に懲りて膾を吹くだ。
  2. 昨年スケートで転んだからスキーを辞めてしまうとは、まさに羹に懲りて膾を吹くだ。
  3. コーヒーを飲むと眠れなくなるからお茶も飲まないとは、まさに羹に懲りて膾を吹くだ。

「羹に懲りて膾を吹く」の由来

「羹に懲りて膾を吹く」は、中国の古典に由来します。

春秋戦国時代(紀元前3~4世紀ごろ)に、中国南部の楚という地域で流行った「楚辞」という詩のスタイルがあります。楚辞が集められた本は、その名も『楚辞』といいます。楚辞の中に、次のような一節があります。

 懲于羹者而吹齑兮、何不变此志也。

[出典:『楚辞』九章]

「羹に懲りた者は齑(なます)を吹くが、なぜ私の志は変わらないのだろうか」という意味です。

 

当時の中国は「戦国時代」というだけあって、いくつかの国に分かれて勢力を争っていました。この詩を書いた屈原(くつげん)は、自分の属する楚(ソ)のことを思って国王に進言(しんげん:アドバイス)します。

しかし、屈原の進言は聞き入れられられません。屈原は、周囲からの批判などを受けて左遷させられてしまいます。

 

ここでは、「羹に懲りて膾を吹く」は、「普通の人は一度失敗したらとても慎重になる」という意味で使われています。屈原は、そうではなかったのです。何度左遷させられても、国のためを思って正直に進言を続けました。

楚は結局、屈原がおそれた通りのシナリオで衰退に向かいます。屈原は、自分の国の将来に絶望して自殺してしまいます。楚の王が屈原の進言を聞き入れていたら、「羹に懲りて膾を吹く」という言葉は生まれなかったかもしれません。そして、歴史も変わっていたでしょう。

楚を滅ぼしたのは、秦(シン)です。他の国も次々と秦に滅ぼされ、始皇帝による中国統一に向かうのです。

 

ところで、「羹」という字を見て、ある食べ物を思い浮かべた人が多いでしょう。「羹」は「羊羹(ヨウカン)」に使われている漢字ですよね。「あつもの」という名前の食べ物には、なじみがありません。代わりに、「羹」は和菓子の名前に使われているのです。

なぜ、熱いスープを意味する漢字が、冷たい和菓子の名前に使われるようになったのでしょうか。

「羹」は、もともと肉や魚を使ったスープを意味する言葉でした。特に「羊羹」(羊のスープ)は、肉がトロトロになって美味しかったと言われています。

しかし、羊羹が日本に伝えられたとき、仏教のルールで肉食が禁止されていました。そこで、羊肉の代わりに小豆を煮て「羊羹」が作られるようになったそうです。

 

また、この詩が作られたときの「膾」も、現在食べられているものとは違いました。詩に出てくる「齑(ジ)」は、細切りの肉や魚を意味する言葉でした。中国語で音が同じ「膾」と混ざって、故事成語の中で、酢の物を意味する「なます」が使われるようになりました。

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「羹に懲りて膾を吹く」の類義語

「羹に懲りて膾を吹く」には、以下のような類義語があります。

  • 蛇に噛まれて朽縄(くちなわ)に怖(お)じる:蛇に噛まれた人が、縄を蛇と間違えて恐れる様子
  • 舟に懲りて輿(こし)を忌(い)む:船で怖い思いをした人が、乗り物全般を避ける様子
  • 黒犬に噛まれ赤犬を恐れる:犬に噛まれた人が、噛んだ犬以外の犬も恐れる様子

「羹に懲りて膾を吹く」の英語訳

「羹に懲りて膾を吹く」を英語に訳すと、次のような表現になります。

  • A scalded dog fears cold water.
    (叱られた犬は水をも恐れる)
  • Once bitten twice shy.
    (一度噛まれると二度目は慎重になる)
  • A burnt child dreads the fire.
    (ヤケドした子どもは火を怖がる)
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まとめ

以上、この記事では「羹に懲りて膾を吹く」について解説しました。

読み方羹に懲りて膾を吹く(あつものにこりてなますをふく)
意味前の失敗にこりて、必要以上に用心してしまうこと
由来『楚辞』で出てくる、失敗にこりて用心する人のたとえ
類義語「蛇に噛まれて朽縄を怖じる」など
英語訳A burnt child dreads the fire. (ヤケドした子どもは火をも恐れる) など

失敗に学ぶことは大切です。しかし、用心しすぎるあまり自分のやりたいことができなくなってしまっては、本末転倒ですよね。何事も、ほどほどが大切です。

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