「ありおりはべり」の意味とは?「いまそかり」って何?活用形まで解説

言葉

「ありおりはべり」とは「ラ行変格活用の動詞の語呂合わせ」です。

古文の授業で「ありおりはべり」を習った覚えはありませんか?

暗記するために呪文のように唱えていたけど、何を意味する言葉だったのか思い出せず気になっている人もいるのではないでしょうか。

この記事では「ありおりはべり」の意味からラ行変格活用まで詳しく解説します。

「ありおりはべり」の意味

ありおりはべり

ラ行変格活用の動詞の語呂合わせ

「ありおりはべり」とは、古語のラ行変格活用動詞を語呂合わせのようにした言葉です。

そのため、「ありおりはべり」という言葉自体に意味はありません。

「いまそかり」も合わせて、「ありおりはべりいまそかり」ということもあります。

「ありおりはべりいまそかり」はすべて現代語で「いる」という意味ですが、以下のような違いがあります。

古語敬語の意味現代語訳
あり人や動物がいるなど
居り人や動物がいるなど
はべり謙譲・丁寧あります。ございます。おりますなど
いまそかり尊敬いらっしゃる

それぞれの意味について、例文と一緒に詳しく見ていきましょう。

「あり」の意味

あり

  1. 人や動物がいる
    今は昔、竹取の翁(おきな)といふ者ありけり
    (今となってはもう昔のことであるが、竹取の翁という人がいたということだ。)
  2. 生きている
    名にし負はばいざ言問(ことと)はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと
    (「都」という名を持っているのなら、都の事情に詳しいだろうからさあ尋ねよう、都鳥よ。私が恋い慕う人は無事でいるのかいないのかと。)
  3. 住む。暮らす。生活する
    かくてもあられけるよと、あはれに見るほどに
    (このような寂しいありさまでも住んでいられたのだなあと、しみじみと心打たれて見ているうちに。)
  4. ちょうどそこにいる。居あわせる
    おのづから人の上などうち言ひそしりたるに、幼き子どもの聞きとりて、その人のあるに言ひいでたる
    (きまりの悪いものは、たまたま他人の話などをしてけなしていたのを、幼い子供が聞いて心にとめて、その人がちょうどそこにいる前で言いだした場合)
  5. すぐれたところがある
    御供に声ある人して歌はせ給ふ
    (お供の中で声のよい者に歌わせなさる)
  6. 繁栄して暮らす。時めいて過ごす
    我、世にありし時は、娘どもをば女御(にようご)・后(きさき)とこそ思ひしか
    (私が世に時めいていた時は、娘たちを女御・后に立てようと思っていたけれど)
  7. 行われる。起こる
    春宮(とうぐう)の御元服、南殿(なでん)にてありし儀式
    (先年の東宮のご元服、南殿で執り行われたその儀式が。)
  8. 経過する
    年月もいまだあらねば心ゆも思はぬ間
    (年月のまだたたないうちに死なれるなど夢にも思わない間。)

漢字では「有り」「在り」と表記します。

「おり」の意味

「おり」は、正しくは「をり」と読みます。

をり

  1. 座っている
    立てれどもをれどもともに戯(たはぶ)れ
    わが子は立っていても座っていても親と一緒に遊び興じ。
  2. 人や動物がいる
    埼玉(さきたま)の津にをる舟の
    埼玉の船着き場にある舟が

漢字では「居り」と表記します。

「はべり」の意味

はべり

  1. おそばにいる。ひかえている。お仕えする
    夕さりまではべりてまかり出でける折に
    (夕方までひかえていて退出したときに。)
  2. あります。ございます。おります
    ここにはべりながら、御とぶらひにもまうでざりけるに
    (ここにおりますのに、お見舞いにもうかがいませんでしたが。)

漢字では「侍り」と表記します。

「いまそかり」の意味

「いまそかり」は、正しくは「いますがり」です。

変化して「いますかり」「いましがり」「いまそがり」とも読みます。

いまそかり

  • いらっしゃる
    染殿(そめどの)の内侍(ないし)といふいますがりけり
    (染殿の内侍という方がいらっしゃった。)

「ありおりはべり」の活用形

「ラ行変格活用」とは、動詞の活用法のひとつで、省略して「ラ変」ともいいます

動詞は、後ろに続く語によって単語の形が変化します。

動詞の活用には様々な種類がありますが、「ラ行変格活用」に当てはまる動詞は「あり」「おり」「はべり」「いまそかり」の4つだけです。

「ラ行変格活用」の動詞は、以下のように活用します。

ラ行変格活用
未然形
連用形
終止形
連体形
已然形
命令形

動詞の活用

動詞の活用には、以下のような種類があります。

動詞の活用
  • 四段活用
  • 上一段活用
  • 下一段活用
  • 上二段活用
  • 下二段活用
  • カ行変格活用
  • サ行変格活用
  • ナ行変格活用
  • ラ行変格活用

「ラ行変格活用」と「ラ行四段活用」の違い

「ラ行変格活用」と「ラ行四段活用」は、以下のような違いがあります。

ラ行変格活用
ラ行四段活用
未然形
連用形
終止形
連体形
已然形
命令形

「ラ行変格活用」と「ラ行四段活用」は、終止形の活用形が異なります

終止形とは、文がその動詞で終わる時の形です。

例文
  • ラ行変格活用
    一院御出家(ごしゅっけ)あり
    (一院はご出家になります)
  • ラ行四段活用
    住む館(たち)より出(い)でて、船に乗るべき所へわたる
    (住んでいる官舎から出て、船に乗ることになっている所へ移る)

上記の例文で、「あり」はラ行変格活用のため、「り」で終わっています。

一方、「わたる」はラ行四段活用のため、「る」で終わっています。

「ありおりはべり」以外の語呂合わせ

古文には「ありおりはべり」以外にも語呂合わせがあります。

「完了」や「過去」などの似た意味をもつ助動詞を覚えるための語呂合わせに、「きけりつぬたりたしけむ」があります

「きけりつぬたりたしけむ」は、「きけりつぬたりけむたし」と揺れることもあります。

「きけりつぬたりたしけむ」のそれぞれの助動詞がもつ意味は以下の通りです。

動詞役割
過去
けり
完了
たり
たし希望
けむ過去推量

「ありおりはべり」がタイトルの作品

日向なつお氏の漫画に、『ありをりはべり』があります。

タイトルが「をり」表記である理由は、「ありおりはべり」の「おり」は「をり」と書くこともあるためです。

漫画『ありをりはべり』は、2012年に完結しましたが、2013年から2014年にかけて続編『ありをりはべり いまそかり』が連載されました。

続編のタイトルは『いまそかり』と省略されることもあります。

「ありおりはべり」のまとめ

以上、この記事では「ありおりはべり」について解説しました。

読み方ありおりはべり
意味ラ行変格活用の動詞の語呂合わせ
活用形ラ行変格活用

授業で習ったことは、意外と頭の片隅に覚えているものですよね。

この記事を覚えておけば、もし、古文を勉強している人に「ありおりはべり」について聞かれても答えられますね。

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間山智賀
間山智賀
自称、誤字キラー。 Web記事でも誤字脱字を見逃しません。言葉が大好きです。 大学では言葉遊びについて研究していました。マイブームは日本語ラップを聴くこと。