心理学用語「アンカリング効果」とは?具体例まで簡単に解説

言葉

今回ご紹介する言葉は、心理学用語の「アンカリング効果(あんかりんぐこうか)」です。

言葉の意味・具体例・提唱者・英語訳についてわかりやすく解説します。

☆「アンカリング効果」をざっくり言うと……

読み方アンカリング効果(あんかりんぐこうか)
意味最初に提示された情報が基準になって、その後の意思決定が影響される効果
提唱者ダニエル・カーネマン、エイモス・トベルスキー
英語訳anchoring effect(アンカリング効果)

「アンカリング効果」の意味をスッキリ理解!

アンカリング効果(あんかりんぐこうか):最初に提示された情報が基準になって、その後の意思決定が影響される効果

「アンカリング効果」の意味を詳しく

「アンカリング効果」とは、最初にインパクトのある情報を与えられると、それが基準となって後の決断に影響が及ぶ効果です。

「アンカリング」の語源は”anchor”です。これは「錨(いかり)」という意味を持ちます。つまり、最初に得た先入観が「錨」となって根を下ろし、その後の判断に大きな影響を及ぼすということです。

最初の情報が適切かどうかに関わらず、判断をするための基準が最初に固まってしまうことで、頭がその基準との比較モードに入ってしまうのです。

「アンカリング効果」の具体例

「アンカリング効果」は、主にマーケティングの場面で多用されます。

たとえば、「通常価格が1万円のところ、半額の5千円に値引き」などという場合がこれにあたります。最初に「この商品には1万円の価値がある」という情報が頭に植えつけられているため、「5千円」と聞くとお得に感じるようになります。

この効果は、先に値引き前の価格を提示することが重要です。最初から「この商品を5千円で販売します」と提示された場合にはお得感が伝わらず、効果の恩恵を受けられません。

単に値段の差だけでなく、「数量限定」や「本日限り」などといった情報も同じ効果をもたらします。「なかなか買えない」という先入観が商品の価値を釣り上げてしまうのです。

 

また、「アンカリング効果」は日常生活にも利用することができます。

たとえば、同じ課題について「3日後までに仕上げます」と宣言した人と「5日後に仕上げます」と宣言した人がいるとします。

2人とも4日後に課題を提出したとすると、実際には同じタイミングであるにも関わらず、「3日後」と言った人は時間にルーズな印象を与えます。それに対し、「5日後」と言った人はむしろ、「期日より早めに仕上げようとする真面目な人」という印象になります。

「アンカリング効果」によって、実際の仕事自体ではなく、先に宣言した内容との差に目が向いてしまうのです。

 

このように、「アンカリング効果」は、最初の情報とのギャップによってお得感を演出できる強力な心理的作用です。

ただし、消費者が商品に対する値段の相場を正確に知っている場合など、ある程度予備知識を得てから情報を得るときにはこの作用が効きにくくなります。

「アンカリング効果」の提唱者

「アンカリング効果」は、行動経済学者のダニエル・カーネマンと心理学者のエイモス・トベルスキーが、共著の論文で提唱しました。

カーネマンは以下のような実験を行い、「アンカリング効果」を示しています。

  1. 1〜100の数字が書かれたルーレットを被験者に回させる
  2. ルーレットは10か65のどちらかで止まる
  3. それぞれの数字を見た被験者に対し、いくつかの質問をする
被験者には、次のような2つの質問が出されました。
  1. 国連の加盟国でアフリカの占める割合は、ルーレットの数字に対して大きいか小さいか
  2. 国連の加盟国でアフリカの占める割合は、何%であるか
その結果、2番目の質問に対し、10が出た被験者は平均で25%であると答えました。一方で、65が出た被験者は平均で45%と答えました。被験者は無意識のうちに、無関係なルーレットの数字を基準として予測を立ててしまったのです。

このように、人は知らず知らずのうちに、先に見た数字に影響を受けてしまいます。この実験によって、「アンカリング効果」が無視できない範囲で人間の認知に影響することがわかったのです。

「アンカリング効果」の英語訳

アンカリング効果を英語に訳すと、次のような表現になります。

  1. anchoring effect
    (アンカリング効果)

「アンカリング効果」は一般的に”anchoring effect”と書きます。

物理学用語にも「アンカリング」と呼ばれるものがありますが、そちらも”anchoring effect”と表現するため、使用には注意が必要です。

「二重価格表示」とは


「アンカリング効果」は、商品を売る上で非常に重要な効果です。しかし、この効果を悪用し、不当な価格表示をした場合には「二重価格表示」に該当する可能性があります。

二重価格表示は景品表示法違反であり、消費者庁による措置命令が下されることになるため注意が必要です。

消費者庁のガイドラインによると、次の場合は二重価格表示になり得ます。

  • 同一ではない商品の価格を比較対照価格に用いて表示を行う場合
  • 比較対照価格に用いる価格について実際と異なる表示やあいまいな表示を行う場合
[出典:https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/double_price/]

つまり、異なる商品AとBがあり、「Aは1万円だが、Bはその半額の5千円にします」と書いた場合には二重価格表示に該当する可能性があります。

また、本来は1万円で販売している商品を「通常価格2万円のところ、6割引の8千円で販売します」と書いた場合も二重価格表示になります。

二重価格表示に該当するかどうかは消費者庁が公開しているガイドラインで確認できます。もし「アンカリング効果」を商業的に利用しようと考えている場合は、このガイドラインを一読しておきましょう。

まとめ

以上、この記事では「アンカリング効果」について解説しました。

読み方アンカリング効果(あんかりんぐこうか)
意味最初に提示された情報が基準になって、その後の意思決定が影響される効果
提唱者ダニエル・カーネマン、エイモス・トベルスキー
英語訳anchoring effect(アンカリング効果)

「アンカリング効果」は日常的に影響を受ける心理的効果です。商品を購入するときなどに、価値を釣り上げすぎていないか冷静に判断できるといいですね。