「給与」と「報酬」の違いとは?定義をわかりやすく解説

違いのギモン

現代社会に生きる私たちの多くは、働き、お金を稼ぎ、生きていきます。子どもたちもいつかは働く時が来るでしょうし、高齢者の方々は既にたくさん働いてきたことでしょう。

さて、世の中には様々な仕事がありますが、もらえるお金の呼び名が異なることがあります。ある人は「給与」をもらい、ある人は「報酬」をもらいます。

この違いは、一体何なのでしょうか。今回は、多くの人が知らない「給与」と「報酬」の違いについて解説していきます。

結論:雇用関係があれば「給与」、なければ「報酬」

会社の使用者から労働者に対して支払われる賃金を「給与」といいます。

一方、雇用関係がない人に対する労働の対価を「報酬」といいます。

「給与」をもっと詳しく


労働者に対して使用人が支払うお金を「給料」といいます。そして「給料」に加え、権利や現物、諸手当など使用者から提供されるものを全て含めて「給与」といいます。「給与」は主に雇用契約を結んだ使用者から労働者へ、労働の対価として与えられるものです。

「給与」の中に含まれる権利の例としては、自社製品の割引や社内食堂の利用などがあります。現物の例としては、会社から支給される家屋などがあります。諸手当の例としては、扶養手当、住居手当、通勤手当、時間外手当などがあります。

例えば、会社で正社員として働いている人に支払われるのは「報酬」ではなく「給与」となります。

 

「給与」と同じような意味の言葉に「給与所得」があります。所得税法28条では「給与所得」という言葉を「俸給(国家公務員への給料)、給料、賃金、歳費(国会議員への給料)及び賞与並びにこれらの性質を有する給与」と定義づけられています。

「給与所得」とは所得税法において「所得」という観点から見たときに1区分であり、給与収入から給与所得控除額(納税者の生活状況に応じ、納税額を調整する金額。必要経費)を引いたものです。

一方、労働基準法第11条では「賃金」という言葉が「労働の対価として使用者が労働者に支払うすべてのもの」と定義づけられています。法律においては「賃金」は「給与」よりも広い定義となっています。

 

また、健康保険法では「報酬」と呼ばれます。収入のニュアンスで使用される言葉は「給与」「賃金」「報酬」がありますが、法律によって使い分けられています。

また、日常においては単に「金品を与えること」という意味でも使用されます。

「報酬」をもっと詳しく


「報酬」とは、作業の完遂、物の使用、労働などの対価・お礼として給付される金・物品のことです。雇用契約がない場合に使用されることが多いです。

例えば、会社がフリーランスのエンジニアに一部業務を委託した場合、エンジニアと会社の間の契約は雇用契約ではなく、業務委託契約になります。そのため、この場合発生するのは「給与」ではなく「報酬」です。他にも、雇用契約のないライター業務や講演、弁護士費用なども「報酬」です。

 

会社の役員は、会社の労働者とは異なり、会社と雇用契約を結んでいません。そのため、役員の仕事に対して会社が支払うお金は「役員給与」ではなく、「役員報酬」となります。

「報酬」という言葉は、法律において民法、健康保険法、介護保険法、厚生年金保険法、などで使用されています。健康保険法第5条第3項によると、「報酬」とは「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのもの」とされています。

「労働者が、労働の対償として受けるすべてのもの」とあるように、法律的には雇用関係の有無などは関係なく使用されています。

まとめ

以上、この記事では、「給与」と「報酬」の違いについて解説しました。

  • 給与:雇用契約を結んだ労働者に対する賃金
  • 報酬:雇用契約のない業務に対する賃金

ちなみに殺し屋の契約形態は業務委託契約なので、天才スナイパーのゴルゴ13がもらうお金は「報酬」になります。実際に漫画で登場する依頼主も「報酬の50万ドルだ。」と発言しています。ゴルゴ13に依頼するほどの人であれば、「給与」と「報酬」の違いもわきまえているようです。

近年は会社に属さないフリーランスと呼ばれる働き方が増加しています。そのため従来よりも「報酬」を使う機会も増えるかもしれません。「給与」と混同しないように気を付けてくださいね。