アレキシサイミアとは「自分の感情を認識したり、表現したりすることが苦手な傾向」という意味です。
医学用語、心理学用語であるアレキシサイミの意味や症状を知っている人はほとんどいないでしょう。
この記事では、誤解されやすいアレキシサイミアの意味を具体例を挙げながら説明していきます。
☆「アレキシサイミア」をざっくり言うと……
読み方 | アレキシサイミア |
---|---|
意味 | 自分の感情を認識したり、表現したりすることが苦手な傾向 |
提唱者 | アメリカの精神科医であるピーター・E・シフネオス |
英語訳 | alexithymia(アレキシサイミア) |
このページの目次
「アレキシサイミア」の意味
自分の感情を認識したり、表現したりすることが苦手な傾向
例:僕はアレキシサイミアだから、父の葬式でも泣くことができなかった。
自分の感情を自覚したり表現したりすることが苦手で、想像力に欠ける傾向のことを表す言葉です。
医学的なアレキシサイミアの特徴は、以下のように定義付けされています。
- 自分の感情がどのようなものであるか言葉で表したり、情動が喚起されたことによってもたらされる感情と身体の感覚とを区別したりすることが困難である
- 感情を他人に言葉で示すことが困難である
- 貧弱な空想力から証明されるように、想像力が制限されている
- (自己の内面よりも)刺激に結びついた外的な事実へ関心が向かう認知スタイル
アレキシサイミアは、「失感情症」「失感情言語化症」「失感情表現症」「アレキシサイミア傾向」などと呼ばれることもあります。
アレキシサイミアは「感情を失った状態」だと誤解されてしまうことがありますが、これは間違いです。
あくまで、「感情はあるのにもかかわらず、認識するのが苦手な状態」だということに注意しましょう。
「アレキシサイミア」の原因
精神的な症状は以下の2つによって定まるのですが、アレキシサイミアの原因は、どちらなのかはっきりとはわかっていません。
- 環境的要因
家庭環境や日常生活での経験などの影響 - 性格的要因
生まれたときから決まっている遺伝的な影響
生まれ持った性格的な要因が強いという説や、幼いころのトラウマや家庭環境などの環境的要因が強いという説が存在します。
「アレキシサイミア」になりやすい人
アレキシサイミアになりやすい人は、以下のような特徴を持っていることが多いです。
- 緊張しやすい人
- 不安を感じやすい人
- 几帳面な人
- 八方美人的な人
- 責任感が強い人
- まじめな人
- 神経質な人
- 女性
- 完璧主義な人
- ストレスを溜めやすい人
「アレキシサイミア」の具体例
アレキシサイミアは、自分の感情を認識したり、表現したりすることが苦手な傾向のことを表します。
具体例として、以下のようなシチュエーションが挙げられます。
- 大切な人を亡くした時、悲しいという感情はあるにも関わらず涙が出てこない
- 娘の結婚式を嬉しいと思えない
➀の例は「感情表現が上手くできない」という症状がアレキシサイミアに当てはまります。
➁の例では、「自分の感情を認識できない」という症状がアレキシサイミアに当たります。
どちらの例でも、「悲しい」や「嬉しい」という気持ちが存在しないわけではないのに、それを認識、表現できないのです。
「アレキシサイミア」に併発する症状
アレキシサイミアの傾向が原因で、他の症状が引き起こされることがあります。
例えば、感情表現が苦手なアレキシサイミアの患者は、ストレスを溜めやすいため、以下のような病気を併発しやすいと言われています。
- うつ病
- 胃潰瘍(いかいよう)
- 潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)
- 狭心症(きょうしんしょう)
- 気管支喘息(きかんしぜんそく)
- アトピー性皮膚炎
また、アレキシサイミアとの直接的な因果関係は不明ですが、右半球と左半球の連絡機能の低下が指摘されています。
「アレキシサイミア」の提唱者
アレキシサイミアは、アメリカの精神科医であるピーター・E・シフネオスが、1970年代に提唱した概念です。
ハーバード大学マサチューセッツ総合病院で働いていたシフネオス医師は、心身症(心理的因子が影響して発症する身体疾患)の治療を長年行っていました。
その中で、多くの心身症患者には共通して「自分の感情を表現するのが難しい」という特徴があることに気づきました。
この共通する特徴を、シフネオス医師はアレキシサイミアと名付けました。
つまり、アレキシサイミア自体が病気や障害として定義されたわけではなく、心身症の一要因として発見された症状なのです。
アレキシサイミアの特徴は、その後の研究者たちによって具体的に定められていきました。
「アレキシサイミア」の英語訳
アレキシサイミアを英語に訳すと、次のような表現になります。
- alexithymia
(アレキシサイミア)
“alexithymia” という英単語の由来は、ギリシャ語です。
ギリシャ語のa(非)・lexis(言葉)・thymos(感情)を組み合わせた造語が由来になっています。
「アレキシサイミア」の治療法
アレキシサイミアの原因が医学的に特定されていないので、アレキシサイミアを根本的に治療できる方法は、いまだに確立されていません。
アレキシサイミアは「障害」や「病気」というよりも、あくまで「傾向」や「状態」を表すものです。
そのため、「アレキシサイミア自体を治療する」という考えではなく、「アレキシサイミアが要因で引き起こされる心身症を治療する」という考えが一般的です。
- 呼吸法で心身の緊張を和らげる
- 自律訓練法などのリラクゼーション技法を行う
これらの治療がうまくいかない場合や、何度も再発してしまう場合には、以下のような方法でアレキシサイミアを緩和していくことがあります。
- 集団精神療法
同じ症状を抱える集団を作り治療者同士がコミュニケーションをとる治療法 - カウンセリング
「アレキシサイミア」のまとめ
以上、この記事ではアレキシサイミアについて解説しました。
読み方 | アレキシサイミア |
---|---|
意味 | 自分の感情を認識したり、表現したりすることが苦手な傾向 |
提唱者 | アメリカの精神科医であるピーター・E・シフネオス |
英語訳 | alexithymia(アレキシサイミア) |
難しい医学用語でしたが、意味や症状を覚えておけるといいですね。