芥川賞と直木賞の違いをわかりやすく解説!小説選びの参考に!

違いのギモン

芥川賞と直木賞には、選ばれる小説の種類など、7つの違いがあります。

よく本屋の店頭に並ぶ芥川賞と直木賞ですが、実際にどのような作品が選ばれるのか、はっきりわかっていない人も多いのではないでしょうか。

試しに読んでみようかな、と思ったとき、それぞれどのような小説なのかがわかっている方がうれしいですよね。

この記事では、芥川賞と直木賞の違いや、純文学と大衆文学の違いなど、芥川賞と直木賞にまつわるさまざまな話を紹介します。

☆「芥川賞」「直木賞」の違いをざっくり言うと……

芥川賞直木賞
正式名称芥川龍之介賞直木三十五賞
ジャンル純文学大衆小説
対象作家新人、または無名の作家中堅作家も含む
長さ短編〜中編長編も含む
対象となる作品雑誌(同人雑誌を含む)に掲載されている作品書籍として出版されている作品
選考委員の人数10人9人
受賞後雑誌「文藝春秋」に全文が掲載される雑誌「オール読物」に一部が掲載される

【結論】「芥川賞」と「直木賞」の7つの違い

芥川賞と直木賞には以下のような7つの違いがあります。

芥川賞直木賞
正式名称芥川龍之介賞直木三十五賞
ジャンル純文学大衆小説
対象作家新人、または無名の作家中堅作家も含む
長さ短編〜中編長編も含む
対象となる作品雑誌(同人雑誌を含む)に掲載されている作品書籍として出版されている作品
選考委員の人数10人9人
受賞後雑誌『文藝春秋』に全文が掲載される雑誌『オール読物』に一部が掲載される

逆に共通点は以下の通りです。

  • 創立者
    菊池寛
  • 主催
    日本文学振興会
  • 選考会
    上半期(7月)と下半期(翌年1月)の年に2回
  • 選考委員の任期
    特になし。誰かが退任すると新しい人が就任する
  • 正賞と副賞
    懐中時計と100万円
あくまで同じ団体が行っている2部門の賞、ととらえましょう。
選考場所もほんの少しだけ違う

芥川賞と直木賞の選考は、1961年以降はどちらも築地の料亭「新喜楽」で行われています。

ただし、芥川賞は1階、直木賞は2階で行われています。

「どちらかが格上」ということはない

最近は直木賞に中堅作家が選ばれることも多いため、一見直木賞の方が格上の賞に感じる人も多いです。

逆に、純文学として芸術性の求められる芥川賞の方が格調高く見える人も多いです。

しかし、芥川賞と直木賞はどちらも選考基準や対象作品が全く違うため、どちらかの賞の方が格上ということはありません。

両方の賞の受賞はできない

芥川賞と直木賞には、どちらかの賞で受賞が決まった場合はもうひとつの賞の候補からは外れるというルールがあるため、ダブル受賞は不可能です。

なお、両方の賞の候補として作品が選ばれたことは、過去に4回ありました。

これから、それぞれの違いについて詳しく見ていきたいと思います。

【1】正式名称の違い

芥川賞も直木賞も実在の人物に基づいて創設された賞であるため、正式名称は人の名前を冠したものになっています。

芥川賞は「芥川龍之介(あくたがわりゅうのすけ)賞」、直木賞は「直木三十五(なおきさんじゅうご)賞」が正式名称です。

芥川龍之介も直木三十五も、どちらも文藝春秋社の発展に大きく寄与したため、文藝春秋の創業者である菊池寛がそれを称えて文学賞を作りました。

また、芥川龍之介は純文学を、直木三十五は大衆小説を書いていたことから、芥川賞は純文学の賞、直木賞は大衆小説の賞となりました。

「芥川龍之介」とは

芥川龍之介は、主に大正時代に活躍した純文学作家です。

代表作は『羅生門』や『鼻』などです。国語の教科書で読んだことがある方も多いのではないでしょうか。

雑誌『文藝春秋』に毎号巻頭作品を載せるなど、雑誌の発展に大きく寄与しました。

「直木三十五」とは

直木三十五は、主に大正時代に活躍した大衆文学作家です。

代表作は『南国太平記』などです。

時代小説や大衆文学を広め、その地位を向上させました。

雑誌『文藝春秋』には、創刊時に文壇ゴシップを載せ、毒舌で人気になりました。

【2】ジャンルの違い

芥川賞の対象となる作品のジャンルは「純文学」、直木賞は「大衆小説」です。

純文学と大衆小説の違い

純文学と大衆小説には、以下のような違いがあります。

純文学大衆小説
大事な点芸術性
文の美しさや表現の多彩さなどが評価される
娯楽性
純粋なエンターテインメント性が評価される
ストーリーの有無なくてもよいほぼある
読みやすささまざまある程度は読みやすい
ジャンルの例私小説
心境小説
エンタメ小説
ミステリ小説
時代小説
など、面白ければなんでも

私小説と心境小説は、それぞれ以下のような小説です。

  • 私小説
    自分の経験や精神の動きをそのまま描いた小説のこと
    日本ではわざと自分を悪く見せるような作風も多かった
    田山花袋の『布団』が有名
  • 心境小説
    作者が日常生活において出会ったものと自己の心境を描く
    志賀直哉『焚火』など、白樺派の流れを汲んでいる
白樺派とは、雑誌『白樺』に自分の作品を出していた作家たちの総称です。

その母体は学習院大学という貴族のための学校であったため、金銭的に恵まれている人が多く、明るく肯定的で穏やかな作風を特徴としていました。

ただし、最近では純文学と大衆小説の間の境が曖昧になっています。

また、新人作家が芸術的な作品を出すのは難しく、逆に純文学作家として長く活動してきた作家は長編小説を出す傾向があるなど、芥川賞と直木賞それぞれの受賞条件のミスマッチから受賞作の区分けも曖昧になっています。

【3】対象作家の違い

芥川賞は新人や無名の作家を対象にしているのに対し、直木賞は中堅作家も含むようになってきました。

もとは直木賞も新人や無名の作家が対象でしたが、中堅以上の作家がノミネート・受賞し始めたことから、徐々に対象作家の範囲が広くなりました。最近では中堅作家がメインとなっています。

【4】長さの違い

芥川賞は短編〜中編を対象としていますが、直木賞は長編も含みます。

なお、短編は5000字程度、中編は薄い文庫本(40000字)程度、長編はそれ以上の長さのイメージです。

【5】対象となる作品の違い

芥川賞は雑誌(同人雑誌を含む)に掲載されている作品が対象ですが、直木賞は書籍として出版されている作品が対象です。

このことからも、芥川賞は新人向けの賞、直木賞は中堅どころも含む賞であることがわかります。

【6】選考委員の人数の違い

芥川賞の選考委員は10人、直木賞の選考委員は9人です。

どちらも、過去にその賞に選ばれた作家や、ノミネートされた作家などが多いです。

【7】受賞後の違い

芥川賞の受賞作は『文藝春秋』に全文が掲載、直木賞の作品は『オール読物』に一部が掲載されます。

どちらも文藝春秋社から出版されており、上半期は9月号、下半期は3月号に掲載されます。

受賞作品を読みたい場合は、それぞれの雑誌をチェックしましょう。

補足:その他の文学賞

芥川賞と直木賞以外の文学賞を紹介します。

まず国内の文学賞には、以下のようなものがあります。

対象備考
本屋大賞既刊本書店員の投票で決定
三島由紀夫賞小説
詩歌
戯曲
評論
「芥川賞」と同じような位置づけだが、純文学以外も受賞
山本周五郎賞大衆文学
時代小説 など
「直木賞」と同じ位置づけ
川端康成文学賞短編小説主催は「公益財団法人川端康成記念会」
吉川英治文学賞エンタメ文学エンタメ系文学賞の中で最高峰と言われる
谷崎潤一郎賞小説
戯曲 など
その年を代表する文学作品が選ばれる

続いて、海外の文学賞には以下のようなものがあります。

主催国対象備考
ノーベル文学賞スウェーデン文学日本人初の受賞者は川端康成
ブッカー賞イギリス英語で書かれた長編小説英語であれば世界中の作家や作品が対象
ピューリッツァー賞アメリカジャーナリズム
文学
音楽
アメリカに関わるものが対象

芥川賞と直木賞の違いのまとめ

以上、この記事では、芥川賞と直木賞の7つの違いについて解説しました。

芥川賞直木賞
正式名称芥川龍之介賞直木三十五賞
ジャンル純文学大衆小説
対象作家新人、または無名の作家中堅作家も含む
長さ短編〜中編長編も含む
対象となる作品雑誌(同人雑誌を含む)に掲載されている作品書籍として出版されている作品
選考委員の人数10人9人
受賞後雑誌「文藝春秋」に全文が掲載される雑誌「オール読物」に一部が掲載される

それぞれの賞の特徴を知っていると、読む本を選ぶのが楽しくなりますよ。

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Rie
日英バイリンガル東大生。 10年間小説を書き続けているため、文章力には自信があります。 いくつかの小説投稿サイトで掲載/連載している他、教育系NPOでもライターをしています。