「慈しみ」とは「目下の者や弱い者への無償の愛」という意味です。
みなさんは「慈しみ」という言葉を聞いたことはありますか?
「慈しみ」は日常ではあまり使わない言葉です。
また「愛情」や「思いやり」とニュアンスが似ているため、混乱しやすいですよね。
そこで、この記事では、「慈しみ」の意味や使い方を詳しく解説していきます。
☆「慈しみ」をざっくり言うと……
読み方 | 慈しみ(いつくしみ) |
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意味 | 目下の者や弱い者への無償の愛 |
語源 | 古語「うつくしむ」が変化したもの |
類義語 | 思いやり 愛情 仁愛 など |
英語訳 | affection(慈しみ・愛情) kindness(慈しみ・人情・親切) など |
このページの目次
「慈しみ」の意味
目下の者や弱い者への無償の愛
「慈しみ」は目下の者や弱い者への愛を表す言葉です。
大切な相手のことをいたわる気持ちや相手のことを可愛がる気持ちのことを指します。
愛は愛でも恋愛において使われることはなく、年下の子を可愛がる際にあふれ出る愛情を指して使われます。
そして「慈しみ」が示す愛は、相手に何かをしてあげたから自分にも何か返してほしいというような、見返りを求める愛ではありません。
相手を思う気持ちだけで与える、無償の愛を「慈しみ」と呼びます。
「慈」の意味
「慈しみ」の「慈」には以下のような意味があります。
- いたわり育てる
- 愛を持って苦しみを取り除く
「慈しみ」の使い方
「慈しみ」は親が子供を愛するときなどの愛情を指す言葉です。
具体的な例文を見ていきましょう。
- Aさんのお母さんは、非常に慈しみの心がある。
- 彼は寛大な心を持っており、慈しみが深い。
これらの例文では、優しさや愛情があることを表す言葉として「慈しみ」が使われています。
さらに、「慈しみ」を使った代表的な表現としては、以下の四つがあります。
- 慈しみを覚える
- 慈しみ合う
- 慈しみの目で見る
- 慈しみに満ちた
「慈しみを覚える」の使い方
「慈しみを覚える」は、他人からの愛情を感じたときに使用する表現です。
例文は以下の通りです。
- 上司からの激励の言葉に、慈しみを覚える。
- 母からの何気ない一言に、慈しみを覚えた。
「慈しみ合う」の使い方
「慈しみ合う」は、お互いが愛し合っているときに使用する表現です。
例文は以下の通りです。
- その夫婦はお互いに慈しみ合っている。
- 私たちは兄弟同士で互いに慈しみ合っている。
「慈しみの目で見る」の使い方
「慈しみの目で見る」とは、思っている相手に対して深い愛情を含んだ視線を送ることを指します。
例文は以下の通りです。
- 我が子の成長を、慈しみの目で見る。
- 後輩を慈しみの目で見る。
「慈しみに満ちた」の使い方
「慈しみに満ちた」とは、他人を思いやる気持ちが非常に強いことです。
例文は以下の通りです。
- 彼女は人が大好きで、常に慈しみに満ちている。
- 慈しみに満ちた人は、誰からも愛される。
「慈しみ」を使うときの注意点
「慈しみ」は使用する際にいくつかの注意点があります。
注意点①:目上の人に対して使用しない
「慈しみ」は子供や赤ちゃんなど、弱い立場にある人に対して使う言葉です。
そのため、目上の人に対して使うと本来の意味から外れてしまうため、一般的に使用しません。
注意点②:差別的な意味はない
「慈しみ」は自分より立場の弱い相手に使うため、差別的な意味を含んでいると考える人も一定数います。
しかし立場が上の人からの無条件の愛を指す言葉であり、馬鹿にするようなニュアンスは全く含まれていません。
「慈しみ」の由来
「慈しみ」は、「慈しむ」という動詞を連用形にしたものです。
「慈しむ」は平安時代にあった「うつくしむ」という動詞の形が変わったものです。
「うつくしむ」の意味は以下の通りです。
- かわいがる
- 大切にする
- 愛する
「慈しみ」の類義語
「慈しみ」の類義語には、以下のようなものがあります。
- 思いやり
他人のことを気づかう気持ち - 愛情
事物を深く愛する心 - 仁愛(じんあい)
相手のことを思う気持ち - 慈愛(じあい)
常に慈しみを注いで可愛がる気持ち - 慈悲(じひ)
相手を慈しみ、憐れむ気持ち - 恩愛(おんあい)
夫婦・親子間での愛情 - 可愛がる
可愛いと感じて、優しく扱うこと - 愛心(あいしん)
人や物を慈しみ、愛する心 - 敬愛(けいあい)
相手を尊敬し、親しみの心を持つこと - 愛着(あいちゃく)
慣れ親しんだものを手放したくないと思う気持ち - いとしみ
かわいそうに思う気持ち、可愛がる気持ち
ここからは、それぞれの類義語と慈しみの違いについて解説していきます。
「慈しみ」と「思いやり」の違い
「思いやり」は、他人のことを気づかう気持ちです。
「慈しみ」と「思いやり」には以下のような違いがあります。
- 慈しみ
相手のことを純粋に思いやる気もち - 思いやり
相手をかわいそうだと思うとともに、思いやる気もち
「慈しみ」と「思いやり」は「かわいそう」というニュアンスが含まれているかが異なるのです。
「慈しみ」と「愛情」の違い
「愛情」は、事物を深く愛する心です。
「慈しみ」と「愛情」の違いは以下の通りです。
- 慈しみ
相手のことを思いやり、愛する気持ち - 愛情
相手のことを愛する気持ち
「慈しみ」と「愛情」は「思いやる」というニュアンスがあるかどうかが異なります。
「慈しみ」と「仁愛」の違い
「仁愛」は、相手のことを思う気持ちです。
「慈しみ」と「仁愛」の違いは以下の通りです。
- 慈しみ
相手のことを深く思いやる気もち - 仁愛
相手のことを思いやる気もち
「慈しみ」と「仁愛」では、気持ちの深さが異なります。
「慈しみ」と「慈愛」の違い
「慈愛」は、常に慈しみを注いで可愛がる気持ちです。
「慈しみ」と「慈愛」の違いは以下の通りです。
- 慈しみ
相手のことを純粋に思いやる愛情 - 慈愛
慈しみの中でも、特に親が子供に対して注ぐような愛情
上記のように、親が子供に対して注ぐ愛情の場合は「慈愛」を使うことができ、そうでない場合は「慈しみ」を使います。
「慈しみ」と「慈悲」の違い
「慈悲」は、相手を慈しみ、憐れむ気持ちです。
「慈しみ」と「慈悲」の違いは以下の通りです。
- 慈しみ
相手のことを純粋に思いやる気もち - 慈悲
憐れみを含んだ、相手を思いやる気持ち
「慈しみ」と「慈悲」は、「憐れみ」の気持ちがあるかどうかが異なるのです・
「慈しみ」と「恩愛」の違い
「恩愛」は、夫婦・親子間での愛情です。
「慈しみ」と「恩愛」の違いは以下の通りです。
- 慈しみ
相手のことを純粋に思いやる気もち - 恩愛
慈しみの中でも特に親子間での、相手を思いやる情愛のこと
上記のように、親子間の情愛であれば「恩愛」を使うことができ、そうでない場合は「慈しみ」を用います。
「慈しみ」と「可愛がる」の違い
「可愛がる」は、可愛いと感じて、優しく扱うという意味です。
「慈しみ」と「可愛がる」の違いは以下の通りです。
- 慈しみ
純粋に相手を思いやる気もち - 可愛がる
相手が可愛いため、相手を大事にしようとすること
「慈しみ」と「可愛がる」は、相手が可愛いから行うのか、そうでないのかという点が違うポイントです。
「慈しみ」と「愛心」の違い
「愛心」とは、人や物を慈しみ、愛する心です。
「慈しみ」と「愛心」の違いは以下の通りです。
- 慈しみ
相手の純粋に思いやる気もちという意味のみを持つ - 愛心
相手を慈しむ気持ち以外にも、「愛欲に満ちた心」という意味も持つ
「慈しみ」と「愛心」は、「愛欲に満ちた心」という意味があるかどうかが異なるのです。
「慈しみ」と「敬愛」の違い
「敬愛」とは、相手を尊敬し、親しみの心を持つことです。
「慈しみ」と「敬愛」の違いは以下の通りです。
- 慈しみ
相手に対する思いやりの気持ち - 敬愛
相手を尊敬し、親しむ気持ち
「慈しみ」と「敬愛」では、相手に抱く感情が異なります。
「慈しみ」と「愛着」の違い
「愛着」とは、慣れ親しんだものを手放したくないと思う気持ちです。
「慈しみ」と「愛着」の違いは以下の通りです。
- 慈しみ
相手のことを純粋に思いやる気もち - 愛着
自分主体で、相手を手放したくないと思う気持ち
「慈しみ」と「愛着」は、動作の目的に違いがあります。
「慈しみ」と「いとしみ」の違い
「いとしみ」とは、かわいそうに思う気持ち、可愛がる気持ちです。
「慈しみ」と「いとしみ」の違いは以下の通りです。
- 慈しみ
相手のことを純粋に思いやる気もち - いとしみ
相手が可愛い、またはかわいそうなため、相手のことを思う気持ち
「慈しみ」と「いとしみ」では、動作を行う理由があるか、という点が異なるのです。
「慈しみ」の英語訳
「慈しみ」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- affection
(慈しみ・愛情) - kindness
(慈しみ・親切・人情) - love
(愛・愛情)
英語訳①:affection
“affection” は、愛情の中でも長続きして終わることのない愛情を表す言葉です。
また、温かく他人を見守る愛というニュアンスもあるため、「慈しみ」の訳語として適切です。
英語訳②:kindness
“kindness” は、親切や人情という意味をもつ言葉です。
相手を大切にしながら愛情を与えるというニュアンスがあるため、こちらも「慈しみ」の訳語として使うことができます。
英語訳③:love
“love” は、愛や愛情を表す言葉です。
相手を好きだったり愛していたりする際など幅広く愛情を表せる言葉のため、これも「慈しみ」の訳語として使うことができます。
慈しみがある人になるためには
「慈しみ」がある人になるためには、以下のようなことを意識するのが大切です。
- 怒りたくなっても自分の気持ちを冷静に考える
- 何か行動を起こすときに、相手からの見返りを考えない
怒りたくなっても自分の気持ちを冷静に考える
慈しみがある人は感情的になってイライラしたり、人に当たったりすることをしません。
イライラしそうになっても相手の気持ちを考え、自分をコントロールできます。
そのため、イライラしたときにも一旦冷静になって自分の気持ちを整理することで、感情をコントロールできるようになります。
何か行動を起こすときに、相手からの見返りを考えない
「慈しみ」がある人は基本的に相手を責めません。
何か自分にとって不都合なことが起きても、相手を思いやる気持ちを忘れずに行動できます。
このような行動をとるには、相手からの見返りを考えないことが重要です。
自分が優しくしたいから優しくしてあげる、という姿勢をとることで常に相手のことを思いやれるようになります。
「慈しみ」のまとめ
以上、この記事では「慈しみ」について解説しました。
読み方 | 慈しみ(いつくしみ) |
---|---|
意味 | 目下の者や弱い者への無償の愛 |
語源 | 古語「うつくしむ」が変化したもの |
類義語 | 思いやり 愛情 仁愛 など |
英語訳 | affection(慈しみ・愛情) kindness(慈しみ・人情・親切) など |
「慈しみ」は親が子供を可愛がるような他社への純粋な愛情を指します。
愛情について話す際、言葉の使い分けを意識している人は少ないと思います。
親子の愛について話す機会があれば、ぜひこの言葉を使ってみてください。