「アルカイックスマイル」とは「口に微笑を浮かべた表情」という意味です。
皆さんはアルカイックスマイルについてご存じですか?
飛鳥時代の仏像の特徴を表す美術用語として授業の中で習った覚えがある人もいるかもしれません。
今回は、謎が多くあまり意味の知られていないアルカイックスマイルについて詳しく解説していきます。
☆「アルカイックスマイル」をざっくり言うと……
英語表記 | アルカイックスマイル(archaic smile) |
---|---|
意味 | 口に微笑を浮かべた表情 |
語源 | カタカナ語の「アルカイック」 |
類義語 | 謎の笑み 神秘的 など |
英語訳 | archaic smile |
「アルカイックスマイル」の彫刻 | クーロスの頭部 弥勒菩薩半跏思惟像 止利式仏像 など |
このページの目次
「アルカイックスマイル」の意味
口に微笑を浮かべた表情
「古拙(こせつ)な微笑」と言われることもあります。
アルカイックスマイルは、初期の古代ギリシャ彫刻に多く見られ「唇の両端がやや上に上がり、微かな笑みを浮かべているような表情」を指します。
日本では、飛鳥時代に作られた仏像彫刻の顔に、アルカイックスマイルと呼ばれる微笑が見られます。
出典:ARTAgendA
しかし、同じようなアルカイックスマイルを浮かべている「飛鳥時代の彫刻」と「古代ギリシャ彫刻」に直接的な関係はありません。
古拙とは「技巧的には素朴であるが、古風で味わいのあること」を意味する言葉です。
「アルカイック」の意味
ここでは、アルカイックスマイルの「アルカイック」の意味を解説していきます。
- 古風で素朴な様子
- 原始性の残る初期ギリシャ美術の様式
「アルカイック」は、もともと「初期ギリシャ美術特有の様式」を指す言葉でした。
時代を重ねる中でこの意味が変化していき、現在では「古風で素朴な様子」の意味で用いられるようになりました。
「アルカイックスマイル」の特徴
アルカイックスマイルには、いくつかの特徴があります。
- 口角をほんの少しあげて唇を軽く合わせる
- 表情は控えめで眼差しは遠くする
- 口元が微かに話しかけるような表情
- 明るく上品で神秘的な柔らかい微笑み
- 口以外の部分の感情表現が少なくなっている
しかし、全体的には無表情で、わずかに口角が上がっている表情からアルカイックスマイルをミステリアスと感じる人も多くなっています。
「アルカイックスマイル」の使い方
アルカイックスマイルには、以下のような使い方があります。
- 古代ギリシャ期に作られた彫刻にアルカイックスマイルが見られた。
- 赤ん坊がアルカイックスマイルを浮かべている。
上の例文のように特徴的な「古拙(こせつ)の微笑(ほほえみ)」を表現する際に、アルカイックスマイルが使用されます。
「アルカイック」の語源
「アルカイック」の語源は、「古代ギリシアのアルカイック期(紀元前700~前500年ころ)」です。
「アルカイック」は、もともと「アルカイク」と呼ばれ「古代ギリシアのアルカイック期(紀元前700~前500年ころ)」を指す言葉として使用されていました。
「アルカイック」は、「古い」「古風な」を意味するギリシア語の「アルカイオス」から派生した言葉です。
「アルカイック」という言葉は上記のように、美術史上における古代ギリシャの時代区分を表す言葉としても使われています。
古代ギリシャの彫刻は「ジオメトリック期」「アルカイック期」「クラシック期」「ヘレニズム期」の4期に分類されます。
「アルカイック期」は、紀元前8世紀頃から紀元前5世紀初頭頃までを指します。
「アルカイックスマイル」の類義語
アルカイックスマイルには以下のような類義語があります。
- 謎の笑み
謎めいた笑み - 神秘的
人間の知恵でははかり知れず、言葉でも言い表せないほど不思議な様子 - 本意が分からない表情
- 謎めいた表情
- 不思議に感じられる表情
アルカイックスマイルは、「微かな笑み」を表す言葉です。
そのため、「本意が分からない表情」や「謎めいた表情」「不思議に感じられる表情」は言い換え表現として使用できます。
「アルカイックスマイル」の英語訳
アルカイックスマイルは英語では以下のように表します。
- archaic smile
(古代ギリシアのアルカイク美術の彫像に見られる表情)
日本語では「古式」あるいは「古拙(こせつ)」が近い意味です。
「アルカイックスマイル」の彫刻
古代ギリシャ期に作られた彫刻、日本においては、飛鳥時代に作られた仏像がアルカイックスマイルの特徴を備えています。いくつか紹介していきます。
クーロスの頭部
出典:Wikipedia
「クーロス」とはギリシャ語で「高貴な少年や青年」を意味し、ギリシャ美術史上におけるアルカイック期に作られた青年の裸体像を指します。
弥勒菩薩半跏思惟像
出典:Pinterest
弥勒菩薩半跏思惟像としては、京都府にある広隆寺の「弥勒菩薩半跏思惟像(みろくぼさつはんかしゆいぞう)」や奈良県にある中宮寺の「半跏思惟像(はんかしいぞう)」などが有名です。
止利式仏像
出典:Wikipedia
飛鳥時代の「止利式仏像(とりようしきぞう)」にもアルカイックスマイルが見られます。
623年に作られた法隆寺金堂本尊の「銅造釈迦三尊像」を代表作とする飛鳥時代の渡来系の仏師、鞍作止利(くらつくりのとり)の仏像は、止利式(とりしき)と呼ばれる様式に分類されます。
モナ・リザの微笑み
出典:CNN style
「モナ・リザ」はイタリアの美術家レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた油彩画です。
上半身のみが描かれた女性の肖像画である「モナ・リザ」の表情もアルカイックスマイルと例えられることがあります。
「アルカイックスマイル」のまとめ
以上、この記事では「アルカイックスマイル」について解説しました。
英語表記 | アルカイックスマイル(archaic smile) |
---|---|
意味 | 口に微笑を浮かべた表情 |
語源 | カタカナ語の「アルカイック」 |
類義語 | 謎の笑み 神秘的 など |
英語訳 | archaic smile |
「アルカイックスマイル」の彫刻 | クーロスの頭部 弥勒菩薩半跏思惟像 止利式仏像 など |
アルカイックスマイルは、「古拙の微笑」を表す美術用語として使用されています。
アルカイックスマイルは控えめでありながら、口角をほんの少し上がっているなどと少しミステリアスな表情です。
しかし、見た相手にリラックス感を与える効果をもたらすこともあります。
古代ギリシャの彫刻像が持つ微笑がアルカイックスマイルの由来ですが、日本の飛鳥時代に作られた仏像にも同じ微笑が頻繁に現れています。
アルカイックスマイルへの理解を深め、表現の幅を広げていきましょう。