「感銘を受ける」は「この先も忘れられないほど、心を大きく動かされる」という意味です。
漢字が少し難しいため、「感銘を受ける」という言葉を普段の生活のなかで使っていいのか、疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
また、「他の表現への言い換え方を知りたい」と思っている方もいるでしょう。
この記事では、「感銘を受ける」の意味や使い方、類語を詳しく解説します。
☆「感銘を受ける」をざっくり言うと……
読み方 | 感銘(かんめい)を受ける |
---|---|
意味 | この先も忘れられないほど、心を大きく動かされる |
類語 | 感銘を味わう、感銘を覚える、感銘するなど |
対義語 | 失望する、幻滅するなど |
英語訳 | be impressed by〜(〜に感銘を受ける)など |
このページの目次
「感銘を受ける」の意味
この先も忘れられないほど、心を大きく動かされる
「感銘を受ける」は、「この先も忘れられないほど、心を大きく動かされる」という意味です。
「感銘」という熟語を用いた慣用表現です。
素晴らしいものに心を動かされた際に、非常にポジティブな意味合いで使われます。
ここからは、「感銘」の意味を詳しく解説します。
「感銘」の意味を詳しく
「感銘」は、「心を動かされる」という意味の名詞です。
「感銘」は「感」と「銘」の二語から成り立っています。
- 感:心を動かされる
- 銘:一流で優れているもの
これらの二語を組み合わせると、「優れたものに心を動かされる」となります。
したがって、「感銘」は「素晴らしいものに触れて、心を動かされる」という意味になるのです。
能動態は「感銘を与える」など
「感銘を受ける」は、何かから感動を得るという “受動態” の表現です。
一方で、相手の心を動かすという “能動態” の表現としては、以下のようなものがあります。
- 感銘を与える
- 感銘をもたらす
参考までにおさえておきましょう。
「肝銘を受ける」と書く場合もある
「感銘を受ける」は、「肝銘を受ける」と書く場合もあります。
「肝」には、以下のような意味があります。
- 肝臓
- 心
- 物事の重要な部分
上記3つの表現のうち、②の「心」という意味が、「肝銘を受ける」の「肝」に含まれています。
「感銘を受ける」のほうが、「肝銘を受ける」よりも一般的な表記です。
そのため、表記に迷った際には「感銘を受ける」と書くのが無難です。
「感銘を受ける」の使い方・例文
「感銘を受ける」は、主に以下のようなかたちで使います。
- 〇〇に感銘を受ける
- 感銘を受けた〇〇
〇〇部分には、心を動かされた物事が入ります。
具体的な例文を見てみましょう。
- 最後まで諦めない選手の姿に、感銘を受けた。
- 私が感銘を受けた映画は、黒澤明監督の『生きる』です。
「感銘を受ける」は、すでに見聞きした出来事について使うことが多いです。
そのため、「〇〇に感銘を受ける」は、「〇〇に感銘を受けた」というように過去形で使われる傾向があります。
目上の人との会話で使うことが多い
「感銘を受ける」は、目上の人との会話や手紙などで使うことが多いです。
「感動する」などの表現に比べると、あらたまった印象の言葉であるからです。
目上の人に対して使う際は、「感銘を受ける」の「受ける」部分を、以下のような丁寧なかたちに変えましょう。
- 感銘を受けます
- 感銘を受けました
目上の人との会話しているシチュエーションを思い浮かべながら、以下の例文を見てみましょう。
- 校長先生のスピーチには、毎回感銘を受けます。
- 課長からいただいた本を拝読したのですが、感銘を受けました。
「感銘を受ける」を使うときの注意点
「感銘を受ける」を使うときには、以下の点に気をつけましょう。
- 自分に対して使うのは不自然
- 敬語ではない
- ネガティブな意味合いでは使わない
- 自然・風景にはあまり使わない
以下、それぞれについて解説します。
①自分に対して使うのは不自然
自分自身の行動に対して「感銘を受ける」を使うのは不自然です。
「自分に大きく心を動かされた」という意味合いになってしまい、「自分で自分を褒めていて、厚かましい」という印象になるからです。
②敬語ではない
「感銘を受ける」そのものに、敬語としての役割はありません。
③ネガティブな意味合いでは使わない
「感銘を受ける」は、ネガティブな意味合いでは使いませんから、注意しましょう。
感銘の「銘」には、「一流で優れているもの」という良い意味が含まれています。
したがって、「感銘を受ける」はポジティブな意味合いで用いられるのです。
素晴らしい物事に心を動かされるときに使いましょう。
④自然・風景にはあまり使わない
「感銘を受ける」は、自然・風景に心を動かされた場面では、あまり使いません。
自然や風景の美しさが深く印象に残った場合は、「感動する」などの表現を使います。
このルールに明確な理由はありませんが、慣例として覚えておきましょう。
「感銘を受ける」は就職活動でも使う
「感銘を受ける」は、就職活動において、見聞きしたり、使ったりすることが多い表現です。
具体的な場面としては、以下の2つに分かれます。
- 企業側が使う場面
- 入社を志望する側が使う場面
以下、それぞれについて詳しく解説します。
企業側が使う場面
企業側は、「感銘を受けたもの」を質問することが多いです。
「この人は何に心を動かされるのだろうか」ということを聞くことで、入社志望者の内面を知ることができるからです。
たとえば、面接やエントリーシートのなかで、以下のような質問があります。
- あなたが感銘を受けた言葉は何ですか。
- 最近感銘を受けた出来事を教えてください。
入社を志望する人が使う場面
就職活動では、入社を志望する人が、企業に対して「感銘を受ける」を使うことも多々あります。
具体的には、面接やエントリーシートで、入社したい企業に強く共感した際に使います。
- 私は御社の企業理念に感銘を受け、入社を希望いたしました。
- 御社が様々な慈善事業をしていることを知り、感銘を受けました。
就職活動の際、企業に対しては、「感銘を受けました」「感銘を受け、〜」という表現を使いすぎないようにしましょう。
しつこい印象を与えてしまうからです。
「感銘を受ける」の類語
「感銘を受ける」には、たくさんの類語があります。
これらの類語は、以下4つのパターンに分けることができます。
- 「感銘」を用いた類語
- 心を動かされるという意味の類語
- とても印象的という意味の類語
- ずっと忘れないという意味の類語
次の見出しからは、それぞれのパターンに分けて、「感銘に受ける」の類語を紹介します。
類語①「感銘」を用いたもの
「感銘」を用いて、「感銘を受ける」と似た意味を表すことができます。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- 感銘を味わう
- 感銘を覚える
- 感銘する
これらはすべて、「感銘を受ける」と同じく「この先も忘れられないほど、心を大きく動かされる」という意味を表します。
しかし、厳密には、以下の表のように、細かいニュアンスの違いがあります。
厳密なニュアンス | |
---|---|
感銘を受ける | 強く心を動かされる |
感銘を味わう | しみじみと感動の気持ちを噛みしめる |
感銘を覚える | 自然と心を動かされる |
感銘する | 単純に心を動かされたことのみを表す |
類語②心を動かされるという意味のもの
「感銘を受ける」には、「心を動かされる」という意味合いがあります。
このニュアンスに当てはまる類語には、以下のようなものがあります。
- 感動(かんどう)する
- 感激(かんげき)する
- 琴線(きんせん)に触れる
- 感心(かんしん)する
- 共感(きょうかん)する
- 感服(かんぷく)する
- 敬服(けいふく)する
- 脱帽(だつぼう)する
- 胸に響く
- 心を打たれる
- 魂(たましい)が震える
- 感化(かんか)される
上記の表現はすべて、「何かに心を動かされる」という意味をもちます。
「感銘を受ける」と「感動する」の違い
「感銘を受ける」と「感動する」には、次のような違いがあります。
使う場面 | 持続性 | 自然・風景への使用 | |
---|---|---|---|
感銘を受ける | ややあらたまった表現 | ずっと続く感情 | |
感動する | 日常会話でもよく使う | 一時的な感情 |
「感銘を受ける」と「感激する」の違い
「感銘を受ける」と「感激する」には、以下のような違いがあります。
自分への使用 | その後の変化 | |
---|---|---|
感銘を受ける | – | |
感激する | 自分のモチベーションが上がる |
「感銘を受ける」と「琴線に触れる」の違い
「感銘を受ける」と「琴線に触れる」には、使い方において以下のような違いがあります。
- 感銘を受ける
「〇〇に感銘を受ける」と使う - 琴線に触れる
「〇〇が琴線に触れる」と使う
なお、「琴線に触れる」の「琴線」とは、琴(こと)の弦(げん)のことを表します。
素晴らしいものに触れ、感動することの例えなのです。
日本の伝統的な弦楽器のこと。
「感銘を受ける」と「感心する」の違い
「感銘を受ける」と「感心する」は、使うことができる相手について、以下のような違いがあります。
- 感銘を受ける
誰に対しても使える
(特に、目上の人に使うことが多い) - 感心する
目上の人には使えない
「感心する」は、目上の人に使うことができませんから、気をつけましょう。
目上の人に「感心しました」という表現を使うと、「相手に対して偉そうな態度をとっている」「敬意を欠いている」という印象になってしまいます。
「感銘を受ける」と「共感する」の違い
「感銘を受ける」と「共感する」は、どちらも心を大きく動かされることを表します。
ただし、「他人に対して同じ気持ちをもっているか」という点において、以下のような違いがあります。
- 感銘を受ける
単に心を大きく動かされることだけを表す - 共感する
他人の気持ちや意見に、「その通りだ」と思うことを表す
「感銘を受ける」は、他人の気持ちと同じ気持ちになることを表しています。
この点に注意しましょう。
類語③とても印象的という意味のもの
「感銘を受ける」は、何かに強く心を動かされたときに使う表現です。
ですから、「印象に強く残る経験をした」という意味合いが含まれています。
このニュアンスに当てはまる類語には、以下のようなものがあります。
- 強烈(きょうれつ)な
- インパクトの強い
- 衝撃を受ける
ただし、上記の表現はすべて、悪い場面でも使います。
この点は、良い意味で使う「感銘を受ける」とは異なるポイントですから、気をつけましょう。
類語④ずっと忘れないという意味のもの
「感銘を受ける」には、「心を大きく動かされる」という意味合いだけでなく、「ずっと忘れないだろう」という意味合いも含まれます。
このニュアンスに当てはまる類語には、以下のようなものがあります。
- 心に刻む
- 心に留める(とめる)
- 胸に刻む
- 肝に銘じる
- 脳裏(のうり)に焼き付く
- 目に焼き付く
- 留意する
- 銘記(めいき)する
- 印象に残る
これらの表現はすべて、「何かを記憶に残しつづける」という意味合いがあります。
この3つ以外の表現は、ネガティブな場面でも使う場合があります。
「感銘を受ける」の対義語
「感銘を受ける」には以下のような対義語があります。
- 失望(しつぼう)する
がっかりする - 幻滅(げんめつ)する
現実と現実が違うことがわかり、がっかりする - 無感動(むかんどう)
感動しないこと - 無感心(むかんしん)
感心をもたないこと
「感銘を受ける」の英語訳
「感銘を受ける」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- be impressed by〜
(〜に感銘を受ける) - be impressed with〜
(〜に感銘を受ける) - be moved by〜
(〜に感動する) - be touched by〜
(〜に心を動かされる)
「感銘を受ける」のまとめ
以上、この記事では「感銘を受ける」について解説しました。
読み方 | 感銘(かんめい)を受ける |
---|---|
意味 | この先も忘れられないほど、心を大きく動かされる |
類語 | 感銘を味わう、感銘を覚える、感銘するなど |
対義語 | 失望する、幻滅するなど |
英語訳 | be impressed by〜(〜に感銘を受ける)など |
類語のパターンなどを正しく理解して、「感銘を受ける」を使いこなしましょう。