「出身地」「地元」「故郷」の違いとは?意味と使い分けを解説

違いのギモン

初めて会う人との会話で欠かせない「出身地トーク」。様々な地域から来た人が集まる場では、文化や習慣の違いで盛り上がることがあります。

一方で、あまり「地元ネタ」に走ると、その地域に縁のない人が蚊帳の外に置かれてしまうことも。

「故郷」といえばみんなが持っているものですが、それって何を指すのでしょうか?

「出身地」「地元」「故郷」の違いはどこにあるのでしょう。

結論:生まれか育ちか愛着か

「地元」は現在住んでいる場所などを指すこともある一方で、「故郷」と「出身地」は、「育った場所」を指すことが多いです

「出身地」・「故郷」は生まれ育った場所を指すので変わることはほとんどありません。しかし、引っ越した先に愛着を感じれば、その場所は「地元」になります。

「出身地」をもっと詳しく


「出身地」の定義として、「生まれてから15歳まで最も長く過ごした場所」という定義が流布していますが、明確な情報源は見当たりません。

とはいえ、「子ども時代を最も長く過ごした場所」ととらえることは納得がいくでしょう。生まれてからすぐに離れてしまった場所よりも、幼いころ長く過ごした所の方がその人の人格形成に影響を与えます。

引っ越しが多くて様々な場所に住んだことがある人は、「最も長く過ごした」かどうかで出身地を決めるとスムーズでよう。

 

「出身地」と「地元」の違いをうまく説明している論文がありました。

[出身地とは]高校卒業時の居住地(中卒学歴者は中学卒業時の居住地)を指す.これは,生まれた場所よりも育った場所を出身地と考えたからである.

[出典:山口泰, 荒井良雄, 江崎雄治(2000), 地方圏における若年者の出身地残留傾向とその要因について, 経済地理学年報. 46 (1): p.51]

この論文では、地方出身者が「出身地」で就職する割合が高度経済成長期よりも高くなっていることを統計から明らかにしています。

その調査で使われた「出身地」の定義は、「高校卒業時の居住地」でした。高校から大学に進学したり、就職したりする際に親元を離れる人は多くいますが、中学を卒業して高校に進学するときに親元を離れる人は多くないでしょう。

家族で引っ越しをしていない限りは、高校(中学)を卒業するときに住んでいた場所が「子ども時代を最も長く過ごしていた場所」になるはずです。

「地元」をもっと詳しく

「地元」は、「生まれ育った場所」という意味だけではなく、「現在居住している場所」、「勢力を及ぼしている場所」という意味も持っています。

「出身地」を離れて別の場所に長く居住していれば、その場所が「地元」になります。

たとえば国会議員の選挙区が議員の出身地に関係のない場合でも、「議員の地元」というように表現します。これが、「地元」の「勢力を及ぼしている場所」の例です。

 

先ほど出身地の定義を考えるために引用した論文では、「地元」も定義されています。

地元残留と見なす「地元」の地域スケールについては,「親元を離れない」という意味からは,市町村単位,もしくはそれより小さい地域を想定するのが適当である(中略).しかし,県内移動であれば県外移動よりも移動距離が短く,親元との心理的距離も小さいこと等を考慮すれば,出身地の概念を県単位まで拡大して議論することにも意味があると考えられる.(同:45)

[出典:山口泰, 荒井良雄, 江崎雄治(2000), 地方圏における若年者の出身地残留傾向とその要因について, 経済地理学年報. 46 (1): p.45]

ここでは、「地元」と「出身地」が同時に扱われていて、「親元にとどまる」ことが「地元・出身地」にとどまることだと説明されています。親元を離れて進学しても、戻って就職することを「地元に戻る」と言いますよね。

しかし、実際には「地元」と「出身地」は全く同じ意味ではないでしょう。

たとえば、「地元住民」と言ったときには、その場所で生まれ育ったかどうかよりも、今住んでいるかの方が重要です。

これらをまとめると、「出身地=地元」でも構わないし、現在住んでいる場所が出身地と異なっていても、長く住んで愛着があれば「地元」と呼べるということになります

「故郷」をもっと詳しく

「故郷」というと、「うさぎ追いしあの山」と歌詞にあるように、「懐かしいもの」というイメージがあるでしょう。

「故郷」は出身地とほぼ同じ意味で使って構いません。故郷は、生まれ育った場所を指します。

 

移住先に強い愛着を持った人が、その場所を「第二の故郷」と呼ぶこともあります。この場合、移住先が「(第一の)故郷」になったわけではありません。「故郷」はあくまでも「生まれ育った場所」です。

長く住んだかどうかに関わらず、幼少期や子ども時代に最も愛着を持って過ごしていた場所や、人格形成に大きな影響を与えた場所を「故郷」と呼べるでしょう

まとめ

以上、この記事では、「出身地」「地元」「出身地」の違いについて解説しました。

  • 出身地:生まれ育った場所(特に最も長く過ごした場所)
  • 地元:生まれ育った場所や愛着のある場所
  • 故郷:生まれ育ち、愛着のある場所
引っ越しをしたことがある人も、これで自己紹介で迷うことはなくなるでしょう。