流星群やオーロラなど、天体に関する現象には非常に美しいものが沢山あります。数十年に一度しか見られないものはよく大々的にニュースになっており、つられて空を見上げる人も多いと思います。
今回はその中でも「皆既日食(かいきにっしょく)」と「金環日食(きんかんにっしょく)」について、仕組みと違いを説明していきます。
このページの目次
結論:「皆既日食」は太陽が完全に隠れ、「金環日食」は太陽が隠れきらない
この違いは、月と地球の距離の差が原因で起きるものです。
そもそも日食って?
日食とは、月が太陽を隠す現象のことです。
月は常に地球の周りを回っており、夜だけでなく昼間でも空に月の姿を見ることができます。普段は太陽と月は離れていますが、ごく稀にその位置が重なることがあります。
太陽・月・地球という順番で直線に並ぶことで、太陽の姿が地球から見えなくなります。これが日食です。
太陽が一部分のみ隠れる場合は「部分日食」と呼びます。
地球全体で見ても、日食は1年に2~5回しか起こらない稀な現象であり、日本で見られるのは非常に珍しいことなのです。
ちなみに月食は太陽・地球・月の順番で一直線に並ぶため、月に光が当たらず見えなくなるという現象です。
日食は不吉?
昔は、日食は不吉なものとして考えられていました。
日本は古くから天照大御神(あまてらすおおみかみ)という太陽の神様を広く祀(まつ)ってきたことから、日食はその神様の力が失われることを意味するものだと考えられたようです。
天の岩戸の神話は、須佐之男命(スサノオノミコト)の横暴ぶりに耐えかねた天照大御神が天の岩戸の中にこもってしまい、世界が暗闇になり魔物などが増えたとされる話です。これはまさに日食を表していますね。
「皆既日食」について詳しく
皆既日食とは、月によって太陽が完全に隠される現象のことです。
月は楕円の軌道で地球の周りを回っているため、月の位置によって地球から見た月の大きさ(見かけの大きさ)は変わります。月の見かけの大きさが大きいとき、月が太陽をすっぽりと隠し皆既日食が起こります。
観測地点が少しでもずれると、皆既日食ではなく部分日食になってしまうため、観測できる場所が非常に少ない珍しい現象です。
皆既日食が起こっている時は、以下のような現象が起こります。
- コロナ(※1)、プロミネンス(※2)の観測ができるようになる
- 数分間空が暗くなる
- 気温の低下
- ダイヤモンドリング(※3)が観測できる
- コロナ(※1):太陽の周りのガス層。100 万度と非常に高温。
- プロミネンス(※2):太陽の表層部分が部分的に磁気によってコロナ中に突出したもの。
- ダイヤモンドリング(※3):皆既日食の直前・直後に月の端から太陽の光が漏れて輝く現象。
「金環日食」について詳しく
金環日食とは、月が太陽を隠しきれず、月の周りに太陽がリング状にはみ出す現象のことです。
月の見かけの大きさが小さい時に日食が起きると、金環日食になります。
太陽光が地球からも見えているので、コロナやプロミネンス、ダイヤモンドリングは観測できません。
コロナやプロミネンスは、太陽の光が少しでも見えている時はその明るさに負けてしまい、見ることができないのです。ダイヤモンドリングは、太陽が完全に隠れている状態からほんの少しずれた時に大きく輝く現象なので、太陽が隠れ切らない金環日食では見られません。
金環日食は 2012 年に日本で観測されました。記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。
次はいつ見られるの?
非常に珍しい現象である皆既日食と金環日食ですが、次はいつ見ることができるのでしょうか?
- 皆既日食:2035 年 9 月 2 日 北陸~北関東
- 金環日食:2030 年 6 月 1 日 北海道
かなり場所が限定されているうえに両方とも 10 年以上先なので観測は難しいかもしれませんが、チャレンジしたいですね。
まとめ
以上、この記事では「皆既日食」と「金環日食」の違いについて解説しました。
- 皆既日食:太陽が月で完全に隠れる
- 金環日食:太陽の中央が月で隠れリング状に見える
天体ショーは天気にも大きく左右されるため、見られたらかなり幸運ですよね。どちらも非常に美しい現象ですので、機会を逃さずに天体ショーを楽しみましょう!