「しています」と「しております」の違いとは?使い分けまで解説

違いのギモン

「している」を敬語にするとき、「しています」と「しております」のどちらが正解か考えたことはありますか?

どちらも文法としては間違っていませんが、まったく同じニュアンスで使われるわけでもありません。

そこで、この記事では、「しています」と「しております」の違いを解説します。

結論:「しております」は「しています」をさらに丁寧にした言葉

「しております」は、「している」の丁寧語「しています」をさらに丁寧にした言葉です。

「しています」をもっと詳しく


「しています」は「している」の「いる」を丁寧語「います」にした言葉です。

相手に敬意を表す「尊敬語」や、自分がへりくだる「謙譲語」は、目下の相手に使われることがあまりありません。

一方、「しています」のような丁寧語は、相手の立場に関わらず使われます。

このように、幅広い状況で使うことができるというのが、「しています」の特徴です。

「しています」の使い方の例

  1. 「○○さんは、書類の整理をしていますか?」
    しています
  2. 今、私は仕事をしています
  3. 昨日はゲームをしていました
①の例文では、相手の質問に対し簡潔に答えるため、「しています」が使われています。この例文のように、相手が自分に対して敬語で話しかけてきた場合、目下であっても相手に合わせて丁寧語で返すことがあります。

②の例文では、その時点での状況を説明するのに「しています」が使われています。一方、③の例文では、過去の時点での状況を説明するのに「しています」が使われています。

状況を説明するという機会はフォーマルな場に限りません。②と③の例文では相手が明確ではありませんが、相手が「先生」「先輩」といった目上であっても、「友達」「子ども」といった同等・目下の存在であっても成立します。

「しております」をもっと詳しく


「しております」は、「している」の「いる」の謙譲語「おる」に、さらに丁寧語「ます」を加えた言葉です。

「しております」は、「しています」をさらに丁寧にした表現です。

「おる」の解釈

「おる」は謙譲語ですが、自らの行為をへりくだるという役割はあまりありません。

2007年に文化庁が示した、『敬語の指針』によると、謙譲語は以下の二つに分類されます。

  1. 謙譲語Ⅰ:自分側から相手側又は第三者に向かう行為・ものごとなどについて、その向かう先の人物を立てて述べるもの
  2. 謙譲語Ⅱ:自分側の行為・ものごとなどを、話や文章の相手に対して丁重に述べるもの
①の謙譲語Ⅰは、自分の行為をへりくだらせることで、相手に敬意を表す言葉です。いわゆる「謙譲語」はこちらの意味で使われることが多いです。

②の謙譲語Ⅱは、行為と話し相手が切り離されている場合に使われる言葉です。切り離されているため、行為をへりくだるのではなく、記述を丁寧にするという性質になります。このため、謙譲語の中でも、②は特に「丁重語」と呼ばれて区別される場合があります。

「おる」は②の謙譲語Ⅱに該当します。謙譲語に分類はされるものの、言葉を丁寧にする以上の役割はありません。

「しております」の使い方の例

  1. 「君は今、何をしているのかい?」
    「書類の整理をしております
  2. ただ今、留守にしております。ご用の方は、発信音の後にお名前とご用件をお伝えください。
  3. 昨日のその時間は外出しておりました

①の例文では、自分よりも目上の相手が話しかけてきた場合の返事です。「しております」の代わりに「しています」を使うのは間違いではありませんが、特に目上の相手にはより丁寧な「しております」を使うのが一般的です。

②の例文は、留守番電話に設定している応答メッセージの一例です。この例文のように、相手が目上か目下かわからないような場合にも、「しております」とより丁寧な表現が使われます。

③の例文では、ビジネスの場や目上の相手に対しお詫びをする場面で使われる表現です。電話がかかってきたのに応答できなかったときや、相手が自分のもとを訪ねてきたのに不在であったときなどに使われます。

まとめ

以上、この記事では、「しています」と「しております」の違いについて解説しました。

  • しています:「している」を丁寧にした表現
  • しております:「しています」をさらに丁寧にした表現
普段無意識に使い分けている「しています」と「しております」ですが、実はそれぞれふさわしい場面が決まっています。丁寧になりすぎたり無礼になってしまったりしないよう、それぞれのニュアンスをつかんでおきましょう。