今回ご紹介する言葉は、敬語の「してください」です。
「してください」の意味、使い方、間違った使い方、言い換え表現、英語訳、中国語、韓国語、クッション言葉について分かりやすく解説します。
☆「してください」をざっくり言うと……
読み方 | してください |
---|---|
意味 | 【丁寧語】他人に行動を促す言葉 |
使い方 | 「してください」 「してくださいね」 「してくださいませ」など |
誤用 | 「ご〇〇してください」 「されてください」 「使用してください」 |
言い換え表現 | 「なさってください」 「ご〇〇ください」「お〇〇ください」 「していただければと存じます」など |
英語訳 | “please” |
このページの目次
「してください」とは?
「してください」の意味を詳しく
「してください」は他人に行動を促す、命令形の丁寧語です。
「してください」を構成する要素を分解すると、以下のような成り立ちになります。
- し:動詞「する」の連用形
- て:接続助詞
- ください:相手に何かを要望する意味を示す補助動詞
この成り立ちからも、「してください」が相手に何かを依頼する時の丁寧な言い回しであることがわかります。
ちなみに、接続助詞は前の言葉と後ろの言葉をつなげる接着剤のような役割の言葉です。
また、補助動詞とは、付属的な意味を添えるために用いられる動詞のことです。
「してください」は失礼?
「してください」は丁寧語ではありますが、失礼な言い方だと感じる人もいます。
「してください」が失礼だと受け取られる理由は主に以下のとおりです。
- 尊敬語・謙譲語ではないため
- 言い切りの命令形だから
それぞれの理由について詳しく見ていきましょう。
失礼な理由①:尊敬語・謙譲語ではないため
「してください」は丁寧語であり、より相手を敬った表現である尊敬語や謙譲語ではありません。
そのため、「してください」を使ってしまうと、敬われていないと感じてしまう人もいるのです。
失礼な理由②:言い切りの命令形だから
「してください」は言い切りの命令形です。
言い切りの命令形は敬語として使うにはやや直接的すぎます。
「してくださいますと幸いです」「していただけますでしょうか」など、直接的ではない形を用いると丁寧になります。
「してください」と「して下さい」の違い
「して下さい」は間違った言葉です。
内閣訓令「公用文における漢字使用等について(平成22年)」では、動詞のすぐ後につく動詞(補助動詞)は原則としてひらがなで表記することになっています。
「して下さい」の場合、「下さい」は補助動詞なので、「してください」とひらがなで書かなければなりません。
ちなみに、「ください」と「下さい」であれば、以下のような違いがあります。
- ください:何かを依頼する時に用いる
- 下さい:物質的な何かをもらう時に用いる
「下さい」はたとえば「りんごを下さい」のように使います。
「してください」の使い方
「してください」は以下のような言い回しで使われることが多いです。
- してください
- してくださいね
- してくださいます
- してくださいませ
- してくださいますか
それぞれの使い方について詳しく見ていきましょう。
使い方①:「してください」
「してください」は基本的な用法です。
- 資料を18時までに提出してください。
- 20時までに退社してください。
- 私と結婚してください。
使い方②:「してくださいね」
「してくださいね」は「してください」に念押しの意味を表す「ね」をつけた表現です。
目下の人や子どもなどに優しく教える場面で用いられるので、やや上から目線な言葉です。
同格・目上の人に使ったり、かしこまった場面で使ったりするのは避けるようにしましょう。
- 階段から落ちないように注意してくださいね。
- マニュアルをよく読んでから資料を作成してくださいね。
- おやつは300円までにしてくださいね。
使い方③:「してくださいます」
「してくださいます」は「する」の連用形「して」に尊敬語「くださる」、丁寧語「ます」がついた言葉です。
「してください」とは「ください」の部分の成り立ちが異なるので、表記は似ていますが、意味は異なります。
「してくださいます」は尊敬語なので、「してください」と違って目上の人の行為に対して用いることができます。
- ご連絡してくださいまして、ありがとうございます。
- 彼は追い詰められていた私を助けてくださいました。
- 神は私たちを救ってくださいます。
- 理解してくださいますよう、よろしくお願いします。
使い方④:「してくださいませ」
「してくださいませ」は「してください」に丁寧語の助動詞「ます」の命令形がついた言葉です。
「してくださいませ」にすると、やや柔らかい印象になります。
- ご承知おきくださいませ。
- 10時までに集合してくださいませ。
使い方⑤:「してくださいますか」
「してくださいますか」は「してください」に丁寧語の助動詞「ます」と疑問の意味を表す終助詞の「か」がついた言葉です。
あくまで丁寧語ではありますが、「してください」をかなり柔らかい表現にした言葉です。
- この資料を印刷してくださいますか。
- もしよろしければ、私と結婚してくださいますか。
「してください」の間違った使い方
「してください」には以下のような間違った使い方もあります。
- ご〇〇してください
- されてください
- 使用してください
それぞれの誤用について詳しく見ていきましょう。
誤用①:「ご〇〇してください」
「ご〇〇してください」は間違った表現なので注意しましょう。
「ご〇〇する」という表現は、自分の行為をへりくだる謙譲語で用いられます。
「ご〇〇してください」の場合、〇〇には相手の行為を表す言葉が入るため、謙譲語は使えません。
尊敬語の表現である「ご〇〇ください」を使うのが正しい用法です。
誤用②:「されてください」
「されてください」は不自然な表現なので注意しましょう。
「されて」は「する」の尊敬語であり、「されてください」は文法的に間違っているわけではありません。
しかし、文化庁による国語に関する世論調査(平成11年)では約7割の人が「されてください」は気になると回答しています。
これはおそらく、「されて」が使役の動詞のように見えてしまうからだと考えられます。
たとえば「利用されてください」という表現の場合、何かに利用されることを依頼されているように感じられます。
誤用③:「使用してください」
「使用してください」は話し言葉として用いる場合、やや不自然な表現です。
「使用」という言葉が話し言葉としてあまり使われない言葉だからです。
「お使いください」などの形にしたほうが、話し言葉としては自然でしょう。
ちなみに、書き言葉として使うのであれば、「使用してください」は特に違和感のない言葉です。
「してください」の敬語の言い換え表現
「してください」を敬語で言い換えたい時には、以下のような言葉を使うことができます。
- 「なさってください」
- 「ご〇〇ください」「お〇〇ください」
- 「していただければと存じます」
- 「していただきたく存じます」
- 「していただければ幸いです」
- 「していただきますよう」
- 「お願いいたします」「お願い申し上げます」
- 「していただくことは可能でしょうか」
それぞれの敬語の意味について詳しく見ていきましょう。
「なさってください」
「なさってください」は「してください」の「して」を尊敬語にした言葉です。
相手に行動に敬意を払う尊敬語なので、目上の人にも用いることができます。
- 期日まで時間がありますので、ゆっくりご検討なさってください。
- この辺りは事故が多いので、ご注意なさってください。
「ご〇〇ください」「お〇〇ください」
「ご〇〇ください」「お〇〇ください」は相手への依頼の意味を表す尊敬語です。
「ご〇〇ください」は〇〇に音読みの漢字、「お〇〇ください」は〇〇に訓読みの漢字もしくはひらがなが入る時に用いられます。
- 落石にご注意ください。
- 先日お配りした資料をご覧ください。
- 入り口までお見送りくださり、ありがとうございます。
- 「私は元気です」とお伝えください。
「していただければと存じます」
「していただければと存じます」は相手に依頼する時に用いることができる敬語です。
「いただければ」「存じます」はそれぞれ以下のような成り立ちになっています。
- いただければ = いただく(「もらう」の謙譲語) + れば(仮定の意味を表す)
- 存じます = 存じる(「思う」の謙譲語) + ます(丁寧語)
同じような意味で、「していただきたく存じます」というフレーズもあります。
- 何か不明点がございましたら、ご連絡いただければと存じます。
- 少しでも気になる点がございましたら、ご意見いただければと存じます。
- 決算資料についてご承認いただきたく存じます。
「していただきたく存じます」
「していただきたく存じます」は相手に依頼する気持ちを丁寧に表した表現です。
- 関係者用のチケットを用意していただきたく存じます。
- 先方にお話を通していただきたく存じます。
「していただければ幸いです」
「していただければ幸いです」は相手に丁寧に依頼する時に使えるフレーズです。
相手に依頼する時に用いられるフレーズとしてはもっとも丁寧な部類に入ります。
- 弊社のプロジェクトにお力添えいただければ幸いです。
- 弊社の事情をご理解いただければ幸いです。
「していただきますよう」
「していただきますよう」「頂く」という謙譲語を用いたフレーズです。
- 道路工事にご理解いただきますよう、よろしくお願いします。
- 何かご不明点がございましたら、ご連絡いただきますようよろしくお願いします。
「お願いいたします」「お願い申し上げます」
「お願いいたします」「お願い申し上げます」は「お願いを言わせていただきます」を丁寧にした表現です。
「お願いいたします」と「お願い申し上げます」の間に大きなニュアンスの差はありません。
- キャンセルの連絡が3日前までにお願いいたします。
- 当日は現地集合でお願いいたします。
- 有給休暇の承認をお願い申し上げます。
「していただくことは可能でしょうか」など
「していただくことは可能でしょうか」は可能性を聞くことで間接的に相手に依頼する丁寧な表現です。
ほかにも、可能性を聞くことで依頼する表現には以下のようなものがあります。
- していただけますでしょうか
- していただけないでしょうか
- 弊社のオフィスにお越しいただくことは可能でしょうか。
- ミーティングは3日に延期していただけないでしょうか。
- こちらの欄にサインをしていただけますでしょうか。
「してください」の英語訳
「してください」を英語訳にすると、以下のような表現になります。
- please
ちなみに、くだけた場、ネット上では “please” を “plz” と略して使う場合があります。
- Please help us!
- Give me your item plz.
「してください」の中国語
「してください」は中国語にすると以下のような表現になります。
- 请(qǐng)
「请」は「請」がもとになってできた言葉で、英語と同じように、動詞の前に付けて用います。
「してください」の韓国語
「してください」を韓国語にすると以下のような表現になります。
- 아 주세요
- 어 주세요
「してください」と組み合わせるのに便利なクッション言葉
「してください」と組み合わせて丁寧な表現を作るのに便利なクッション言葉は以下のとおりです。
- 「恐れ入りますが」「恐縮ですが」
- 「お忙しいところ」「ご多忙なところ」など
- 「お手数ですが」
- 「お力添え」
- 「お取り計らい」
それぞれのクッション言葉について詳しく見ていきましょう。
クッション言葉①:「恐れ入りますが」「恐縮ですが」
「恐れ入りますが」「恐縮ですが」は「申し訳ない」という気持ちを表せるクッション言葉です。
前に「誠に」「大変」などの強調表現をつけると、より申し訳ない気持ちを強調することができます。
- 恐れ入りますが、日時を変更していただけますと幸いです。
- 誠に恐縮ですが、内定を辞退させていただきます。
クッション言葉②:「お忙しいところ」「ご多忙なところ」など
「お忙しいところ」「ご多忙なところ」は相手を気遣う気持ちを表せるクッション言葉です。
他にも以下のような言い回しで用いられます。
- ご多忙の折
- お忙しい中
- ご多用のところ
- お時間がない中
実際に相手が忙しそうでなくても用いることができます。
- お忙しいところ恐縮ですが、ただ今お時間いただけますでしょうか。
- ご多忙なところ申し訳ありませんが、資料をお送りくださいますと幸いです。
クッション言葉③:「お手数ですが」
「お手数ですが」相手に労力がかかることを気遣うクッション言葉です。
他にも以下のような表現があります。
- お手数おかけいたしますが
- お手数ではございますが
- お手数をおかけし申し訳ありませんが
- お手間をおかけしますが
ちなみに、この意味をさらに強調したい時には、「大変」などのフレーズをつけましょう。
- お手数ですが、アンケートのご記入をお願い申し上げます。
- 大変お手数ではございますが、履歴書の提出をお願いします。
クッション言葉④:「お力添え」
「お力添え」は相手からの助力を丁寧に表現した言葉です。
- 私たちのプロジェクトにお力添えいただければ幸いです。
- お力添えくださると幸いです。
クッション言葉⑤:「お取り計らい」
「お取り計らい」は相手の「ものごとがうまく運ぶように考えて行動すること」を丁寧に表現した言葉です。
- お取り計らい頂けると幸いです。
「してください」のまとめ
以上、この記事では敬語「してください」について解説しました。
読み方 | してください |
---|---|
意味 | 【丁寧語】他人に行動を促す言葉 |
使い方 | 「してください」 「してくださいね」 「してくださいませ」など |
誤用 | 「ご〇〇してください」 「されてください」 「使用してください」 |
言い換え表現 | 「なさってください」 「ご〇〇ください」「お〇〇ください」 「していただければと存じます」など |
英語訳 | “please” |
「してください」は使用方法に注意が必要な言葉です。
用いる場面には気をつけるようにしましょう。