「めまい」や「貧血(ひんけつ)」、「立ちくらみ」になると、立っているのが辛くなりますね。
似ているように感じられる三者ですが、どのような違いがあるのでしょうか。そこで、この記事では、「めまい」「貧血」「立ちくらみ」の相違点について詳しく解説します。
結論:原因と症状がそれぞれ異なる
- めまい:平衡感覚の異常が原因。目が回ったり、ふらふらしたりする。
- 貧血:酸素が体に行き渡らないことが原因。倦怠感や頭痛など様々な不調が起きる。
- 立ちくらみ:血が頭の方まで届かないことが原因。気を失いそうになる。
「めまい」について解説
「めまい」とは、平衡感覚に異常が出て、突然バランスを保てなくなる状態のことです。
「めまい」には、耳の不調によって生じるものと、脳の不調によって生じるものがあります。以下、詳しく解説します。
耳の不調による「めまい」
耳の中には、三半規管(さんはんきかん)・耳石器(じせきき)・前庭神経(ぜんていしんけい)といった部分があります。この3部分はすべて、体の平衡感覚を保つはたらきをもっているため、これらの箇所に異常が現れると、バランス感覚を失って「めまい」になります。
なお、耳の不調が原因で生じる「めまい」は、 “回転性” のものです。つまり、頭がグルグルと回るような感覚になるのです。
前庭神経炎に伴う「めまい」
上記で述べたように、前庭神経は体のバランス感覚を保つものですから、この神経に炎症が起きると「めまい」が引き起こされます。
前庭神経炎は、風邪をひいて1~2週間経ったときに生じやすいものです。
前庭神経炎による「めまい」は、他の要因で起きる「めまい」よりも症状が重いという特徴があります。完全に「めまい」がおさまるまで、数週間かかってしまうのです。
メニエール病に伴う「めまい」
メニエール病とは、内耳(ないじ)のリンパに異常が生じる病気です。40歳以上の人がかかりやすいという特徴があります。
メニエール病では、耳の閉そく感や耳鳴りのほか、数分~数時間の「めまい」も起こります。
突発性難聴に伴う「めまい」
突発性難聴は、聴神経の調子が悪くなって耳が聞こえにくくなる疾患のことです。突発性難聴は、「めまい」を伴う場合があるのです。
良性発作性頭位めまい症の「めまい」
良性発作性頭位めまい症とは、頭を動かしたときだけ「めまい」を感じるというものです。20秒程度でおさまります。
内耳の障害や、加齢による神経の不調、生活習慣の乱れなどが原因となって引き起こされます。
聴神経腫瘍による「めまい」
聴神経腫瘍は、名前の通り、聴神経にできる腫瘍のことです。この腫瘍が神経の妨げになって、「めまい」につながります。
聴神経腫瘍は良性の腫瘍であるものの、大きくなると手術で除去しなければなりません。他の病気に繋がる可能性があるからです。
薬による「めまい」
抗生物質を服用した後遺症となって「めまい」が起きる場合があります。
騒音による「めまい」
ヘッドホンで大きな音をくりかえし聞くと、耳の調子が悪くなって「めまい」が起きます。
脳の不調による「めまい」
脳の不調が原因となって起きる「めまい」は、 “動揺性” のものです。つまり、体がふらふらする感覚になるのです。
ひとくちに “脳の不調” といっても、様々な要因があります。以下、詳しく解説します。
脳卒中に伴う「めまい」
脳卒中になると、平衡感覚のどこかに異常がでます。これが原因となって「めまい」が起きるのです。
正常な平衡感覚を取り戻すまでには、20分~30分ほどかかります。2時間~3時間かかってようやくおさまる場合もあります。
てんかんに伴う「めまい」
“てんかん” とは、脳の異常によって一時的に意識を失う症状のことです。
てんかんの患者は、耳鳴りや体の痙攣(けいれん)とともに、15秒ほどの「めまい」を感じることがあります。
椎骨動脈・脳底動脈の異常による「めまい」
椎骨(ついこつ)動脈と脳底(のうてい)動脈は、脳に血を送る役割をもちます。
つまり、これらの動脈の調子が悪いと、脳に血が行き届かなくなります。これが原因となって「めまい」が起きます。
椎骨動脈と脳底動脈は、首のあたりを通っています。このため、後ろを振り向く・天井を見上げる・床を見るなど、首を大きな角度に動かす行為を急にやってしまうと、椎骨動脈や脳底動脈に異常が起きて「めまい」になることがあるのです。
飲酒による「めまい」
飲酒の量が多くなると、酔いのせいで脳がうまくはたらかず、平衡感覚を保てなくなって「めまい」になることもあります。
脱水による「めまい」
たくさんの汗をかき、体の水分が減ると、脱水症状に陥ります。すると、血液の粘り気が増してしまい、血の流れが滞ります。
血が脳に届かなくなると体のバランスが失われ、「めまい」が起きるのです。
「貧血」について解説
「貧血(ひんけつ)」は、「血が足りていない」という意味をもつ言葉です。具体的には、血の中の “ヘモグロビン” が不足することによって起きる症状を「貧血」といいます。
“ヘモグロビン” とは、体中に酸素を運ぶ要素のことです。このため、 “ヘモグロビン” が足りないと、十分な量の酸素が体全体に行き届かず、体調不良になるのです。
ヘモグロビンの不足には様々な要因が関わっています。また、それぞれの要因によって、症状の内容も異なります。
以下、詳しく解説します。
貧血の症状の種類
鉄欠乏性貧血
鉄欠乏性(てつけつぼうせい)貧血は、鉄分が不足することが原因で起きる「貧血」です。
鉄分は、ヘモグロビンを作る栄養素です。つまり、十分な量の鉄分が体内になければ、ヘモグロビンも減り、貧血になってしまうのです。
特に女性は、鉄欠乏性貧血になりやすいといえます。なぜなら、月経による失血で鉄分を失いやすいからです。
鉄欠乏性貧血では、以下のような症状が現れます。
- 倦怠感
- 頭痛
- 唇や爪が青白くなる
- 爪が反り返る
また、鉄欠乏性貧血では、上記の不調のほか、すでに解説した「めまい」を感じることもあります。
巨赤芽球性貧血
巨赤芽球性(きょせきがきゅうせい)貧血は、ビタミンB2と葉酸が不足することで生じる「貧血」です。
ビタミンB2と葉酸は、正常な血液を作る栄養素です。ですから、これらが欠けると、血液中のヘモグロビンも正常に作られず、貧血になってしまうのです。
巨赤芽球性貧血で現れる症状は、以下の通りです。
- 舌や足のしびれ
- 知覚麻痺
- 下痢
- 食欲不振
再生不良性貧血
再生不良性貧血は、造血幹細胞(ぞうかんさいぼう)の調子が悪くなることで起こる「貧血」です。
造血幹細胞は、赤血球、白血球、血小板といった血液の成分を作る細胞です。つまり、造血幹細胞が不調になると、これらの血液成分も正常に作られなくなるのです。
赤血球は、酸素を体内に運ぶヘモグロビンを含んでいますから、赤血球がうまく作られない場合、ヘモグロビンも減って、貧血につながります。
また、白血球や血小板がうまく作られなくなることも、体にダメージを与えます。なぜなら、白血球は体の抵抗力を保つ役割を、血小板は出血を固める役割をもつからです。
再生不良性貧血で現れる症状には、下記のようなものがあります。
- 顔面の蒼白
- 息切れ
- 動悸
- 歯茎の出血
- 鼻血
なお、再生不良性貧血は「めまい」を伴う場合もあります。
「立ちくらみ」について解説
「立ちくらみ」とは、低い位置から起き上がったときに目の前が白くなって、フラッとしてしまう状態のことです。
寝転んだりしゃがんだりしているとき、重力によって、血液は体の下部に溜まっています。
このような体勢から起き上がったり立ち上がったりすると、心臓は、足の方に溜まっていた血液を頭の方にも届けようとします。しかし、低い姿勢から高い姿勢に変わるときの動きが急である場合、心臓の指令が間に合わず、体の下部で滞っていた血液が頭の方まで上がるまでに時間がかかってしまうのです。
頭の方まで血が行き届いていないと、気を失いそうになります。このような仕組みで「立ちくらみ」が生じるのです。
「立ちくらみ」の症状の種類
起立性低血圧
身体の成長やストレスによって、自律神経が乱れることが原因となって生じる「立ちくらみ」です。しかし、30秒も経たないうちにおさまります。
起立性調節障害
「立ちくらみ」になる原因は “起立性低血圧” と同じく、自律神経の乱れです。しかし、 “起立性調節障害” は、 “起立性低血圧” と異なる点が2つあります。
1つ目は、「立ちくらみ」の時間が長いということです。横になってしばらく安静を保ってはじめて、症状がおさまるのです。
2つ目は、「立ちくらみ」以外の不調も現れるということです。倦怠感・頭痛・食欲不振・動悸・イライラ・集中力不足などが挙げられます。
また、 “起立性調節障害” は、すでに解説した「めまい」を伴うこともあります。
熱中症による「立ちくらみ」
熱中症の症状の一部として「立ちくらみ」が起きることもあります。
気温が上昇すると、体温も上がります。このとき、体内の血の流れが鈍くなってしまいます。
これが原因で、頭の方まで血が回らなくなると、「立ちくらみ」が生じるのです。
「めまい」「貧血」「立ちくらみ」の対処法・予防法
ここまで、「めまい」「貧血」「立ちくらみ」のそれぞれの特徴を解説しました。
三者とも、症状の原因や内容が異なることがわかりましたね。しかし、症状が起きた際の対処法や、症状を予防するための方法は、共通しているのです。
対処法
「めまい」「貧血」「立ちくらみ」はすべて、立っているのが辛くなる症状ですね。つまり、転んだり倒れたりして怪我をする危険性があるのです。
ですから、これらの症状が現れたら、ゆっくりと座りましょう。または、周りにあるものをつかんで転倒を防止しましょう。
安全な姿勢を保つことができたら、症状がおさまるまで安静にしましょう。
特に「立ちくらみ」は、血が頭の方まで回らないことで生じるものであるため、足と頭の高低差がないように寝転んだり座ったりすることで、症状をおさめることができます。
このように、「めまい」「貧血」「立ちくらみ」は基本的に、安静すれば短時間で治るものといえます。
しかし、「めまい」「貧血」「立ちくらみ」が頻繫に生じる場合は、病院に行って診察を受けるのが望ましいでしょう。なぜなら、何かの病気が関係している可能性があるからです。
また、すでに解説したように、「立ちくらみ」のうち、脳の不調が原因で生じるものは別の病気が伴っているものが多いため、通院による治療が必要ですね。
予防法
基本的に、日ごろから以下の3つのポイントを心がけていれば、「めまい」「貧血」「立ちくらみ」を未然に防ぐことができます。
①バランスの良い食事を摂る
「めまい」を防ぐためには、過度な飲酒をしないようにすることが大切です。なぜなら、酔いが進むと体の平衡感覚に異常が出て、「めまい」につながるからです。
「貧血」を防ぐためには、鉄分やタンパク質を含むものを食べるようにしましょう。また、過度なダイエットで「貧血」を起こすこともありますから、少なすぎる食事も禁物です。
小松菜やほうれん草は鉄分を含んでいますが、体へ吸収されるのはわずか1~6% ほどです。
ですから、一度により多くの鉄分を摂りたいときには、レバー、カツオ、イワシ、アサリを食べるのがおすすめです。なぜなら、これらの食品は、鉄分の吸収率が10~20% もあるからです。
タンパク質は、肉や乳製品、大豆から摂ることができますね。
「立ちくらみ」を防ぐ特定の食品はありませんが、リズムを保つことが重要です。なぜなら、食事のタイミングが不規則である場合には自律神経が乱れ、「立ちくらみ」につながるからです。
ですから、朝食・昼食・夕食をとる時間を決めて、規則正しい食生活を送りましょう。
このように、バランスが良く、必要な栄養が入っている食事を摂れば、おのずと「めまい」「貧血」「立ちくらみ」を防ぐことができるのです。
②適度な運動をする
「めまい」「貧血」「立ちくらみ」は、細かい原因は異なるものの、血の流れが滞ったり、血液は不足したりすることが影響して発生しますね。
そこで、運動をすることが三者を防ぐための良い方法といえます。
なぜなら、運動をすれば体の血の巡りが良くなるからです。また、血液の量も増えるからです。
特に、ふくらはぎを鍛えるのが効果的といえます。
ふくらはぎの調子が良いと、下半身に溜まりがちな血液が押し上げられ、体のすみずみにまで血が行き届くのです。血液の量を増やす効果もあります。
ふくらはぎを鍛える方法には、ウオーキング、水泳、水中歩行などがあります。
③ストレスをためない
神経の不調も「めまい」「貧血」「立ちくらみ」が起きる原因の1つです。このため、食事や運動だけでなく、生活全体を規則正しいものにして、ストレスをためないようにする必要があります。
特に、充分な睡眠は神経を落ち着かせ、ストレスを防止します。
まとめ
以上、この記事では、「めまい」「貧血」「立ちくらみ」の違いについて解説しました。あらためて、三者の相違点をおさらいしましょう。
- めまい:平衡感覚の異常が原因。目が回ったり、ふらふらしたりする。
- 貧血:酸素が体に行き渡らないことが原因。倦怠感や頭痛など様々な不調が起きる。
- 立ちくらみ:血が頭の方まで行き届かないことが原因。気を失いそうになる。
対処法・予防法もおさえて、健康な生活を目指しましょう。