ケイパビリティとは「能力、何かを実行する力」という意味です。
ビジネスで使う単語ですが、〇〇ケイパビリティのように関連語も多く、理解するのが難しいですよね。
そこで今回はケイパビリティの意味や使い方を丁寧にわかりやすく解説します。
このページの目次
「ケイパビリティ」の意味
能力、何かを実行する力
例:会社のケイパビリティをチェックする。
ケイパビリティ(ケイパビリティー)とは、「能力、何かを実行する力」です。
日本語に変換すると「能力」になりますが、ビジネスや会計で使用する場合は、単純な能力ではなく、ライバル企業よりも組織として秀でた部分を指します。
「他者と比較して秀でている能力」とも解釈できます。
たとえば、あるコンビニの新商品を作ろうと思えば、どういった商品を作るか企画した上で、良質な製品を製造しなければなりません。
つまり、製造技術など何かひとつだけの能力を指すのではなく、組織としての全体的の能力を指します。
また、福祉分野では、ケイパビリティは「自らが幸福を実現する能力」という意味です。
「ケイパビリティ」の効果
ケイパビリティが向上すると以下のようなことが起こります。
- ビジネスの速度が加速する
- ビジネスの効率が良くなる
- 製品やサービスの品質が向上する
なぜ、ケイパビリティが重要視されているのかという答えにもつながりますが、ケイパビリティが向上すると、組織としての能力も上がります。
つまり、ビジネスの速度や効率が改善することで、環境の変化や競合にも負けないようになります。
逆にケイパビリティが低ければこれらの効果を得ることは不可能なので、すぐに会社が倒産してしまう可能性もあります。
「ケイパビリティ」の事例
ケイパビリティを発揮している事例として、具体的な企業は以下のようなものがあります。
- Apple
デザインから販売戦略まで独自の戦略がある - ホンダ
エンジン技術やディーラーをマネジメントする能力に長けている
Appleは商品を開発する段階で独自性を打ち出す一方で、販売の仕方などもこだわっており総合的なケイパビリティが高いです。
また、ホンダは高いエンジン技術を持つ一方で、販売に携わるディーラーの研修などを丁寧に行うことにより、総合的な販売力を高めています。
「ケイパビリティ」の使い方
ケイパビリティは主にビジネスで使用します。
Twitterでは、コンサルティング業務の業務遂行能力について言及する時に使用しています。
新規事業系のコンサルは圧倒的にケイパビリティがあるならなぜ自分でやらないのかという高次元の矛盾
— Yoshi-maru (@yoshi_beat1919) December 23, 2021
実際の例文には以下のようなものがあります。
- 会社のケイパビリティを考えると、他に割り振るべきだ。
- ケイパビリティを拡張する方法を考える。
- 自分のケイパビリティに限界を感じる。
- マーケティングが個人のケイパビリティです。
- ケイパビリティの充実が今後の鍵だ。
- 社員全員がしっかりとケイパビリティを強化すべきだ。
- 我が社のケイパビリティを確立してイメージを向上させよう。
- 人材を入れ替えれば企業のケイパビリティも向上する。
- 現状を分析してケイパビリティ強化に努める。
- ケイパビリティアプローチと福祉の関係について考える。
④の例文のように、ケイパビリティが個人に対して用いられるのは、自分が実行できるスキルなどについて言及する時です。
「ケイパビリティ」の語源
ケイパビリティの語源は英語の“capability”です。
“capability”には、以下のような意味があります。
- 能力
- 才能
- 特性
- 性能
- 将来性
- 戦闘能力
一般的には「能力」と訳されますが、実際はそれ以外にも意味があります。
英語では、スマホのデータ容量についても「収容能力」という意味合いで“capability”を使用します。
ビジネスにおける「ケイパビリティ」の語源
ビジネス用語で使うケイパビリティの語源は“capability”ではなく、“organizational capability”(組織の能力)を省略したものです。
経営学や防衛産業でも“organizational capability”を使います。
ちなみに、防衛産業では技術面だけの能力だけではなく、技術を扱う人物の能力を含めた総合的な軍事力を指します。
ビジネスにおける「ケイパビリティ」の由来
ビジネスにおいてケイパビリティという単語が使用され始めるのは、1992年です。
1992年にボストンコンサルティンググループに務める、ジョージ・ストーク、フィリップ・エバンス、ローレンス E.シュルマンが『Competing on Capabilities: The New Rules of Corporate Strategy(ケイパビリティにおける競争:企業戦略の新しいルール)』を発表しました。
この論文で、企業の戦略において個々の技術や販売といった力ではなく、組織の全体的な運用力が企業間の競争において重要な意味を持つと言いました。
「ケイパビリティ」の計測方法
以下のようなステップで、企業がどれだけケイパビリティを持っているのか知ることができます。
- 製造や開発など組織の部門をまず書き並べる
- それぞれの部門ごとに取り組んでいることを書き出す
- それぞれ他社と比べて秀でている部分を書き出す
- 秀でているのはなぜか深掘りして強みを見つける
まず、組織の部門を一覧で書き出してみましょう。
それからたとえば、開発に注目して「今までになかったデザインの商品を開発に勤しんでいる」ことが分かったとします。
そして、他社と比べてデザインが斬新だったとしたら、その理由を探します。
そうすると、「人材であるデザイナーの能力が優れている」などの自社のケイパビリティが分かります。
ちなみに、この他にも販売データなど、インパクトのある業績を残している場合は、業績や実績をそのままケイパビリティとして位置付けることも可能です。
「ケイパビリティ」の高め方
ケイパビリティの高め方には以下のようなものがあります。
- 人材の教育を行い全体的なレベル向上を行う
- リソースの配分を見直して効率化を図る
- 常に環境の変化に合わせて改善する
「ケイパビリティ」の関連語
ケイパビリティの関連語には以下のようなものがあります。
- オペレーション
実行すること - ダイナミック・ケイパビリティ
変化に合わせて行動を変えていく力 - オーディナリー・ケイパビリティ
既存の資本を使って利益を最大化すること - ケイパビリティ・アプローチ
人間の幸福感は選択の自由があることに関わりがあること - ケイパビリティ・ベース競争戦略
ケイパビリティに主眼をおいて企業の競争力を養うこと - ITケイパビリティ
ITを使用できる能力 - ネガティブ・ケイパビリティ
解決が不可能な問題を処理する力
「ダイナミック・ケイパビリティ」とは
ダイナミック・ケイパビリティは、時代や環境の変化に合わせて企業の戦略などを変化させる能力のことです。
ケイパビリティは組織全体の能力ですが、ダイナミック・ケイパビリティでは外部の変化に合わせて組織を柔軟に変化させて新しい可能性を創り出します。
また、ダイナミック・ケイパビリティのコツは、自社が持つリソースや技術を上手く活用して新しい企業の戦略を作り出すことです。
「ケイパビリティ・アプローチ」とは
ケイパビリティアプローチは、インドの経済学者、アマルティア・センが1980年代に唱えました。
当時、ある経済環境において最適な選択や状況を分析する厚生経済学では、富などで経済的な豊かさを測っていました。
しかし、アマルティア・センは、幸福度は富などではなく、個人がどれだけ自由に生き方を選択できるかだと主張します。
たとえば、1億円を持っていても無人島では使えません。
それより貧乏であっても、自分がしたいことを実現可能な方が幸福度が高いというわけです。
「ケイパビリティ・ベース競争戦略」とは
ケイパビリティ・ベース競争戦略とは、企業が競争力に主眼を置いて競争能力を高めようとすることです。
また、ケイパビリティ・ベース競争戦略には以下の4つの原則があります。
- 製品や価格ではなく、ビジネスにおけるプロセスを意識する
- 主要なビジネスプロセスをケイパビリティの高いものにする
- 組織における部門をつなぐインフラを整備する
- 部門を横断するので企業のトップが主導的に行う
一方で、以下のようなメリットとデメリットがあります。
メリット | デメリット |
---|---|
企業の内部なので分析されにくい | 大規模な改革が必要なので時間がかかる |
多くの分野が関わっているので真似されにくい | 一度決めたら方向転換が難しい |
商品の価格など表面的なものではなく企業の内部のことなので、ケイパビリティ・ベース競争戦略は他社から分析や真似されにくいです。
一方で、戦略を実行するのに時間がかかるのと、一度実行したら修正が難しいというデメリットがあります。
「ケイパビリティ」と「コアコンピタンス」の違い
ケイパビリティとコアコンピタンスの違いは以下の通りです。
- ケイパビリティ
企画や製造など部門を横断してプロジェクトを遂行する能力 - コアコンピタンス
他の会社が真似できないような強みや価値
ケイパビリティは、組織内でいくつも別れている部門を横断して、共通の目標であるプロジェクトを遂行する実行能力を指します。
一方で、コアコンピタンスは、他社が真似できないような強みや独自性です。
特に技術面についての能力を指します。
ケイパビリティが優れている会社は、コアコンピタンスが優秀だとも言えます。
また、ケイパビリティを「組織力」と表現する一方で、コアコンピタンスを「技術力」と言い表すこともあります。
「ケイパビリティ」のまとめ
以上、この記事ではケイパビリティについて解説しました。
読み方 | ケイパビリティ |
---|---|
意味 | 能力、何かを実行する力 |
語源 | 英語の“capability” |
計測方法 | 製造や開発など組織の部門をまず書き並べる それぞれの部門ごとに取り組んでいることを書き出す それぞれ他社と比べて秀でている部分を書き出す など |
高め方 | 人材の教育を行い全体的なレベル向上を行う リソースの配分を見直して効率化を図る 常に環境の変化に合わせて改善する など |
関連語 | オペレーション ダイナミック・ケイパビリティ オーディナリー・ケイパビリティ など |
ケイパビリティはビジネスで使用するフレーズです。
少し難しい単語なので、分からないと困る場面もあるでしょう。
ぜひ、この記事を参考にして意味や使い方を覚えましょう。