今回ご紹介する言葉は、熟語の「貴賤(きせん)」です。
言葉の意味・使い方・語源・類義語についてわかりやすく解説します。
☆「貴賤」をざっくり言うと……
読み方 | 貴賤(きせん) |
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意味 | 貴いことと卑しいこと、身分の高い人と低い人 |
語源 | 石田梅岩の「職業に貴賤なし」 |
類義語 | 尊卑、優劣 |
「貴賤」の意味をスッキリ理解!
「貴賤」の意味を詳しく
「貴賤」は「貴いことと卑しいこと」「身分の高い人と低い人」を指します。
「貴い」とは「価値が高い」「身分が高い」という意味です。一方、「卑しい」とは「下品だ」「貧しい」「身分が低い」という意味です。
「貴賤」の「賤」という漢字は「いやしい」と読み、「卑しい」と同じ意味を表す漢字です。常用漢字ではないため、意味の説明では「卑しい」が使われます。
つまり、「貴賤」は反対の意味の漢字が組み合わさった熟語です。物事の価値や身分の高低といった概念を指す言葉です。
以下で「貴賤」を使用した四字熟語の意味を解説します。
「貴賤」を含む四字熟語の意味を詳しく解説
「貴賤」を含む四字熟語の意味をまとめました。
- 貧富貴賤:貧しいものと富めるもの
「貴賤」の「身分の高い人と低い人」とほぼ同じ意味ですが、「貧富」というお金を基準とした意味合いが強められています。 - 老若貴賤:あらゆる人々
老人・子供、身分の高い人・低い人、つまり、すべての人を指しています。 - 貴賤都鄙(とひ):あらゆる人々
「都鄙」とは都会と田舎を意味します。身分の高い人・低い人、都会に住む人・田舎に住む人という意味を重ねて、あらゆる人々を表現しています。 - 貴賤上下:身分や地位の高い人と低い人
「上下」は地位などの高さを指しており、似た意味の熟語を重ねて意味を強調しています。
「貴賤」の使い方
- この小説のストーリーは、現代における貴賤をはっきり浮かび上がらせている。
- 政府が給付する支援金は、貧富貴賤を問わず受け取れるようだ。
- さあさあ寄っておいで、老若貴賤問わず寄っておいで、世界一周した私が武勇伝を面白おかしく語って聞かせましょう。
- 貴賤の別なく接することのできる人間は、きまって身分の高い人々だ。
- このお方を誰だと心得る、貴賤上下をわきまえろ。
上記の例文のように、「貴賤」は身分の問題や貧富の差を問題とする際の使用が多いでしょう。
①の「貴賤」は「貴いことと卑しいこと」を指します。
②は「貧しいものと富めるもの」という意味で「貧富貴賤」が使われています。
③の「老若貴賤」は「あらゆる人々」を意味します。
④は「身分の高い人と低い人」という意味で「貴賤」が使用されています。「貴賤の別なく」で「身分の高い低い関係なく」という意味を表します。
⑤の「貴賤上下」は「身分や地位の高い人と低い人」を強調した表現です。
「貴賤」の語源
江戸時代の思想家である石田梅岩が「職業に貴賤なし」と説いて、「貴賤」が広まりました。
当時は「士農工商」という職業によって身分を階級づける制度があったため、この考え方は新しいものでした。
「貴賤」が広まったのは江戸時代ですが、それ以前の平安時代初期にも「貴賤」という言葉が記されています。
「貴賤」の類義語
「貴賤」には以下のような類義語があります。
- 尊卑(そんぴ):身分などが尊いこと、卑しいこと
「尊」と「貴」はほぼ同じ意味の漢字です。 - 優劣:優れていることと劣っていること
まとめ
以上、この記事では「貴賤」について解説しました。
読み方 | 貴賤(きせん) |
---|---|
意味 | 貴いことと卑しいこと、身分の高い人と低い人 |
語源 | 石田梅岩の「職業に貴賤なし」 |
類義語 | 尊卑、優劣 |
石田梅岩が説いた「職業に貴賤なし」という考え方は、先進的で人権に基づいた考え方であり、現代に大きく影響を与えました。
職業で差別をする風潮はほとんどなくなりましたが、根強く残っている部分もあります。自分が本当に貴賤なく接することができているか考えてみましょう。