ホラー映画や小説などに登場することが多い「ミイラ」と「ゾンビ」。怖いイメージを持っている方もいる思いますが、違いを知っていますか。
この記事では、「ミイラ」と「ゾンビ」の違いについて詳しく解説していきます。
結論:ゾンビは実在しない
「ミイラ」は、長期間原型をとどめている死体のことです。
「ゾンビ」をもっと詳しく
ゾンビは、死体のまま蘇った「人間」で、現実には存在しません。
現在の一般的な設定は、死体に何らかの要因が伴ってゾンビとなり、人を襲ったり人肉を食べて繁殖します。
ゾンビ映画で代表的な『リビングデッドシリーズ』や『ウォーキング・デット』でもそのように描かれていますよね。
ゾンビの元になっている話が、ヴードゥー教のルーツであるヴォドンに出てくる「ンザンビ」で、意味は「呪術で操られた死体」です。
ヴードゥー教は西アフリカのハイチや、アメリカ南部のニューオーリンズなどで信仰されている宗教で、ヴォドンはその中の精霊信仰にあたります。
ヴォドンでは以下の方法でゾンビが生み出されるとされています。
- 司祭(ボコ)が腐る前に死体を墓から掘り出す。
- 死体に魂が戻るまで名前を呼び続ける。
- 起き上がったら両手を縛る。
- 魂を壺のなかに永久に封じ込め、使用人として農園に売り出す。
このような言い伝えがあるため、信者は家族が死んだ際、司祭から守るために数日間遺体を見守るなどの対策を行なっていました。
またミイラは漢字で「木乃伊」と書きます。
「ミイラ」をもっと詳しく
ミイラは、乾燥によって長期間原型をとどめている死体を表します。
死体がミイラとなる理由は、大きく分けて「人為的要因」と「自然的要因」と「宗教的要因」の3つがあります。
1つ目の「人為的要因」によってミイラとなった例は、主に紀元前3000〜3200年頃の古代エジプトのミイラを指します。権力者を埋葬する際に、遺体から腐敗しやすい内臓を取り除いた後、全身を布で幾重にも巻いて保存しました。
映画に出てくる「ミイラ男」が包帯でグルグルに巻かれている理由はここから来ています。
2つ目の「自然的要因」によってミイラとなったミイラの多くは、砂漠に埋まっている状態で発見されました。
砂漠が極度に乾燥していることに加え、死ぬ直前の状態が既に多脱水症状であることも、ミイラとなった要因の1つです。
最後の「宗教的要因」でミイラとなった代表的な例は、「即身仏(そくしんぶつ)」した僧侶です。
即身仏は瞑想状態のままミイラ化した僧侶のことで、宗教における最も過酷な修行の1つです。
目的は思想により様々でしたが、日本に残っている即身仏の多くが、飢饉や疫病で苦しむ人々の苦しみを背負って己の悟りを開くことでした。
ほとんどが腐敗してしまうために成功する確率は極めて低い修行で、生前に徳を積んで善行を積み重ねることが条件とされています。
即身仏の修行
即身仏の修行は、木食修行(もくじきしゅぎょう)と、土中入定(どちゅうにゅうじょう)の二段階に分かれています。
木食修行とは、お経を読んだり瞑想をしながら木の皮や木の実を食べて生活し、腐敗を防ぐために皮下脂肪と体内の水分を減らしていきます。
そして土中入定とは、一般的に以下の流れで行われていました。
- 空気穴の開いた地下の石室に入り、鈴を鳴らしながら経を読んで断食する。
- 地下から鈴の音が聞こえなくなったら、地上の人が息絶えた僧侶を1度掘り起こし、態勢を整えるなどしてもう一度埋める。
- 1000日後に再び掘り起こす。その際ミイラになっていた場合のみ、即身仏の成功。
入定中は、腐敗防止のために漆を飲んでいました。
また日本には現在、17体の即身仏が存在しています。
まとめ
以上、この記事では、「ゾンビ」と「ミイラ」の違いについて解説しました。
- ゾンビ:死体のまま蘇った人間のことで、現実には存在しない
- ミイラ:長期間原型をとどめている死体