「押さえる」と「抑える」の違いとは?意味から使い分けまで解説

違いのギモン

「傷口を『おさえる』」や「感情を『おさえる』」など、日常会話でよく出てくる日本語である「おさえる」。ただ、「おさえる」には「押さえる」と「抑える」の 2種類があります。皆さまは両者の違いをご存知でしょうか。

今回は「押さえる」と「抑える」の違いについて解説します。

結論:基本的な違いは対象が物理的かどうか

「押さえる」には力をある部分に加えてその状態を維持するという物理的なニュアンスがあります。

一方、「抑える」には物理的な意味合いはなく、勢いや外に向かう力を食い止めるという意味があります。

「押さえる」をもっと詳しく


「押さえる」とは、力を加えてある状態を維持するという意味があります。この物理的なニュアンスが第一義です。例えば、「傷口を『おさえる』」は「押さえる」と表記します。

ただ、「押さえる」は物理的な意味以外でも用いられます。それは、自分の支配下に物事を置くというものであり、「お店を押さえる」や「良い物件を押さえる」といった使い方があります。

これは、何かを「押さえる」ことは、対象が何も抵抗できない状態で完全に支配下に置かれることを意味することから、物理的な意味合いを超えて使われるようになったためです。

「押さえる」の使い方の例

  1. 文鎮で半紙を押さえる。
  2. 証拠を押さえる。
  3. 要点を押さえる。

➋に関しては、証拠を完全に自分の支配下に置いていることから「押さえる」を用いています。➌に関しては、要点を確実に認識して自分の物としていることから「押さえる」としています。

「抑える」をもっと詳しく


「抑える」とは、対象の力が高まるのを食い止めてそれ以上大きくならないようにすることです。感情や勢いなどのように、形のないものが対象となることが多いのが特徴です。

例えば、「彼の怒りを『おさえる』」や「暴動を『おさえる』」の場合は「抑える」を用います。

また、「抑える」と言う場合には、「押さえる」と違い、対象を完全に支配下に置けるかどうかはわかりません。なぜなら、「抑える」対象には勢いや感情という方向性を持った力が存在するからです。

「抑える」の使い方の例

  1. 眠気を抑えるためにコーヒーを飲んだ。
  2. 4番バッターを三振に抑えた。
  3. 経費を抑える必要がある。

➋に関しては、自分に勝とうとする勢いのある敵を三振で食い止めたため「抑える」を用いています。➌に関しては、放っといては膨らんでしまう経費に対してそれ以上の上昇を防ぐという意味合いで「抑える」が用いられています。

まとめ

以上、この記事では、「押さえる」と「抑える」の違いについて解説しました。

  • 押さえる:力を加えて状態を維持する。完全に支配下に置く。
  • 抑える:勢いや感情を食い止める。完全に支配下に置けるわけではない。

「押さえる」と「抑える」は同じ読み方をしますが、指し示すニュアンスは異なります。物理的であるかどうか、また完全に支配できるかどうかを基準にして上手に使い分けてくださいね。