みなさんは「柔術」という武道を聞いたことがありますか?
「柔道」の源流となった「柔術」ですが、同じく「柔術」から派生した格闘技として、「ブラジリアン柔術」と「グレイシー柔術」というものがあります。
この記事では、そんな2つの柔術の違いをわかりやすく解説していきます。
結論:「グレイシー柔術」から派生したのが「ブラジリアン柔術」
「ブラジリアン柔術」とは、「グレイシー柔術」の武道的側面を簡略化し、競技化したもの。
「グレイシー柔術」をもっと詳しく
「グレイシー柔術」とはブラジルのグレイシー一族が「柔術」や「柔道」をもとに発展させた、寝技を中心とした格闘技のことです。
「グレイシー柔術」は護身術の側面があり、自分を攻撃してくる人から身を守ることに重きをおいています。
そのため、相手の攻撃をガードしつつ、隙をついて相手を制することが目的となっています。
「グレイシー柔術」のルーツは日本にあり
「グレイシー柔術」のルーツは、実は日本にあります。
時代は江戸時代以前にさかのぼり、当時の武士たちは合戦で相手の武士を倒すために「組討ち」という技術を持っていました。これが江戸時代に入り、武芸となったものが「柔術」です。柔術は力に頼らず相手を制する武道で、打撃はもちろん、関節技や絞め技、投げ技など、さまざまな技を用いました。
明治時代に入り、柔術の投げ技と寝技に焦点を当てて発展させたものが「柔道」です。その後、柔道を普及させるために、柔道家が世界中に派遣されます。その中の一人、前田光世はブラジルを訪れ、カーロス・グレイシーに柔道・柔術を伝授しました。
その後、治安の悪いブラジル社会で生き残るための護身術として、エリオ・グレイシーが柔道・柔術の寝技に焦点を当てて発展させたものが「グレイシー柔術」です。寝技に焦点を当てたのは、エリオが小柄で喘息を患っており、それでも攻撃してくる相手に勝つためだったとされています。
「ブラジリアン柔術」をもっと詳しく
「ブラジリアン柔術」とは、「グレイシー柔術」から武道的な側面を少し削り、競技化させたものです。とはいえ、この2つの柔術は、実はほとんど同じものなのです。
1990年代、UFC(Ultimate Fighting Championship)というアメリカの有名な総合格闘技大会が始まりました。グレイシー柔術家のホイス・グレイシーは、この大会でなんと2大会連続優勝を飾ります。
その結果、アメリカで柔術が大人気になり、多くのグレイシー柔術家がアメリカに渡って道場を開こうとしました。ホイスの兄のホリオン・グレイシーは、柔術の生徒が取られることを恐れ、「グレイシー柔術」を商標登録しました。
そのせいで、ホリオンが認めた者以外はグレイシー柔術の道場を開けず、代わりに「ブラジリアン柔術」という名称で広まっていきました。
グレイシー柔術は、ブラジルの治安の悪さの中で身を守る、護身術的な立ち位置でした。そのため、実践的な技が多かったのです。
しかし、ブラジリアン柔術は、アメリカなどさまざまな国で広まったので、スポーツの側面が強くなっています。
誰でも始められるハードルの低さも相まり、競技人口は増加しています。
まとめ
以上、この記事では、「グレイシー柔術」と「ブレジリアン柔術」の違いについて解説しました。
- グレイシー柔術:寝技を中心とした格闘技で、グレイシー一族に認められた者のみ道場が開ける。
- ブラジリアン柔術:「グレイシー柔術」をスポーツ競技として発展させたもの。
地球の反対側の武道のルーツが日本にあるなんて驚きですよね。
ぜひ、試合もテレビや動画サイトで見てみてくださいね。