今回ご紹介する言葉は、心理学用語の「刻印づけ(こくいんづけ)」です。
言葉の意味、具体例、提唱者、英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「刻印づけ」をざっくり言うと……
読み方 | 刻印づけ(こくいんづけ) |
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意味 | 生物が生まれて間もない期間のみ、報酬や経験がなくても特定の行動をする現象のこと |
提唱者 | オーストリアの動物行動学者であるコンラート・ローレンツ |
英語訳 | imprinting(刻印づけ) |
「刻印づけ」の意味をスッキリ理解!
「刻印づけ」の意味を詳しく
「刻印づけ」とは、生物が生まれて間もない期間のみ、報酬や経験がなくても特定の行動をする現象のことです。
生物が生まれたばかりの期間に特定の行動を取ることがあります。たとえば生まれたばかりのカモの子供は初めて見た生物を親と認識し、後をついて歩きます。
この行動は、なにか報酬があるから行われているわけではありません。
さらに、生まれたばかりなので、親に教えられた行動でもありませんし、それまでの経験によって行われたり、反復運動として行われたりしているわけでもありません。
このような行動が「刻印づけ」です。「刷り込み」や「インプリンティング」と呼ばれることもあります。
通常は、後天的にものを覚える場合は、行動の繰り返しと一定の時間の持続が必要であると考えられていました。
特に知能がさほど発達していない動物では時間や繰り返しがより多く必要になります。
しかし、刻印づけでは、ほんの一瞬で「ある特定の行動をする」という認識が作られるのです。
そしてこの現象は生まれた直後などの、一定の期間でしか起こりません。
「刻印づけ」の具体例
「刻印づけ」でもっとも有名なものは上で挙げたような鳥類の例です。
離巣性(りそうせい)の鳥類が、孵化(ふか)した直後に初めて出会った対象に接近したり後をついて回る現象です。
離巣性とは、鳥のひなが孵化した直後から巣を離れて自立して生活をする生物の形態のことです。
この現象は、実際の親に対してだけではなく、他の種類の鳥や人間に対しても起こります。
「刻印づけ」の提唱者
「刻印づけ」の提唱者は、オーストリアの動物行動学者であるコンラート・ローレンツです。
ただし、最初にこの現象を指摘したのは、イギリスの博物学者であるダグラス・スポルディングです。その後にドイツのオスカル・ハインロートが再発見しました。
さらにその後に、ハインロートの弟子であるローレンツが次のような研究を続け、著作で発表したのです。
この研究の結果、孵化の直後にガチョウを見たハイイロガンの雛(ひな)は、ガチョウの後をついて回るようになりました。
また、次の段階でローレンツは、ハイイロガンの雛を自分自身の目の前で孵化させました。すると雛はローレンツの後をついて回るようになりました。
そして、ガチョウに近づけてもガチョウを追いかけることはなく、ローレンツの後を追い続けました。
この実験により、孵化後に見たものを親だと認識して後を追い続ける「刻印づけ」が発見されました。
この行動は、その後本当の親鳥を見ても変化することがありません。
「刻印づけ」の英語訳
「刻印づけ」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- imprinting
(刻印づけ)
まとめ
以上、この記事では「刻印づけ」について解説しました。
読み方 | 刻印づけ(こくいんづけ) |
---|---|
意味 | 生物が生まれて間もない期間のみ、報酬や経験がなくても特定の行動をする現象のこと |
提唱者 | オーストリアの動物行動学者であるコンラート・ローレンツ |
英語訳 | imprinting(刻印づけ) |
「カモの子供が初めて見たものを親と認識する」という現象は知っていた人も多かったのではないでしょうか。この現象の正式な名前や発見された過程についても知っておけるといいですね。