今回ご紹介する言葉は、心理学用語の「インパクトバイアス」です。
言葉の意味、具体例、提唱者、英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「インパクトバイアス」をざっくり言うと……
読み方 | インパクトバイアス |
---|---|
意味 | 人間が、自分自身の将来の幸福度の強弱を、実際よりも過大評価してしまうこと |
提唱者 | ハーバード大学教授ダン・ギルバード |
英語訳 | impact bias(インパクトバイアス) |
このページの目次
「インパクトバイアス」の意味をスッキリ理解!
「インパクトバイアス」の意味を詳しく
「インパクトバイアス」とは、人間が、将来の自分自身の幸福度の強弱を実際よりも過大評価してしまうことです。
この効果はプラスの面にもマイナスの面にも働きます。
つまり、「良い出来事を想像して考えた幸福の度合い」は実際にそのシチュエーションになったときの幸福度よりも大きく予想されています。
そして反対に、「悪い出来事を想像して考えた不幸の度合い」も、実際にそのシチュエーションになったときの不幸度よりも大きく予想されているのです。
もちろん、「宝くじが当たった」「好きな人と付き合うことができた」などの良い出来事があった瞬間は幸福度合いは高いです。
しかし、これが未来のことになればなるほど、私たちは過大評価をしてしまうのです。
その瞬間の幸福度は想像していた通りに高くても、「宝くじが当たったのだから10年後までずっと幸せだろう」「大好きな人と付き合えたのだから1年後も幸せだろう」と考えた時の幸福度は過大評価になってしまうということです。
「インパクトバイアス」の具体例
1978年にノースウェスタン大学の研究者によって、「インパクトバイアス」に関わる研究が行われています。
この研究によって、「下半身不随になった人」と、「宝くじに当たった人」の幸福度が、その出来事があってから1年以内に同じ程度になってしまうという結果が明らかにされました。
また、レイチェル・フリードマンという女性は、2010年に事故に会い下半身麻痺となりました。
友人たちによって冗談半分でプールに突き落とされ、プールの底に頭を打った彼女は、脊椎(せきつい)を損傷してしまったのです。下半身に慢性の麻痺が残り、歩くこともできなくなってしまいました。
1年後、レイチェル・フリードマンさんは結婚し、その後彼女は、2013年のオンラインのQ&Aセッションで、これらの体験について語りました。
彼女は最初のうちは、下半身麻痺で生きていくことの難しさや辛さについて語りました。
しかし、インタビューの中で彼女は、ポジティブな考えを示すことも多かったのです。
彼女は、「事故によって事態は変わったが、それを完全に悪くなったと言うことはできない」と話したのです。また夫との関係を聞かれると、「私の怪我がもっと悪かった可能性を考えると、私たちは幸せだと思う」と答えました。
彼女は、下半身麻痺になるという人生における重大な事件が起こったにもかかわらず、1年後には人生を悲観するのではなく、ポジティブな話をしていたのです。
「インパクトバイアス」の提唱者
「インパクトバイアス」の提唱者は、ハーバード大学教授のダン・ギルバードです。
ダン・ギルバードは、「人間がトラウマ的な出来事に遭遇した際に、心を守るために心理的免疫システムが働く」と主張しました。
その「心理的免疫システム」とは、「人間が幸福感を自ら想像したり、作り出したりすることができる」という能力です。彼は「人間の感情は、現実世界の出来事に意外と影響されない」と主張したのです。
しかし、人間はその事実を理解しきれていないため、「現実世界の出来事の幸福感への影響」を過大評価してしまうのです。これがインパクトバイアスです。
「インパクトバイアス」の英語訳
「インパクトバイアス」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- impact bias
(インパクトバイアス)
まとめ
以上、この記事では「インパクトバイアス」について解説しました。
読み方 | インパクトバイアス |
---|---|
意味 | 人間が、自分自身の将来の幸福度の強弱を、実際よりも過大評価してしまうこと |
提唱者 | ハーバード大学教授ダン・ギルバード |
英語訳 | impact bias(インパクトバイアス) |
「インパクトバイアス」は、無意識のうちに働く心理現象です。これを理解していれば悪い出来事があったときにも将来を悲観しすぎずに済むかもしれませんね。