今回ご紹介する言葉は、心理学用語の「協調の原理(きょうちょうのげんり)」です。
言葉の意味・具体例・提唱者・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「協調の原理」をざっくり言うと……
読み方 | 協調の原理(きょうちょうのげんり) |
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意味 | 会話を相手に伝達するために人が守っている原理のこと |
提唱者 | ポール・グライス氏 |
英語訳 | The cooperative principle(協調の原理) |
「協調の原理」の意味をスッキリ理解!
「協調の原理」の意味を詳しく
協調の原理とは、従うことによって、協調的な会話が可能になると考えられている原理のことです。
協調の原理は、質の公理・量の公理・関連性の公理・様態の公理という、4つの公理が組み合わさったものとなっています。
質の公理
質の公理とは、正直に、真実だけを述べなければならないというものです。
そのため、嘘をつくことは質の公理を守っていないことになります。また、根拠に欠ける情報について話すことも、質の公理が守られていないということになります。
量の公理
量の公理とは、伝える情報量を適切なものにせよというものです。
必要な情報をすべて与えていない会話は、量の公理が守られていないという会話ことになります。また、必要以上に余分な情報を伝えているのも、量の公理が破られています。
量の公理が意味する「量」とは、会話をしている人同士の関係性によって変化します。
たとえば、初対面の人同士が話す場合には、相手を気遣い、いつもより情報を多く話す傾向にあります。一方、友人と話すときなどは、お互いが当然のように分かっている事柄に関しては、省略して話す傾向があります。
このように、量の公理は会話をする人によって、少しずつ変わります。
関係性の公理
関係性の公理とは、関係ないことを言ってはいけないというものです。
いきなりまったく話の流れに関係ないことを言うのは、関係性の公理に反しています。
様態の公理
様態の公理とは、不明瞭な表現を使ってはいけないというものです。
「様態」とは、物事のあり様を表す言葉です。そのため、望ましい様態であること、つまりわかりやすい会話のあり方を指して、「様態の公理」と呼んでいます。
聞き手によって解釈が分かれる曖昧な表現を使用することは、様態の公理に反します。また、順序立てて離されていない話というものも、様態の公理が守られていないということになります。
「協調の原理」の具体例
ここでは、4つの公理それぞれにおいて、公理が守られていない例を紹介します。
質の公理が守られていない例
B:「明日は11時集合だよ」(Bさんは、本当は何時に集合したらいいかを知らない)
量の公理が守られていない例
B:「明日は10時30分00秒、地球が〇〇回回った時に集合だよ」
関連性の原理が守られていない例
B:「私の好きな食べ物はハンバーグです」
様態の原理が守られていない例
B:「明日の集合時間は10時と11時の間くらいの時間だよ」
「協調の原理」の提唱者
協調の原理は、イギリスの哲学者・言語学者であるポール・グライス氏によって証明されました。
彼は、会話とは基本的に協調的な行為であると仮定し、言葉にこめられた含意についての体系を記述しようとしました。
その際に作られた理論が、協調の原理であるとされています。
「協調の原理」の英語訳
協調の原理を英語に訳すと、次のような表現になります。
- The cooperative principle
(協調の原理)
また、4つの公理にもそれぞれ英語訳があります。
- maxim of quality
(質の公理) - maxim of quantity
(量の公理) - maxim of relevance
(関連性の公理) - maxim of manner
(様態の公理)
含意について
B:「いつもの時間だよ」
しかし、恐らくこの場合には、Bは直接的に答えてはいないものの、Aには意図が伝わっていると考えることが出来ます。
このように、協調の原理に従っていないが、会話の意味的には強調の原理に従っていることになる、言葉に込められた意味のことを、含意と言います。
まとめ
以上、この記事では「協調の原理」について解説しました。
読み方 | 協調の原理(きょうちょうのげんり) |
---|---|
意味 | 会話を相手に伝達するために人が守っている原理のこと |
提唱者 | ポール・グライス氏 |
英語訳 | The cooperative principle(協調の原理) |
協調の原理は、会話を成り立たせている重要な要素の1つです。これによって、相手が理解しやすいような話をすることを心がけていきましょう。