今回ご紹介する言葉は、心理学用語の「目標勾配(もくひょうこうばい)」です。
言葉の意味・具体例・由来・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「目標勾配」をざっくり言うと……
読み方 | 目標勾配(もくひょうこうばい) |
---|---|
意味 | 目標に近づけば近づくほど、やる気が出てくること |
由来 | 喫茶店の例、クラーク・ハル |
英語訳 | goal gradient(目標勾配) |
「目標勾配」の意味をスッキリ理解!
「目標勾配」の意味を詳しく
目標勾配とは、目標の達成が間近になればなるほど、やる気が促進されるというものです。「勾配」は、傾きを意味します。目標が近付くにつれ、モチベーションの向上(勾配)が上がることを目標勾配と言うのです。
目標から遠い時には、達成することの現実味が薄れ、行動するモチベーションの低下につながります。
しかし、目標に近づけば近づくほど、自分が目標に向かって着実に前進しているという実感を得ることが出来ます。その結果、目標を達成するということに価値を強く見出すようになり、モチベーションの向上につながります。
目標勾配によって、目標達成までに厳しいことや辛いことがあったとしても、やる気を出して目標達成に向かっていくことが出来るのです。
「目標勾配」の具体例
目標勾配の効果を見出せる例として、長距離走などでのラストスパートがあげられます。
たとえば、「ゴールが近づくにつれて今までよりスピードが上がり、最後はダッシュのようなスピードでゴールする」というケースがあります。これは、目標が近づいてきたことでやる気が上がり、それまで以上の力を出せたものとして考えることが出来ます。
また、小さな目標を積み重ねて大きな目標を達成する、というのも目標勾配の考え方が使われている例です。
たとえば、前回のテストの点数が 60点だった生徒がいたとしましょう。その時、次回目指す点数を 70点にするか 100点にするかは、その生徒のやる気に関わってきます。
70点の場合は、「あと10点なら頑張れそう」と言う気持ちになりやすいでしょう。一方、目標を 100点に設定すると、40点上げなければいけないことや、そもそも1問も間違えられないことからプレッシャーを感じ、目標達成へのハードルは極めて高く思えるでしょう。
つまり、目標の程度を上手く設定することで、目標勾配による効果を活かすことができるのです。。
「目標勾配」の由来
目標勾配については、様々な実験によって効果が明らかにされています。
ある喫茶店では、「コーヒーを10杯飲むと、スタンプがひとつ押され、次の1杯が無料になる」というカードを渡していました。そして、カードを渡された人たちのコーヒーを飲む頻度について調査したところ、10杯目が近づくにつれて急激に頻度が上がるということが発見されました。
これは、コーヒーを10杯飲むという目標を達成するために、最後の数杯となってゴールが見えてくるとやる気が沸き起こるということを示しています。そのため、目標勾配と深い関係性があります。
また、この際渡しているカードにも2種類あり、以下のように分けられていました。
- A:コーヒーを10杯飲めば、1杯無料になるスタンプカード
- B:コーヒーを12杯飲めば、1杯無料になるスタンプカード(ただし、初めからスタンプが2個押されている)
Bのカードの方では、事前にスタンプが押されてあることから、被験者に「自分が目標達成に向けてすでに前進している感覚」を与えることが出来ます。その結果、Aに比べてよりやる気が促進されたと考えることが出来ます。
また、喫茶店の例以外にも、クラーク・ハル氏がネズミを使った実験の中で目標勾配の効果について述べています。
彼は、ネズミを迷路の中に入れて、その迷路の出口にネズミのエサを置き、ネズミがどのような行動をとるかについて調べました。
その結果、ネズミが迷路の出口に近づくにしたがって素早く行動した、ということがわかりました。このようにして、彼は目標勾配の効果について立証しました。
「目標勾配」の英語訳
目標勾配を英語に訳すと、次のような表現になります。
- goal gradient
(目標勾配)
まとめ
以上、この記事では「目標勾配」について解説しました。
読み方 | 目標勾配(もくひょうこうばい) |
---|---|
意味 | 目標に近づけば近づくほど、やる気が出てくること |
由来 | 喫茶店の例、クラーク・ハル |
英語訳 | goal gradient(目標勾配) |
目標勾配は、自分で何か目標を達成するときに役立つ知識です。何か目標を設定するときは、小さい目標を少しずつクリアするようにしていくことで、より自分の目標達成をしやすくなるかもしれません。