昔から、人々の暮らしは、河川と共にありました。エジプト・メソポタミア・インダス・黄河の四大文明も、大河流域で発展しました。
現代の日本においても、河川の近くに住宅地があることが多いです。そのため、河川を身近に感じる人も多いでしょう。
そんな河川には、「一級河川」「二級河川」という種類があります。今回は、「一級河川」と「二級河川」の違いについて、わかりやすく解説します。
結論:所属する「水系」の流域面積が違う
合流前・分岐後の川を含めた、一群の河川全体のことを、「水系」といいます。
一級河川とは、流域面積が大きい水系の中で、経済的または安全上の観点から重要度が高いと認められ、国土交通大臣が指定した河川のことです。
一方、二級河川とは、比較的流域面積が小さい水系の中で重要度が高いと認められ、都道府県知事が指定した河川のことです。
「一級河川」をもっと詳しく
「一級河川」とは、流域面積が大きい水系の中で、経済的または安全上の観点から重要度が高いと認められ、国土交通大臣が指定した河川のことです。「一級河川」は、平成30年4月時点で、全国に14065あります。
1965年に施行された河川法の4条で、以下のように定められています。
「一級河川」について理解する上では、「国土保全上」「国民経済上」「水系」の3つがキーワードとなります。この3つについて、順番に説明します。
まず、「国土保全上」重要とは、洪水や高潮などの災害が起こった時の被害が大きいこと・国家としてその災害の防止が重要であることを意味します。
一方、「国民経済上」重要とは、生活インフラ・企業活動を維持する上で、国家規模の大きな役割を果たしていることを意味します。
また、「水系」とは、合流前・分岐後の川を含めた、ひとつながりになった河川全体のことです。
河川は、基本的に山から海へ流れていきます。上流の小さな川が合流を繰り返し、徐々に下流の大きな川になります。この上流・下流の大小さまざまな河川の一群を、「水系」といいます。
ここで、改めて「一級河川」について、かみ砕いて説明します。
河川は、大雨が降った際には、多くの水を受けとめ、海に流す役割を果たします。また、水は生活用水や工場用水、発電、農業などに利用されます。
このような河川の役割を踏まえ、流域面積が大きく、人々の生活への影響が特に大きい水系を「一級水系」と呼びます。さらに、「一級水系」の中でも国土交通大臣が指定した区間を、「一級河川」としているのです。
「一級河川」は、全国に109ある「一級水系」のどれかに属しています。結果的に、住宅密集地や町の近くにある河が、「一級河川」に認定されることが多いです。
ただ、「一級水系」のすべての区間が、「一級河川」になるわけではありません。流域や規模が小さい河川については、後に説明する「準用河川」「普通河川」になることもあります。
さらに、「一級河川」は、「指定区間外(直轄管理区間)」「指定区間」の2種類に分けることができます。
一級河川の中でも特に重要度が高い区間は、「指定区間外(直轄管理区間)」となります。国土交通大臣が管理します。
一方、「指定区間外」に比べて重要度が劣ると、「指定区間」になります。一部の管理事務は、国土交通大臣ではなく、都道府県知事又は政令指定都市の長が行います。
「一級河川」になると、河川法による法規制の対象になります。
具体的には、「流水の占用の許可(第23条)」「土地の占用の許可(第24条)」「土石採取の許可(第25条)」「工作物の新築等の許可(第26条)」などが必要になります。
「一級河川」の例
東京都内だけでも、92の「一級河川」があります。今回は、その一部をご紹介します。
- 江戸川
- 中川
- 綾瀬川(あやせがわ)
- 荒川
- 隅田川
- 神田川(かんだがわ)
- 日本橋川
- 石神井川(しゃくじいがわ)
- 多摩川
- 仙川
- 秋川
「二級河川」をもっと詳しく
「二級河川」とは、比較的流域面積が小さい水系の中で重要度が高いと認められ、都道府県知事が指定した河川のことです。「二級河川」は、平成30年4月時点で、全国に7081あります。
「二級河川」は、「一級水系」に比べて流域面積が小さい「二級水系」の中から、認定されます。「二級水系」の数は、全国で2700以上あります。
そのため、「一級水系」の一部が「二級河川」となることはありません。また、「二級水系」の一部が「一級河川」となることもありません。
「一級河川」の方が規模が大きく、災害時の被害が大きい傾向にあります。
ただ、「二級水系」のすべての区間が、「二級河川」になるわけではありません。流域や規模が小さい河川については、後に説明する「準用河川」「普通河川」になることもあります。
「二級河川」については、1965年に施行された河川法の5条で、以下のように定められています。
ここでいう「前条第一項の政令で指定された水系」とは、「一級水系」のことです。
「公共の利害」とは、国土保全上または国民経済上の影響のことです。つまり、「二級水系」の中で、「一級河川」と同様の観点から重要といえる河川が、「二級河川」となります。
「二級河川」に認定されると、「一級河川」同様に、河川法にもとづいて管理されます。管理者は、都道府県知事または政令指定都市の長です。
ちなみに、「三級河川」は存在しません。
「二級河川」の例
東京都内だけでも、15の「一級河川」があります。以下にまとめました。
- 目黒川
- 蛇崩川(じゃくずれがわ)
- 北沢川(きたざわがわ)
- 鳥山川(とりやまがわ)
- 呑川(のみかわ)
- 九品仏川(くほんぶつがわ)
- 古川
- 渋谷川(しぶやがわ)
- 境川(さかいがわ)
- 内川(うちかわ)
- 立会川(たちあいがわ)
- 越中島川(えっちゅうじまがわ)
- 築地川(つきじがわ)
- 汐留川(しおどめがわ)
- 八ッ瀬川(やつせがわ)
「準用河川」「普通河川」をもっと詳しく
「準用河川」とは、一級河川・二級河川以外の河川のうち、市町村長が指定した河川のことです。また、「普通河川」とは、一級河川・二級河川・準用河川以外の河川のことです。「普通河川」は、河川法に記載されていません。
「準用河川」については、1965年に施行された河川法の100条で、以下のように定められています。
この場合において、これらの規定中「都道府県知事」とあるのは「市町村長」と、「都道府県」とあるのは「市町村」と、「国土交通大臣」とあるのは「都道府県知事」と、第十三条第二項中「政令」とあるのは「政令で定める基準を参酌して市町村の条例」と読み替えるものとする。
一級河川・二級河川に認定されていないものの、その市町村民の安全・生活上重要な河川が「準用河川」となります。「準用河川」になると、河川法の「二級河川」に関する規定が読みかえられ、適用されます。
「準用河川」の管理者は、市町村長です。
まとめ
以上、この記事では、「一級河川」と「二級河川」の違いについて解説しました。
- 一級河川:流域面積が大きい水系の中で、経済的または安全上の観点から重要度が高いと認められ、国土交通大臣が指定した河川
- 二級河川:比較的流域面積が小さい水系の中で、重要度が高いと認められ、都道府県知事が指定した河川
「一級河川」は重要度が高く、「二級河川」の重要度は低いと思っていた方も多いのではないでしょうか。もちろん「一級河川」の重要度が高いことは正しいですが、「二級河川」も人々の命や生活を守る上で大切な川です。
両者の一番の違いは、「所属する水系の流域面積の違い」です。
近年、豪雨による洪水被害があいついでいます。近場の河川に関する最低限の知識は、持っておきましょう。