保安官と聞くと、「砂ほこりに包まれた荒野を馬に乗ってかけ抜ける、六芒星(ろくぼうせい)のバッジを光らせた射撃の名手」を思い浮かべる人もいるでしょう。
西部劇では町を守る正義のヒーローとして保安官が登場しますが、そこにパトカーに乗った警察は出てきません。
その差は何なのでしょうか。今回は保安官と警察の違いについて見ていきます。
結論:保安官に指揮されるのが警察
「警察官」は、社会の安全や秩序を守る行政機関ですが、アメリカでは主に市内の治安維持が任務とされています。
ただ、地域によって両者の職務権限には差異があります。
- 司法の任務:犯罪事件の捜査や被疑者の逮捕・身柄拘束、また検察が支持する法定事務など
- 公安職:治安維持に従事する公務員の職
「保安官」をもっと詳しく
50の州と特別区からなるアメリカは、その広大な土地を統制するために「保安官」・「警察」・「FBI」などさまざまな治安組織を置いています。
「保安官」とは、司法の任務を担当する公安職を指します。司法とは、犯罪事件の捜査や被疑者の逮捕・身柄拘束、また検察が指示する法定事務などを指します。
「保安官」と呼ばれるものには、以下の4種類があります。
- 郡保安官:郡の治安維持に従事。住民からの選挙で選ばれる。
- 市保安官:市の治安維持に従事。ニューヨーク市を管轄。市長より任命される。
- 州保安官:州の治安維持に従事。
- 連邦保安官:連邦裁判所に属する役人。大統領より任命される。
「保安官」と言う場合、①の「郡保安官」を指すことが多いです。「保安官」は、主に郡という区画の中で治安維持を担当します。
基本的には、郡がいくつかの市を含んでいるという関係です。ただ、中には、ニューヨークのように市が複数の郡を含んでいる場合があります。そのため、ニューヨークでは「市保安官」という呼称があります。
③の「連邦保安官」は、裁判所の法廷管理や、逮捕令状などの執行、また証人の身の安全確保などが主な任務です。
アメリカは連邦制(各自治体の権限が強い制度)を採用しているため、「保安官」のあり方は自治体によって大きく異なります。
知事が保安官を兼任している州もあれば、現場ではたらく警察を管理する組織として保安官が置かれている州もあれば、保安官が廃止されて警察だけが治安維持をしている州もあるのです。全体として、保安官という役職は減っている傾向にあります。
「警察」をもっと詳しく
日本とアメリカの警察はほぼ同じです。試験で採用された社会の安全や秩序を守る行政機関で、police(ポリス)と訳されます。アメリカでは、特に市内の治安維持を担う公務員組織を指します。「市警」と言うこともあります。
「警察官」の活動内容は、刑事事件の捜査を行ったり、テロやゲリラに対する警備を行ったり、交番での活動を行ったりと、多岐にわたります。
アメリカの警察と日本の警察の違いをあげるとすれば、所属と行動範囲です。
日本の警察は、都道府県を主体として設置されます。都道府県警察と呼ばれるこの形態は、国から役割を委託されているという指揮関係ではありません。そのため、警察の所属は主に各都道府県にあり、自治体警察とされることが多いです。
ただ、都道府県警察への指揮命令権は警察庁が持っていることなどから、日本の警察は国家警察と自治体警察の間を取っているのが実態と言えます。
一方でアメリカの場合は州の権限が非常に強く、自治体ごとに警察を持つことができます。よって所属は自治体単位となるため自治体をまたいだ業務は行えず、A州の警察はB州の業務には関われません。
本社を持たない個人経営をイメージするとよいでしょう。
まとめ
以上、この記事では、「保安官」と「警察」の違いについて解説しました。
- 保安官:アメリカにおいて、司法の任務を担当する公安職
- 警察官:社会の安全や秩序を守る行政機関。アメリカでは、主に市を管轄。
さらに、日本には保安官がいないのに加えて保安官と警察の業務には重なる部分もあるため、完璧に違いを理解することは難しいです。しかしある程度の概要が把握できれば、刑事ものが多いアメリカ映画をより楽しく観ることができるかもしれません。