「ノイローゼ」と「うつ」の違いとは?特徴や原因まで解説

違いのギモン

現在の社会はストレスに満ちていますから、最近では「うつ」が大きな社会問題の1つになっていますよね。そして、こころの病は病気や怪我などと違ってわかりにくいのでやっかいです。

ところで、「うつ」と似た言葉として「ノイローゼ」があげられます。そして、この2つの言葉は混同されることがとても多いです。

そこで、今回は混同されがちな「ノイローゼ」と「うつ」の違いについて解説していきたいと思います。

結論:ぜんぜん違うものを指している

ノイローゼとは神経症のことで、不安などを原因とする、入院を必要としない程度の不適応障害のことです。

一方、うつとは憂鬱(ゆううつ)な気分などが長期間続く精神的な病気のことです。

「ノイローゼ」をもっと詳しく

ノイローゼは日本語で言うと神経症のことです。そして、不安などを原因とする、入院を必要としない程度の不適応障害のことを指します。

ちなみにノイローゼはドイツ語の “neurose” の発音をカタカナにしたものですが、日本語では「神経症」といい、英語では “neurosis” と言います。

それでは、ノイローゼの特徴、原因、症状、治療、病気の例の順に見ていきましょう。

ノイローゼの特徴

まず、ノイローゼの最大の特徴はこころの状態が原因になっているという点です。そして、原因となっている悩みは本人以外の人でも説明できるという特徴があります。

また、症状が軽いものにとどまり、精神病のレベルにまではならないという特徴もあります。ちなみに、精神病レベルの症状とは、現実と非現実の区別がつかなくなるような幻覚・妄想・錯乱などのことです。

また、ノイローゼの1番有名な症状は異常に不安を感じてしまうことなのですが、これは通常の不安とは違い、一定期間継続するという特徴があります。

通常の不安は早ければ一瞬、長くても何日か経てば消えることが多いですが、ノイローゼの不安はずっと消えずに継続します。また、慢性的であり、休養や気分転換をしても改善しないのがノイローゼの不安です。

そして、ノイローゼの治療には年単位の時間が必要になることが多いですが、性格が変わるなどの後遺症は見られないことがほとんどです。

ノイローゼの原因

ノイローゼの原因は目の前の環境に適応できず、不安感にとらわれて精神バランスが崩れてしまうことです。

例えば、海外への転勤はノイローゼの原因の1つです。

海外への転勤がもとで、婚約していた人と別れなければならなくなったり、家族と離れ離れになって現地の文化などにうまく適応できなかったりすると、ノイローゼになってしまうことがあるでしょう。

ただ、これには個人差があって、上の例のような状態になってもうまくやっていける人もいれば、もっと適応するのが簡単な状況でノイローゼになってしまう人もいます。

ちなみに、そのような個人差は育てられた環境のほか、遺伝などでも生まれます。

 

また、原因は上の例のようにはっきりしており、それを取り除けば解決することが多いでしょう。

例えば、上の例だと海外勤務をやめて日本に戻ってくれば解決する場合が多いです。

ノイローゼの症状

ノイローゼの主な症状は不安です。そして、この不安にはいくつか特徴があります。

まず、ノイローゼの不安はあいまいでうまく伝えられません。もともと原因ははっきりしているのですが、不安な日々が続くことで体の中で不安という感情のスイッチが入りっぱなしになり、本来の原因とは関係のないシチュエーションでも不安になってしまうのです。

次に、ノイローゼの原因が解決してもまた同じことが起こるのではないかという予期不安が強く長く続きます。

また、上で説明した通り、本人にも不安の原因がよくわからない状況になっているので、周りの人はノイローゼの不安を軽視しがちです。しかし、このような不安は本人にとってはとても辛いものであるため、仕事が手につかなくなってしまうこともあります。

 

そして、基本的にはこころの病気なのですが、体のほうにも症状が出てくることがあります。例えば、動悸(どうき)・息苦しさ・目まい感・頻尿・吐き気・食欲低下などです。これらの体の症状は自律神経失調症という、自律神経の調子が乱れる病気とにているところがあります。

ちなみに、社会行動は大きく破綻しません。つまり、犯罪に走ってしまったり、奇声をあげる、などの社会に適応するのが困難になるような症状は出ないということです。

ノイローゼの治療

ノイローゼの治療法は抗不安剤・抗うつ剤などの薬物治療や、精神療法、行動療法、暗示療法、麻酔分析治療などです。

まず、ノイローゼの治療として1番最初に考えられるのは投薬による治療ですが、その種類は主に抗不安剤と抗うつ剤です。

このうち、抗不安剤は精神安定剤という呼ばれ方のほうが一般的ですが、身体をリラックスさせ、おだやかな気持ちにしてくれる効果があります。そして、即効性があるというメリットがあります。

また、抗うつ剤は文字通りうつ病を治療するために生まれた薬ですが、脳内のある神経伝達物質を増やし、落ち込みなどの傾向を改善する効果があります。

 

次に、精神療法とは薬などとは違い、患者を心理的な側面から治療する方法のことです。これには様々なものがありますが、心理カウンセリングが1番有名でしょう。

また、行動療法は患者の行動を段階的に適応的なものに変えていき、それにより心理的側面の治療を図ろうとする方法です。

次に、暗示療法とは患者にいいイメージの暗示を与えることでこころを治療しようとする療法です。

そして、麻酔分析治療とは麻酔や睡眠薬が効いたまどろんだ状態でつらい体験や気持ちなどを聞き出し、症状の改善を図ろうとする治療法です。

ノイローゼの病気の例

ノイローゼは神経症に分類される病気の総称なので、その中にはさまざまな病気があります。この項ではそのうち代表的なものを紹介したいと思います。

不安神経症

不安神経症とは毎日の生活の中で慢性的に漠然した不安を持ち続けてしまう病気で、ノイローゼの中ではもっとも有名な病気でしょう。

強迫神経症

強迫神経症とは、頭の中に思い浮かぶ不快なイメージを拭い去るために同じことを何度も強迫的に繰り返してしまう病気です。

例えば、頭の中に手が汚いのではないかというイメージがずっと浮かんできて、何十回も手を洗ってしまうことがあります。

恐怖神経症

恐怖神経症とは、日常のささいなことでも恐怖に取り付かれてしまい、社会生活に支障がでてきてしまう症状がある病気です。

抑うつ神経症

抑うつ神経症とは気分が落ち込んだ状態が慢性的に続いてしまう病気です。この症状はうつ病と似ていますが、それとは似て非なるものです。

うつ病は原因をはっきりと特定できませんが、抑うつ神経症は原因を必ず特定することができます。

「うつ」をもっと詳しく

うつ病とは、脳の神経伝達物質などの量が減少することにより気分の落ち込みが慢性的に続くようになってしまう病気です。

これも、特徴、原因、症状、治療の順で見ていきましょう。

うつの特徴

うつにはノイローゼとは違って、原因をはっきりと特定できないことが多いという特徴があります。そして、うつになったきっかけを解消するだけで回復することは少ないでしょう。

また、別の病気なのでノイローゼと併発することもあります。

そして、重度の場合には自殺を図ってしまう場合もあり、注意が必要です。

うつの原因

うつの原因ははっきりとはわかっていません。

しかし、環境に適応できなかったことによる不安やストレスなどにより、脳の神経学的なメカニズムに変化が起こり、脳で働く神経伝達物質の働きが悪くなってしまい、気分の落ち込みの慢性化が起こると言われています。

うつの症状

うつの症状は大きく精神的な症状と身体的な症状とにわけられます。

精神的な症状

うつの精神的な症状としては朝に強いゆううつ気分になること、本などを読んでも頭に入ってこないような思考のおっくう感、不安、焦燥、イライラ、自信喪失、自分を責めるような感情の慢性化などがあります。

身体的な症状

うつの身体的な症状としては夜中に起きて寝れなくなる症状、朝早くに起きてしまい寝付けなくなる症状、食欲不振、性欲低下、体重減少、便秘、口の渇きなどがあります。

うつの治療

うつの治療法には休養を取ることの他に、薬物療法と精神療法があります。

精神療法についてはノイローゼの項で解説したのでここでは省きます。

うつの薬物治療では抗うつ剤を使いますが、これには先ほども解説した通り、脳のある神経伝達物質を増やすという効果があります。そして、これによってうつ病で足りなくなっていた脳内の物質を補填して、正常な状態に戻すのです。

ちなみに、抗うつ剤にはきちんと効果がありますが、抗うつ剤が効くメカニズムは仮説があるのみで、はっきりとは解明されていません。

また、性格が変わってしまうのではないか、などという不安を持っている方もいるかもしれませんが、抗うつ剤の役割は足りなくなっていた脳内物質の補填なので、そのようなことが起こることはありません。

まとめ

以上、この記事では、「ノイローゼ」と「うつ」の違いについて解説しました。

  • ノイローゼ:神経症のこと。不安などを原因とする、入院を必要としない程度の不適応障害
  • うつ:憂鬱(ゆううつ)な気分などが長期間続く精神的な病気

ノイローゼやうつは違う病気ですが、周りに理解されにくく、しかし本人にとってはつらいという点は特徴です。周りにこのような症状を持っている人がいたら、ぜひ精神科を受診させてあげてください。

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和佐 崇史
文章を書くこと、読むことが大好きな大学生です。中学2年生で漢検2級を取得するなど、言葉については詳しい自信があります。Webライターとしてはこれまで累計1,000記事以上を執筆してきました。