今回ご紹介する言葉は、四字熟語の「多岐亡羊(たきぼうよう)」です。
言葉の意味・使い方・由来・類義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「多岐亡羊」をざっくり言うと……
読み方 | 多岐亡羊(たきぼうよう) |
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意味 | 進路や方針が多すぎて、何を選ぶべきかわからなくなってしまった状況。また、枝分かれしている様々な学問に手を伸ばしすぎて、根本を見失ってしまい理解に苦しむこと。 |
由来 | 『列子』『説符(せっぷ)』 |
類義語 | 岐路亡羊(きろぼうよう)、亡羊之嘆(ぼうようのたん)など |
英語訳 | too many options making selection difficult(選択を難しくするあまりに多くの選択肢) |
「多岐亡羊」の意味をスッキリ理解!
「多岐亡羊」の意味を詳しく
「多岐亡羊」は、「多岐」と「亡羊」の2つの言葉から構成されています。
「多岐」の「岐」は「山」と「支」で成り立つ漢字です。「支」は「枝分かれする」という意味を持つため、「岐」で「枝分かれしている山道」を表します。
「亡羊」は、「亡」と「羊」という2つの漢字から成り立っています。「亡」は、「うしなう」という意味を持つ漢字です。つまり、「亡羊」は「羊を見失うこと」を表す言葉です。
つまり、「多岐亡羊」は字義通りに解釈すると、「枝分かれしている山道で、羊を見失うこと」を意味する四字熟語です。
その後、「多岐亡羊」は学問についても用いられるようになり、「枝分かれしているさまざまな領域に手を伸ばしすぎると、根本を見失ってしまい理解に苦しむこと」を表すようになりました。
さらにそこから意味が拡大し、あらゆることについて進路や方針が多すぎて、何を選ぶべきかわからなくなってしまった状況を指す言葉となりました。
「多岐亡羊」の使い方
- 自分の可能性を狭めることを恐れて、専門を決めることなくここまでやってきたが、いよいよ多岐亡羊としてきた。
- どちらがよいか決めようと、先輩に話を聞きに行ったが、逆に新たな選択肢を提示され、より多岐亡羊としてしまった。
- 多岐亡羊としている自分の将来に不安が募り、夜も眠れない。
- 今回の選挙では、合計20もの政党から候補者が出ているが、正直多岐亡羊のそしりを免れない。
- このプロジェクトは、あまりに多くの人の意見を聞きすぎたので、多岐亡羊のそしりを免れない。
「多岐亡羊のそしりを免れない」という形で、「さまざまな案や候補を出しすぎて、まとまりがつかなくなってしまった状況」を表す際に使われることが多い四字熟語です。
「多岐亡羊」の由来
道家の書物である『列子』の『説符(せっぷ)篇』の中の話が由来となっています。以下の文章がその話になります。
現代語訳すると、「羊を捕まえたか、と聞いたところ、逃がしてしまった、と答えた。どうして逃がしてしまったのか、と聞くと、分かれ道の途中にまた分かれ道があって、どちらへ逃げたかわからなくなってしまった。それでしょうがなく帰ってきた、と答えた。」となります。
中国の春秋戦国時代の思想家である楊朱(ようしゅ)と、その隣人とが交わした上記の会話が、「多岐亡羊」の由来となっています。
「多岐亡羊」の類義語
多岐亡羊には以下のような類義語があります。
- 岐路亡羊(きろぼうよう):進路が多すぎて何を選べばよいかわからなくなってしまうこと。
- 亡羊之嘆(ぼうようのたん):学問の道が分かれすぎていて、学問の根本を捕らえられなくなること。
「多岐亡羊」の英語訳
多岐亡羊を英語に訳すと、次のような表現になります。
- too many options making selection difficult
(選択を難しくするあまりに多くの選択肢)
まとめ
以上、この記事では「多岐亡羊」について解説しました。
読み方 | 多岐亡羊(たきぼうよう) |
---|---|
意味 | 進路や方針が多すぎて、何を選ぶべきかわからなくなってしまった状況。また、枝分かれしている様々な学問に手を伸ばしすぎて、根本を見失ってしまい理解に苦しむこと。 |
由来 | 『列子』『説符(せっぷ)』 |
類義語 | 岐路亡羊(きろぼうよう)、亡羊之嘆(ぼうようのたん)など |
英語訳 | too many options making selection difficult(選択を難しくするあまりに多くの選択肢) |
人間は選択することができる自由を欲する一方で、あまりにも選択肢が多すぎると選択することを苦痛に感じてしまうこともある生き物です。
さまざまな情報を収集し、進路や方針の判断材料を集めることはもちろん大事ですが、それらを取捨選択するための自分の判断基準をはっきりと持っておくことはそれ以上に大事なことでしょう。