「出処進退」の意味とは?使い方から英語や類義語まで例文付きで解説

言葉

今回ご紹介する言葉は、四字熟語の「出処進退(しゅっしょしんたい)」です。

言葉の意味・使い方・由来・類義語・英語訳についてわかりやすく解説します。

☆「出処進退」をざっくり言うと……

読み方出処進退(しゅっしょしんたい)
意味今の職にとどまっているか、やめて退くか態度をはっきりさせること。
由来『欧陽文忠公(おうようぶんちゅうこう)を祭る文』
類義語進退出所(しんたいしゅっしょ)、用行舎蔵(ようこうしゃぞう)、進退去就(しんたいきょしゅう)、去就進退(きょしゅうしんたい)など
英語訳advancing and retreating(進退),appearance and disappearance(出処),one’s course of action(行動指針)

「出処進退」の意味をスッキリ理解!

出処進退(しゅっしょしんたい):今の職にとどまっているか、やめて退くか態度をはっきりさせること。

「出処進退」の意味を詳しく

「出処進退」は、「出処」と「進退」という2つの言葉から成り立っています。

 

「出処」の「出」は「官に仕えて役人になること(=仕官)」を意味する漢字です。一方、「出処」の「処」は「官から退いて民間の仕事につくこと(=在野)」を意味する漢字です。

つまり、「出処」という言葉は、「官職にこのままとどまるか、もしくは官職を辞めて民間に退くか」という意味を表します。そのため、この言葉はすでに官職についている人に対して用いられていました。

 

「進退」は「進(む)」という漢字と「退(く)」という漢字から成り立っている言葉です。この言葉は、そのまま「進むことと退くこと」を表します。また、そこから転じて「職をやめるか否か、またそこからどう行動していくかという、身の振り方」を表す言葉になりました。

 

したがって、「出処」と「進退」は官職と普通の職という違いはあれど、どちらも「今の職をやめるか否かという身の振り方」を表す言葉です。そのため、「出処進退」も今の職にとどまっているか、やめて退くか態度をはっきりさせることを意味します。

 

かつては、官職にある人物に対して使われていたこの四字熟語ですが、現在では、不祥事を起こした政治家や、成績が振るわなかったスポーツの指導者・監督、会社に大きな損害をもたらしてしまった経営陣に対してニュースなどでよく用いられています。

「出処進退」という言葉が用いられる場面は、周囲や世間からすでに辞任を求める声が高まっているケースが多いです。

「出所進退」と書いてしまうのは誤用であるため、気を付けましょう。

「出処進退」の使い方

  1. 私が、長年贔屓(ひいき)にしているチームは、今年屈辱のペナントレース最下位だったため、監督の出処進退が問われている。
  2. 閣僚のスキャンダルが相次ぎ、ニュースが出処進退を問うものばかりになっていて、情けない限りだ。
  3. あの日本が誇る大企業を経営不振に陥らせてしまった社長の責任問題が取りざたされたが、出処進退は本人に委ねられた。
  4. 首相がなかなか自身の出処進退を明らかにしないので、記者たちは焦りを募らせている。
  5. まだ肝心の問題が解決していないので、自分の出処進退を語るには、時期尚早だと感じている。

「(出処進退を)明らかにする」、「(出処進退)を問う」、「(出処進退)を委ねる」、「(出処進退)を語る」という形で用いられることが多いです。

「出処進退」の由来

北宋の政治家であり、詩人であり、そして文章家でもある王安石(おうあんせき)が書いた『欧陽文忠公(おうようぶんちゅうこう)を祭る文』が由来となっています。

この文の中に、以下の言葉があります。

「功名、成就すれば、居(を)らずして去る。其の出処進退は又庶(ちか)からんか」

現代語訳すると、「功名を遂げたらその場を去る。そのような身の処し方はまさにいにしえの賢人である。」となります。文中の「出処進退」がそのまま由来となっています。

「出処進退」の類義語

出処進退には以下のような類義語があります。

  • 進退出所(しんたいしゅっしょ):官職にそのままとどまっていることと、辞めて退くこと。
  • 用行舎蔵(ようこうしゃぞう):君主に必要とされれば、官職について能力を発揮し、必要とされなくなったら、世間から身を隠し、静かに暮らすこと。
  • 進退去就(しんたいきょしゅう):現在の職や地位に対して、留まるか辞めるかという身の振り方のこと。
  • 去就進退(きょしゅうしんたい):今後の進路や、対応の方法のこと。

「出処進退」の英語訳

出処進退を英語に訳すと、次のような表現になります。

  • advancing and retreating
    (進退)
  • appearance and disappearance
    (出処)
  • one’s course of action
    (行動指針)

まとめ

以上、この記事では「出処進退」について解説しました。

読み方出処進退(しゅっしょしんたい)
意味今の職にとどまっているか、やめて退くか態度をはっきりさせること。
由来『欧陽文忠公(おうようぶんちゅうこう)を祭る文』
類義語進退出所(しんたいしゅっしょ)、用行舎蔵(ようこうしゃぞう)、進退去就(しんたいきょしゅう)、去就進退(きょしゅうしんたい)など
英語訳advancing and retreating(進退),appearance and disappearance(出処),one’s course of action(行動指針)

「出処進退」を決めることは責任の取り方のひとつとしてよく用いられます。鉄道の脱線事故が起きた後に、鉄道会社のトップが辞任することなどがその例です。

しかし、トップが何人辞任したところで、事故により失われた命は帰ってきません。

「出処進退」を問うだけで満足していては、根本的な問題解決とはならない問題もたくさんあるということを、忘れずに心にとめておきましょう。