生殺与奪とは、「絶対的な権力を持っていること」という意味です。
この言葉は大人気漫画、『鬼滅の刃』の「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」というセリフで耳にした人が多いのではないでしょうか。
しかし、どんな意味なのかよくわからないという人も多いと思います。
そこで、この記事では生殺与奪の意味について詳しく解説しています。
「生殺与奪」の意味
絶対的な権力を持っていること
生殺与奪は絶対的な権力を持っていることのたとえです。
以下の4つの漢字を組み合わせて作られた四字熟語です。
- 生かす
- 殺す
- 与える
- 奪う
この4つの行為が自由にできることから、絶対的な権力を持っていることのたとえになっているのです。
現代社会では、以下のような場合に、生殺与奪の権を握っていると言えます。
- 寝たきりの人の介護
食事、排泄などの行為をすることもしないことも、介助者に委ねられているため - 家畜の飼育
食べ物も住む場所も飼い主の思うがままであるため - ワンマン社長
会社の方針や業務の内容がすべて社長の思うがままであるため
「生殺与奪」の読み方
生殺与奪の読み方は以下のとおりです。
正式な読み方 | せいさつよだつ |
---|---|
慣用読み (間違いではない) | せいさいよだつ |
間違った読み方 | せっしょうよだつ |
ちなみに、「せいさいよだつ」は本来間違った読み方ですが、多くの人がこの読み方をするため、慣用読みとして認められています。
確かに生殺与奪の「殺」は「さつ」とも「さい」とも読みます。
しかし、2つの読み方は以下のように、意味で厳密に分けられています。
- 「ころす」「死ぬ」などの意味
→「さつ」と読む
例:「殺人(さつじん)」「自殺(じさつ)」 - 「そぐ」「小さくなる」などの意味
→「さい」と読む
例:「相殺(そうさい)」「減殺(げんさい)」
生殺与奪の殺は「ころす」という意味のため、「さつ」と読むのが正しいのです。
「生殺与奪」の使い方
生殺与奪は誰かが圧倒的な権力を握っている様子を表現する時に使います。
特に圧倒的な権力を誰かに握られている人が、不満を述べる時に用いられることが多いようです。
「生殺与奪の権」「生殺与奪の権力」という形で用いられます。
具体的な例文を見ていきましょう。
- 昔は、家主が生殺与奪の権を握っていて、家来は成す術がなかった。
- 生殺与奪の権力があるからといって、勝手気ままに振る舞うのはよくない。
- 生殺与奪の権を他人に握らせるな!!
[出典:吾峠呼世晴『鬼滅の刃 』1巻]
❸の例文は圧倒的な力を持っている人が、その様子を自分で「生殺与奪」と表現している珍しい例です。
「生殺与奪」の由来
生殺与奪の由来は古代中国の思想家荀子(じゅんし)による『荀子 王制篇』です。
『荀子 王制篇』には以下のような記述があります。
貴賤(きせん)・殺生(せっしょう)・與奪(こうだつ)は、一なり。
現代語訳
貴いことと卑しいこと、殺すことと生かすこと、与えることと奪うことという全く正反対のことも、根本は一つである。
このなかの「殺生」「與奪」の2語が殺生與奪(せっしょうこうだつ)という四字熟語になり、生殺与奪というかたちに変化しました。
殺生與奪の「與」は「与」の旧字体です。
「殺生」がいつの間にか「生殺」になり、生殺与奪という四字熟語が生まれました。
ちなみに、上の文章は、すべての権力が中国皇帝のものであることを表しています。
「生殺与奪」の類義語
生殺与奪には以下のような類義語があります。
- 活殺自在(かっさつじざい)
自分の思い通りに扱うこと - 絶対的権力
誰にも勝てないような権力のこと - 梁冀跋扈(りょうきばっこ)
自分の欲望のままに振る舞うこと
この中でも活殺自在は特に生殺与奪と近い意味を表しています。
「生殺与奪」の英語訳
生殺与奪を英語に訳すと、次のような表現になります。
- absolute power
(絶対的権力) - have the power of life and death
(生死を決める権力を持っている) - ultimate power
(絶対的な権力)
「生殺与奪」のまとめ
以上、この記事では「生殺与奪」について解説しました。
読み方 | 生殺与奪(せいさつよだつ) |
---|---|
意味 | 絶対的な権力を握っていること |
由来 | 『荀子 王制篇』の「殺生與奪(せっしょうこうだつ)」より |
類義語 | 活殺自在 絶対的権力 梁冀跋扈 |
英語訳 | absolute power(絶対的権力) have the power of life and death(生死を決める権力を持っている) など |
現代では、生殺与奪の権を握るような状態は少ないため、普段使うことは多くないでしょう。
ただし、意味や由来、使い方をしっかりおさえておくことは大切です。