突然ですが問題です。あなたはドローンを道の真ん中で操作していましたが、誤って見知らぬ人の顔にぶつけ、怪我を負わせてしました。この場合に適用されるのは民法と刑法のどちらでしょうか?(答えはこの記事の中盤で紹介します)
民法と刑法という言葉自体は誰しもが聞き覚えがあるでしょう。しかし具体的な相違点やそれぞれが対象とする紛争を正確に理解している人は、実は少ないのではないでしょうか。この記事では、両者の性質や違いを解説していきます。
結論:基本的に警察が介入するのは刑法の事案のみ
民法は個人間の紛争についての法律です。一方、刑法は国家から個人に対する禁止事項を定めた法律です。刑法は警察などの国家権力により強制されますが、民法は私人間の問題なので、基本的に警察は関与しません。
民法
民法は、個人間での何らかの紛争についての法律です。具体的には、貸した金が返ってこない時や土地の所有権の争い、相続金の分配等が挙げられます。私たちの生活を規律する最も身近な法律であり、物に対する権利の「物権」と人に対する権利の「債権」に大別できます。
民法による訴訟を民事訴訟、裁判を民事裁判といいますが、裁判を起こした側を「原告」、裁判を起こされた側を「被告」といいます。
民法の内容は多岐にわたり、1044条まであります。商法や労働法など関連する法律なども含めると膨大な数になります。
民事裁判の主体は、あくまで個人であるため、行うかどうかは任意となります。例えば冒頭に紹介したドローンのケースでは、被害者が非常に大らかな性格の人だった場合に、被害者が加害者に民事訴訟をしないということも考えられます。その場合は当事者間の話し合い等に委ねられることになります。
しかし被害者が民事訴訟をした場合には、民事裁判となり民法が適用されます。具体的には怪我の具合等に応じて、慰謝料や入院費、治療費を請求される可能性があります。
刑法
刑法は、国家が犯罪を犯した人間に刑罰を与えるための法律です。具体的には殺人罪や傷害罪、窃盗罪などが挙げられます。
刑法による訴訟を刑事訴訟、裁判を刑事裁判といいます。ここでは逮捕され容疑をかけられた人を「被疑者」、検察官によって刑事裁判にかけられると「被告人」といいます。また被告人を弁護する弁護士の他に、被告人の罪を立証しようとする「検察官」が裁判に参加します。
条文の数でいうと、刑法は246条までなので、民法より大幅に少ないです。
冒頭に紹介したドローンのケースでは、状況や傷の深さなどにもよりますが、多くは業務上過失致傷罪が成立し、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金が課されます。
まとめ
民法と刑法では、規定されたルールの性質が異なります。民法は当事者間の平等で合理的な解決のための指針、刑法は社会生活における禁止事項の明確化とそれらの抑止という役割を担っています。それぞれが有効に機能することにより、国家が成り立っているといえるでしょう。
以上、この記事では、「民法」と「刑法」の違いについて解説しました。
- 民法 個人間の紛争に適用
- 刑法 国家により個人の犯罪行為に適用
いかがでしたでしょうか。「民法」と「刑法」は数多くある法律のうちの2つ、というだけではありません。色々な違いがあります。
先ほど条文はそれぞれ1044条まで、246条までといいましたが、民法典や刑法典に収まりきらなかった規定が「特別法」として非常に多く存在します。司法試験は最難関の国家資格といわれていますが、この条文の数からも法律家への道の険しさが伝わるのではないでしょうか。