パトロンとは「自分の金銭や影響力を利用して支援を行う特権者や資産家」という意味です。
芸術や文学の世界で古くから使われてきたので、難しい言葉だという印象をもっている人も多いと思います。
この記事では、語源や意味を詳しく解説します。
☆「パトロン」をざっくり言うと……
英語表記 | パトロン(patron) |
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意味 | 自分の金銭や影響力を利用して支援を行う特権者や資産家 |
語源 | 「父」という意味のラテン語 “pater” |
類義語 | 支援者 後援者など |
対義語 | 被保護者 |
このページの目次
「パトロン」の意味
自分の金銭や影響力を利用して支援を行う特権者や資産家
例:彼はパトロンからの支援によって活動している。
パトロンが支援する対象にはさまざまなものがありますが、主に以下のような意味で使われます。
- 芸術家や芸能人を支援して後ろ盾になる人
- 異性への経済的な援助を行い、生活の面倒をみる人
- 自らの資産や影響力を利用して団体や企業を支援する人
意味➀:芸術家や芸能人を支援して後ろ盾になる人
➀の意味では、芸術家や芸能人、デザイナーや歌手、伝統工芸を継ぐ技術者などの限定的な職業に就く個人を支援する人がパトロンです。
上記の職業では、個人の才能やセンスによって作品を生み出します。
そのような「その人でなければ意味がない」という職種で、才能に惚れ込んだ個人を支援する人がパトロンです。
意味➁:異性への経済的な援助を行い、生活の面倒をみる人
パトロンは、異性への経済的な援助を行い、生活の面倒をみる人という意味で使われることがあります。
この場合、若い女性に対して男性が支援を行っている関係性を表す場合が多いです。
パトロンが支援する対象から「労働」という形で見返りを受けていないことがポイントです。
労働という対価を支払っている場合には、パトロンではなく雇用主になってしまうからです。
意味➂:自らの資産や影響力を利用して団体や企業を支援する人
パトロンは、個人の異性や芸術家以外にも、団体や企業を支援する人を表すことがあります。
パトロンというと金銭的な援助をする人というイメージが強いですが、実際は金銭以外の援助を行う人もパトロンと呼ぶことがあります。
具体的には、自身が持つ権力や影響力を利用して支援を行う人もパトロンに当たります。
現代における「パトロン」の意味
現代におけるパトロンの意味は、以前よりも広いものになっています。
- クラウドファンディングで資金援助をする人
- 非営利団体に大きな影響力を持つ人物
「パトロン」の歴史
パトロンは「芸術家を金銭的に支援する人」という意味のイメージが強いと思います。
これは、ルネサンス期の芸術活動をパトロンが支えて、芸術史に大きな影響を与えたからです。
ルネサンス期のイタリアでは、メディチ家という貴族の家系が芸術家への金銭的支援を行ったことが有名です。
また、イギリスではエリザベス朝から18世紀までの時代には王室や貴族が芸術家のパトロンになるなど、世界各地でパトロンという制度が見られました。
つまり、17世紀ごろまでの間、劇作家や芸術家、音楽家などは現代のように職業として成り立つものではなかったのです。
18世紀に市民階級に小説が広まったことで、文学者たちが自立しはじめて職業化の道を歩み始めました。
「パトロン」の使い方
パトロンは、「異性」「企業や団体」「芸術家」などの対象を支援することという意味で使われます。
文脈によってどの意味で使われているのかを判断する必要があります。
具体的な使い方を、例文と一緒に見ていきましょう。
- 彼女はパトロンがいるから、働かずとも生きていけるんだろう。
- 彼は30歳半ばで、パトロンから独立して芸術活動を始めた。
- 弊社のパトロンの機嫌を損ねることだけはしてはならない。
「パトロン」の語源
パトロンの語源は、「父」という意味のラテン語 “pater” です。
“pater” が「客に利益を与える者」という意味のラテン語 “patronus” (パトロヌス)に派生しました。
古代ローマには、地位の高いものとそうでない者が結ぶ庇護(ひごかんけい)関係が存在しました。
保護者的役割であるパトロヌスは、金銭や権力を用いて被保護者的役割であるクリエンテスを支援します。
両者の関係性が親子関係のように見えたことから、父という意味の言葉が由来となっています。
これが英語の “patron” になり、カタカナ語のパトロンに派生しました。
「パトロン」の類義語
パトロンには以下のような類義語があります。
- 支援者
力を貸して助ける人 - 後援者
物事などの後ろ盾となって援助する人 - パパ
若い異性を経済的に支援する男性 - 後ろ盾
陰にあって力を貸し、助けること - タニマチ
相撲界の隠語で、ひいきにしてくれる客のこと - スポンサー
後援者、広告主
「パパ」の意味
パパは、現代において若い異性を経済的に支援する男性のことを表す言葉です。
肉体的な関係や、食事をともにすることを見返りとして求められることが多いです。
支援を受ける人を現代でもパパと呼ぶのは、パトロンの語源がラテン語で「父」という意味を持っていることと重なりますね。
「パトロン」の関連語
パトロンには以下のような関連語があります。
- パトロネージュ
援助する行為そのもの - メセナ
文化活動や芸術活動を支援し保護すること
パトロナージュやパトロネージとも表記されます。
「メセナ」の意味
メセナは、「文化活動や芸術活動を支援し保護すること」という意味のフランス語です。
その中でも特に、個人が行う支援活動ではなく、企業が利益の一部を使用して行う支援活動を表します。
メセナには、以下の3つの方法があります。
- コンサートや展示会などの文化イベントを主催する
- 文化イベントに資金を提供して直接支援する
- 支援活動のための財団などを設立する
企業による支援活動なので、アーティストや芸術家個人に直接的に財政的支援を行うことは少ないです。
「パトロン」の対義語
パトロンには以下のような対義語があります。
- 被保護者
保護される側の人
「パトロン」の英語圏の意味
英語圏の “patron” には、カタカナ語の「パトロン」の意味の他にも多くの意味を持ちます。
- 図書館などの施設利用者
- 常連客・お得意様
- プロゴルフのマスターズ・トーナメントにおける観客やファン
- 北米のニュース会社における視聴者の会員や慈善事業家
- 官僚任命に関する権利を持つ政治指導者
上記のものとはかなり意味が異なりますが、「パトロン」という名前のテキーラが存在します。
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「パトロン」の女性版
パトロンは英語で “patron” になりますが、特に女性のパトロンのことは “patroness” (ペイトロネス)と表記します。
“patron” 男性を表す名詞であると厳密に決まっているわけではありませんが、 女性を表す “patroness” という単語がある以上、男女で使い分けるとよいでしょう。
パトロンのメリット・デメリット
芸術家の場合と、いわゆるパパ活のような異性のパトロンの場合に分けて、それぞれのメリットとデメリットを解説します。
メリット | デメリット | |
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芸術家のパトロン | 金銭面を気にせずに活動できる 芸術活動に専念できる | 作品に口を出される パトロンへの配慮が必要 |
異性のパトロン | 金銭的援助を得られる 人脈が広がる | 周囲からの偏見がある 危険な目に合う可能性がある |
「パトロン」のまとめ
以上、この記事ではパトロンについて解説しました。
英語表記 | パトロン(patron) |
---|---|
意味 | 自分の金銭や影響力を利用して支援を行う特権者や資産家 |
語源 | 「父」という意味のラテン語 “pater” |
類義語 | 支援者 後援者など |
対義語 | 被保護者 |
パトロンには、非常に多くの意味があることがわかりましたね。