今回ご紹介する言葉は、ことわざの「屋上屋を架す(おくじょうおくをかす)」です。
言葉の意味・使い方・由来・類義語・英語訳について分かりやすく解説します。
☆「屋上屋を架す」をざっくり言うと……
読み方 | 屋上屋を架す(おくじょうおくをかす) |
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意味 | 屋根の上に屋根を重ねるような、無意味なことのたとえ |
由来 | 古代中国の『世説新語』と『顔氏家訓』 |
類義語 | 川に水を運ぶ、雪上霜を加えるなど |
英語訳 | gild the lily(完成しているものに余計に手を加えること)など |
このページの目次
「屋上屋を架す」の意味をスッキリ理解!
「屋上屋を架す」の意味を詳しく
「屋上屋を架す」とは、無駄なことのたとえです。「屋上屋を重ねる」とも言います。「屋上屋」とは、「屋根の上の屋根」という意味です。
屋根が一つあれば十分雨風をしのげます。屋根が一つでも二つでも「雨風をしのぐ」という効果にはかわりがなく、2つめ、3つめの屋根はあっても意味がありません。
このように、重ねても意味がないのに重ねてしまうものは、日常生活で多く見受けられます。
たとえば、イベント会場でのビラ配りを考えてみましょう。最寄駅から会場までの間に、2人のスタッフを配置してビラを配るとします。駅に近い方のスタッフだけで十分にビラを配れるならば、2人目のスタッフがいる意味はあまりありません。
2人目のスタッフの前を通る人は、既にビラをもらっているか、ビラをもらううもりがないかのどちらかだからです。
このような無駄な行為を「屋上屋を架すような行為」と形容できます。
「屋上屋を架す」という言葉は、あくまでも「無駄なもののたとえ」です。実際に屋上に増築された建物を指す言葉ではありません。また、「念には念を入れる」といった良い意味で使われることもありません。
「屋上屋を架す」の使い方
- 表計算ソフトの計算結果を電卓で検算するのは、屋上屋を架す行為にすぎない。
- 菌やウイルスの侵入は防ぎきれないので、マスクの2枚重ねは、屋上屋を架すことだ。
- 郵便番号を書けば市町村名まで省略できるが、屋上屋を架すと言わずに書いた方が丁寧だろう。
「屋上屋を架す」の由来
「屋上屋を架す」は、古代中国の文章に出てくる言葉が由来です。漢が滅びた後の南北朝時代に書かれた二冊の本に出てきます。5世紀前半に劉義慶(りゅうぎけい)が編集した『世説新語(せせつしんご)』と、6世紀後半に顔之推(がん しすい)が書いた『顔氏家訓(がんしかくん)』です。
これらの本では、「屋下に屋を架す」という言い回しが使われています。どちらも、似たり寄ったりの思想書や作品を批判する意味で使われています。
「屋上」ではなく「屋下(おくか)」が、本来の言葉です。
しかし、これらの書物が日本で読まれるようになって、「屋下」が「屋上」に変わってことわざとして定着しました。
「屋上屋を架す」の類義語
「屋上屋を架す」には、以下のような類義語があります。
- 川に水を運ぶ
- 泥裏(でいり)に土塊(どかい)を洗う:泥水で土の塊を洗うことのたとえ
- 雪上霜(せつじょうしも)を加える:雪の上に霜がおりることのたとえ
無駄なもののたとえは色々とありますね。
「屋上屋を架す」の英語訳
「屋上屋を架す」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- gild the lily
(完成しているものに余計に手を加える:シェイクスピアの一節から) - a fifth wheel
(馬車の5つ目の車輪のように、無駄なものや居場所がないもののたとえ)
a fifth wheel は “a third wheel” とも言います。デートについてくる3人目の人のような「邪魔者」を表す意味もあるそうです。
まとめ
以上、この記事では「屋上屋を架す」について解説しました。
読み方 | 屋上屋を架す(おくじょうおくをかす) |
---|---|
意味 | 屋根の上に屋根を重ねるような、無意味なことのたとえ |
由来 | 古代中国の『世説新語』と『顔氏家訓』 |
類義語 | 川に水を運ぶ、雪上霜を加えるなど |
英語訳 | gild the lily(完成しているものに余計に手を加えること)など |
念のためにあえて重複させておくことに意味があるものもあれば、まったくもって無駄なものもあります。「屋上屋を架す」ことのないよう、物事が本当に必要か見分けるのが大事でしょう。