今回ご紹介する言葉は、四字熟語の「悪木盗泉(あくぼくとうせん)」です。
言葉の意味、使い方、由来、類義語、英語訳について分かりやすく解説します。
☆「悪木盗泉」をざっくり言うと……
読み方 | 悪木盗泉(あくぼくとうせん) |
---|---|
意味 | たとえ困窮しても、わずかな悪事にも身を近づけないことの例え |
由来 | 中国の古書『文選』から |
類義語 | 瓜田李下 |
英語訳 | The eagle does not catch flies.(鷲はハエを捕まえない)、A virtuous person does (should) not commit an act that offends his moral principles no matter how hard pressed he may be.(美徳ある人物は、どんなに切迫しても道徳に背くような行いはしない) |
「悪木盗泉」の意味をスッキリ理解!
「悪木盗泉」の意味を詳しく
「悪木盗泉」とは、「たとえ困窮しても、わずかな悪事にも身を近づけないことの例え」を表す四字熟語です。
ここから、「どんなに苦痛でも正しく生きていかなければならない」「少しでも、疑われるような行動はとってはいけない」などの教訓的な意味が生まれました。
また、まったく反対の意味で、「悪いこと」「疑わしいこと」そのものを指す場合もあります。文脈から読み取る必要があるので、注意しましょう。
「悪木盗泉」の使い方
- アリバイがないので、悪木盗泉で警察から疑われてしまった。
- 悪木盗泉の心構えで、仕事に取り組む。
- 悪木盗泉は、人として基本である。
- 彼は、身の回りの誘惑に打ち勝ち、悪木盗泉を徹底している。
➊では、「悪木盗泉」が「疑わしいこと」というマイナスの意味で使われています。
➋➌➍では、「悪事を寄せ付けない」という教訓的な意味で使われています。
「悪木盗泉」の由来
「悪木盗泉」の出典は、中国の古書である『文選』です。「猛虎行(もうここう)」という詩に登場する言葉です。「猛虎行」の作者である陸機(りくき)は、3世紀の中国で活躍した政治家・文学者でした。
「猛虎行」は、孔子についての詩です。
孔子が、山東省を旅していた時に「盗泉」という名前の泉のそばを通りかかりました。孔子は、のどが非常に渇いていましたが、この泉の水を決して飲みませんでした。
「盗泉」という名前を嫌ったためです。「盗泉」という良くない名前のついた泉の水を飲むだけでも、身が汚れるとして飲もうとしなかったのです。
また、「悪木」とは、「役に立たない木」のことを指します。具体的には、悪臭を出したり、刺(とげ)があるために人を傷つけたりする木のことです。
孔子は、このような「悪木」も嫌ったため、どんなに暑くて疲れていても、「悪木」の下では絶対に休憩を取らなかったのです。
ちなみに、原文は「渇不飲盗泉水」「熱不息悪木陰」です。
「渇すれど盗泉の水を飲まず」という言い方をすることもありますが、意味は同じです。
「悪木盗泉」の類義語
「悪木盗泉」には以下のような類義語があります。
- 瓜田李下(かでんりか):他人に疑われるような言動は慎むべきという戒めの語
「瓜田李下」について説明します。「瓜田」は、そのまま「瓜(うり)の畑」という意味です。「李下」とは、「すももの木の下」という意味です。
別の言い方では「李下に冠を正さず、瓜田に履を入れず」とも言います。
すももの木の下で冠の位置を直すと、すももを盗んでいるのではないかと疑われてしまいます。また、瓜畑で履物を履きなおすと、足元にある瓜を盗んでいるのではないかと疑われてしまいます。
このような、「少しでも疑われるような行為は慎むべき」という意味の語句です。
「悪木盗泉」の英語訳
「悪木盗泉」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- The eagle does not catch flies.
(鷲はハエを捕まえない) - Better to be beaten than be in bad company.
(悪い奴の仲間入りをするくらいなら殴られるほうがましだ) - A virtuous person does (should) not commit an act that offends his moral principles no matter how hard pressed he may be.
(美徳ある人物は、どんなに切迫しても道徳に背くような行いはしない)
“The eagle does not catch flies.” は、日本のことわざで言うと、「鷹は飢えても穂を摘まず」となります。
「鷹はプライドが高いので、どれだけ飢えても人間が作った稲穂は食べない」と言われていたことから、「節操のある人は、どんなに貧窮したとしても、不正な金品を受け取ったりしない」という意味になりました。
実際には、鷹が稲穂を食べないのは、鷹が肉食動物であるからです。
これと同様に、「鷲はどれほど飢えても、汚いハエなどの虫は食べない」という意味から、「正義を守る人は、どんなに生活に窮しても、不正なことには手を出さない」という意味に転じました。
まとめ
以上、この記事では「悪木盗泉」について解説しました。
読み方 | 悪木盗泉(あくぼくとうせん) |
---|---|
意味 | たとえ困窮しても、わずかな悪事にも身を近づけないことの例え |
由来 | 中国の古書『文選』から |
類義語 | 瓜田李下 |
英語訳 | The eagle does not catch flies.(鷲はハエを捕まえない)、A virtuous person does (should) not commit an act that offends his moral principles no matter how hard pressed he may be.(美徳ある人物は、どんなに切迫しても道徳に背くような行いはしない) |
「悪木盗泉」はあまり一般的ではない四字熟語ですが、教訓になる言葉です。
この機会に使いこなせるようになりましょう。