今回ご紹介する言葉は、ことわざの「嘘(うそ)も方便(ほうべん)」です。
言葉の意味や使い方・由来・類義語・対義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「嘘も方便」をざっくり言うと……
読み方 | 嘘(うそ)も方便(ほうべん) |
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意味 | 嘘をつくこと自体は悪いことだが、時と場合によっては多少の嘘は必要であるということ |
由来 | 仏様も嘘をつくことがあるという言い伝えから |
類義語 | 嘘をつかねば仏になれぬ、嘘つき世渡り上手、嘘も誠も話の手管など |
対義語 | 噓つきは泥棒の始まり、嘘と盗みは互いに隣同士、嘘は盗人の始まりなど |
英語訳 | The end justifies the means.(目的は手段を正当化する。) |
このページの目次
「嘘も方便」の意味をスッキリ理解!
「嘘も方便」の意味を詳しく
「嘘も方便」とは、嘘をつくこと自体は悪いことだが、時と場合によっては多少の嘘は必要であるということを意味することわざです。
このことわざは、限定的に嘘をつくことを肯定していることわざです。一般的に、嘘をつくことは良くないこととされています。このことわざも、その一般的な共通認識を前提としています。
「嘘も方便」ということわざにおいて、嘘をつくことをに肯定する場面は主に二つが挙げられます。
一つは、嘘をつくことで他人を助けることができる場合です。つまり、「人のための嘘」です。
例えば、会社の上司が手作りの料理を会社に持ってきたものの、それがまずかった場合です。ここで正直に「まずいです」と言うと、上司の面目をつぶすことになります。逆に、たとえ嘘であったとしても「美味しいです」と言うのは上司のためになります。
このような場面は、「嘘も方便」であり、嘘をつくことが必要であると言えます。
二つ目は、嘘をつくことでしか物事を円滑に進めることができない場合です。
例えば、担当者が外国人である、自社の取引先に、失敗は許されない営業に行く場合を考えます。自分自身、1年間留学を経験しており、多少の英語力はあります。しかし、ビジネスで英語を用いたことが無く、自信はありません。
ここで正直に「1年間留学をしていたこと」を言ってしまうと、一人で営業先に行くことになるかもしれません。しかし、ここで嘘をつき、留学には行っていないという設定にすれば、通訳や、英語が堪能(たんのう)な同僚と一緒に行くことができるかもしれません。
このように、嘘をつくことでのみ良い結果が得られる場合も「嘘も方便」の一例です。
しかし、前述したように、嘘をつくことを完全に肯定したことわざではありません。したがって、自分の都合のいいような嘘をつくのは「嘘も方便」ではありません。
あくまでもこのことわざにおいては、人のための嘘、物事を円滑に進めるために必要な嘘に限定されるので注意が必要です。
「嘘も方便」の使い方
- 彼女の新しい髪形は正直似合っていないが、彼女は満足げなので嘘も方便、似合っていると言っておいた。
- 私は取引先の人が好きな野球チームのライバルチームのファンだ。しかし、嘘も方便、自分も同じチームが好きだということにしておいた。
- 本来は営業日である2日間、店の従業員全員で旅行をする。評判にも関わるので、嘘も方便、照明設備の点検のため臨時休業ということにした。
➀の例文の嘘は、彼女のことを思った結果の行動であり、「嘘も方便」であると言えます。
➁の例文は、取引先のことを気遣うべき場面であり、さらには営業の結果にも左右する場面です。したがって、この例文における嘘は人のための嘘でも、良い結果を得るために必要な嘘でもあります。
➂の例文についてですが、店の評判を落とさないためには、照明設備の点検で臨時休業という嘘をつくことが賢明であると考えられます。したがって、この嘘は良い結果を得るために必要な嘘です。
「嘘も方便」の由来
「嘘も方便」の由来は、仏教です。「仏でも、悟りに到達するためや衆生(※1)を救うためには嘘をつくことがある」という言い伝えが元になり、現在のようなことわざになったと言われています。
ちなみに、「方便」は仏教用語です。悟りに到達するための手段や、衆生を救うための方法のことを指します。
- 衆生(※1):全ての生き物、特に迷いの状態にある生き物のこと
「嘘も方便」の類義語
「嘘も方便」には以下のような類義語があります。
- 嘘をつかねば仏になれぬ:仏様でも場合によって嘘をつくので、人間が嘘をつくのは当然だということ
- 嘘つき世渡り上手:嘘をつく人ほど世渡りが上手いということ
- 嘘も誠も話の手管(てくだ):嘘と事実を織り交ぜて使うのが上手い話し方だということ
- 嘘は世の宝:嘘は生きていくうえで必要不可欠なものであるということ
- 嘘も重宝:嘘は生きていくうえで必要不可欠なものであるということ
- 嘘も追従(ついしょう)も世渡り:上手く世渡りするためには嘘やお世辞も必要であるということ
「手管」とは、人をだましたり操ったりする手段のことです。「追従」とは、お世辞のことを指します。
「嘘も方便」の対義語
「嘘も方便」には以下のような対義語があります。
- 噓つきは泥棒(どろぼう)の始まり:平気で嘘をつくようになると、やがて盗みも平気でするようになるということ
- 嘘と盗みは互(たが)いに隣同士:嘘と盗みは紙一重(かみひとえ)の存在であるということ
- 嘘は盗人の始まり:平気で嘘をつくようになると、やがて盗みも平気でするようになるということ
- 嘘は盗みの基(もと):平気で嘘をつくようになると、やがて盗みも平気でするようになるということ
- 嘘は盗人の苗代(なえしろ):平気で嘘をつくようになると、やがて盗みも平気でするようになるということ
- 嘘を言うと閻魔様(えんまさま)に舌を抜かれる:嘘をつくと地獄に落ち、閻魔大王に嘘をつく悪い舌を抜かれるということ
- 嘘を言えば地獄へ行く:嘘をつくと地獄に落ちるということ
- 嘘をつくと腹に竹が生える:嘘をつくと腹に竹が生えるので良くないということ
- 正直は一生の宝:正直は一生大切に守るべき宝だということ
「嘘も方便」の英語訳
「嘘も方便」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- The end justifies the means.
(目的は手段を正当化する。) - A lie does good how little a while soever it be believed.
(嘘は信じられる時間がどんなに短かったとしても役に立つものだ。) - He that cannot dissemble know not how to live.
(偽ることができない人は生き方を知らない人である。) - A lie is often expedient.
(嘘はしばしば好都合なものである。) - Sometimes it’s necessary to fib a little.
(時には些細な嘘も必要だ。)
まとめ
以上、この記事では「嘘も方便」について解説しました。
読み方 | 嘘(うそ)も方便(ほうべん) |
---|---|
意味 | 嘘をつくこと自体は悪いことだが、時と場合によっては多少の嘘は必要であるということ |
由来 | 仏様も嘘をつくことがあるという言い伝えから |
類義語 | 嘘をつかねば仏になれぬ、嘘つき世渡り上手、嘘も誠も話の手管など |
対義語 | 噓つきは泥棒の始まり、嘘と盗みは互いに隣同士、嘘は盗人の始まりなど |
英語訳 | The end justifies the means.(目的は手段を正当化する。) |
「嘘も方便」の意味や使い方など理解することはできたでしょうか。嘘を肯定していることわざであるというイメージが強く持たれがちですが、決してそういうわけではありません。
あくまでも嘘は良くないことだという前提の上で、時と場合によっては嘘も必要であるという意味合いです。
また、本文でも触れたように、嘘が必要だとされる場面は「人のためのもの」「良い結果を得るための最終手段」の二つに限定されています。この点にも注意が必要なことわざです。