今回ご紹介する言葉は、四字熟語の「和光同塵(わこうどうじん)」です。
言葉の意味・使い方・由来・類義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「和光同塵」をざっくり言うと……
読み方 | 和光同塵(わこうどうじん) |
---|---|
意味 | 自分の才能や徳を隠し、俗世で目立たないように暮らすこと |
由来 | 『老子』の「四章」より |
類義語 | 大智如愚、韜光晦迹、内清外濁など |
英語訳 | mingling with the world by hiding one’s true talent or knowledge(個人の本当の才能や知識を隠すことで、世間と一緒になる)など |
「和光同塵」の意味をスッキリ理解!
「和光同塵」の意味を詳しく
「和光同塵」は「和光」と「同塵」の二つの熟語から成り立っています。
「和光」は、光を和らげることです。つまり、「才能や徳を目立たないようにして隠すこと」を意味しています。
「同塵」の塵は、「ちり」と訓読みすることができます。ここでは俗世間のことを指しています。つまり、同塵とは、「俗世間に合わせる」という意味です。
また、「和光同塵」は「光を和らげ、塵に同ず」と訓読することができます。したがって、「和光同塵」は、自分の才能や徳を隠し、俗世で目立たないように暮らすことという意味を表し四字熟語なのです。
仏教でも「和光同塵」という言葉を使用します。この場合、仏や菩薩が、仏教の教えを受け入れられない人間を救うために、本来の姿を隠して人間界に現れることを言います。
なお、「和光同人」と表記することは誤りです。注意しましょう。
「和光同塵」の使い方
- 彼はとても才能があるのにも関わらず、それをひけらかすことをしないので、まさに和光同塵である。
- 和光同塵、能力があろうと決しておごり高ぶってはならない。
- どんなに成功しようと、和光同塵の精神を忘れないよう心掛ける。
「和光同塵」の由来
古代中国の思想家である老子(ろうし)の教えを収めた書物があります。それは、『老子(ろうし)』または『老子道徳経(ろうしどうとくきょう)』と呼ばれるものです。
この書物の「四章」に、「和其光、同其塵」という一節があります。これは、「その光を和らげ、その塵を同じくす」と読み下すことができます。
つまり、「自分の光り輝く才能や知性を隠し、世の塵にまみれる」という意味です。このように、老子は「才能は、人にひけらかすものではない」という教えを説いていたのです。この文章が、「和光同塵」の由来です。
「和光同塵」の類義語
和光同塵には以下のような類義語があります。
- 大智如愚(だいちじょぐ):本当に知恵のある人は、その知識や才能を見せびらかさないため、一目見ただけでは愚かであるように見えること
- 韜光晦迹(とうこうかいせき):優れた才能などを人に気づかれないように包み隠すこと
- 内清外濁(ないせいがいだく):世俗とうまく付き合うために、心は清らかさを保っていながら、外見では汚れたふりをすること
- 被褐懐玉(ひかつかいぎょく):優れた才能を持っていても、それを表に出さないこと
- 能鷹隠爪(のうよういんそう):優れた人は、人前でむやみに自分の能力を誇示しないこと
- 和光垂迹(わこうすいじゃく):仏や菩薩が、仏教の教えを受け入れられない人間を救うために、本来の姿を隠して人間界に現れること
大智如愚は、「大智(だいち)は愚(ぐ)の如し(ごとし)」と読み下すことができます。
韜光晦迹は、「光を韜み(つつみ)、迹(あと)を晦ます(くらます)」と読み下すことができます。したがって、「才能を隠し、その痕跡を残さない」という意味になります。そこから転じて、上記の表の意味になるのです。
なお、熟語の順序を反対にして「晦迹韜光(かいせきとうこう)」と表記することもあります。
被褐懐玉の「褐」とは、古く汚れた服のことです。「被褐懐玉」は、「ぼろぼろな服を身にまとい、外見では粗末な格好に見えても、実は懐(ふところ)に宝玉を隠し持っている」という意味から転じた四字熟語です。
能鷹隠爪は、「能ある鷹は爪を隠す」ということわざと同義です。
すでに解説した通り、「和光同塵」は仏教の用語としても使われます。上記の5つの四字熟語のなかで、「和光垂迹」のみがこの用法として使われます。
「和光同塵」の英語訳
和光同塵を英語に訳すと、次のような表現になります。
- mingling with the world by hiding one’s true talent or knowledge
(個人の本当の才能や知識を隠すことで、世間と一緒になる) - living a quiet life by effacing oneself
(自分自身を消すことで、静かに生きる)
まとめ
以上、この記事では「和光同塵」について解説しました。
読み方 | 和光同塵(わこうどうじん) |
---|---|
意味 | 自分の才能や徳を隠し、俗世で目立たないように暮らすこと |
由来 | 『老子』の「四章」より |
類義語 | 大智如愚、韜光晦迹、内清外濁など |
英語訳 | mingling with the world by hiding one’s true talent or knowledge(個人の本当の才能や知識を隠すことで、世間と一緒になる)など |
いくら素晴らしい才能があったとしても、それをおごり高ぶるようなことをしては、その価値は低くなってしまいます。
見せびらかすことなく内に秘めることで、自身の才能を大切にしましょう。