「控除(こうじょ)」とは?意味や使い方を例文付きで解説

言葉

今回ご紹介する言葉は、熟語の「控除(こうじょ)」です。

言葉の意味・使い方・類義語・英語訳についてわかりやすく解説します。

☆「控除」をざっくり言うと……

読み方控除(こうじょ)
意味ある金額から一定の額を差し引くこと。主に税や社会保険料などに対して使う
類義語天引き、差し引く、減算
英語訳deduction(控除)

「控除」の意味をスッキリ理解!

控除(こうじょ):ある金額から一定の金額を差し引くこと

「控除」の意味を詳しく

「控除」とは、「金額を差し引くこと」という意味です。

支払うべき金額が減るだけではなく、もらう金額が減ることも意味します

金額を差し引くといっても、お店で売られている商品の値段が差し引かれることは「控除」とは言いません。その場合は「値引き」と表現します。

「控除」は、主に賃金や税金などの金額が差し引かれることに対して使われる言葉です。それぞれの場合で使われる「控除」の意味を、大まかに説明しましょう。

賃金の「控除」

賃金の収入(給料)から、所得税や住民税、社会保険料などの金額が差し引かれることを、控除と言います。普段は「天引き」と言われていますが、もともとは控除と言うのが正しいです。

賃金からの控除は、雇い主が行います。本来は働いている人が自分でやるべき納税を、雇い主が代わりに行っています。

賃金からの控除によって、労働者は納税や社会保険料の納付などを自分でする手間が省けます。そのうえ、国や地方自治体などにとっては、確実に納税されることで脱税や徴収漏れを防げます。

賃金から控除されるものには、国や地方自治体などに納めるものだけではなく、会社に支払うものも含まれます。たとえば、会社の寮や社宅に住んでいれば、家賃が控除されることもあります。

 

賃金から税や保険料が控除されて、実際に労働者の手元に支払われる金額を「手取り額」と言います。控除される前の金額ではなく、手取り額を自分の給料とみなす人が多いです。

年末調整と確定申告

通常、労働者は給料から所得税などが控除されてから支払われるため、自分で税金を納める手続きをする必要はありません。

しかし、自分でしなければならない手続きがあります。

 

一つ目は、「年末調整」です。これは、年末に所得税を調整する手続きです。所得税は、年収に応じて税率が変わります。より年収が高い人ほど、高い税率が課せられます。

毎月の給料からの控除額(天引き額)は、その年の年収の「見込み」に合わせた割合で決まります。しかし、年末になって「見込みの年収」と「実際の年収」がずれて、税率が変わる場合があります。

そのときに、年末調整が必要となります。年末調整によって、所得税を多く控除されることも、少なく控除されることもあります。

 

もう一つは、「確定申告」です。こちらは、年度末に自分で行います。副業をしている人や、複数の会社で働いている人などが行う必要があります。

一つの会社から一年にもらえる「見込み年収」よりも、副業や兼業の給料を合わせた「実際の年収」が多くなります。すると、所得税の税率が変わってくる可能性があります。

そのため、もらった給料と支払った税金の額をすべて合わせて、正確に所得税を納める必要があります。確定申告よって、追加で納税する必要が生じることも、支払いすぎた税金が返ってくることもあります。

税金の「控除」

本来支払うべき税額から、いくらかが支払わなくてよくなることを税の控除と言います。

様々な場合があるため、所得税の算出方法を例に考えてみます。

 

所得税は、年収に応じて段階的に税率が変わります。たくさん稼いでいる人ほど、たくさん税を納めるようにするためです。この制度を、「累進課税(るいしんかぜい)」と言います。

ただし、年収全体に対する割合でそのまま所得税率が決まるわけではありません。年収から、「計算の対象に入れない部分」を取り除いた「課税される所得金額」を算出して、その額に応じて所得税率を決めています。

 

このときの「課税されない所得金額」を「控除」と言います。たとえば、年収から38万円が一律に控除の対象となります。これを「基礎控除」と言います。たとえば年収が25万円の人は、基礎控除によって「課税される所得金額」が0円となるため、所得税を払う必要がありません。

また、家族の扶養(ふよう)を受けている人は、さらに65万円の「扶養控除」がつけ加わります。つまり、38 + 65 = 103万円が課税の対象から外れます。これはあくまでも所得税の場合で、年金や社会保険などの控除の金額は異なります。

また、配偶者控除・配偶者特別控除・勤労学生控除などさまざまな制度により、年収103万円を超えた分にも控除が適用されることもあるため注意してください。

 

こうした、「所得税の計算の対象に入れない」控除のほかに、所得税額の調整のための控除もあります。これを、「速算控除」と言います。速算控除の額は、所得税率に合わせて、つまり年収によって段階的に変わります。

たとえば、先ほど説明した控除を考えて計算された「課税される所得金額」が330万円を超えて695万円以下の人にかかる所得税率は20%です。ここから、427,500円がさらに控除されます。

たとえば、課税される所得金額が500万円の人は、5,000,000 × 0.2 – 427,500 = 572,500円が所得税額となります。

 

このように、所得税の控除には2種類の意味があります。整理してみましょう。

  • 所得税の計算に入れない控除:実際の年収から、控除額を引いて所得税率の計算をする
  • 速算控除:算出された税率による所得税から、さらに差し引いて支払う所得税額を決める

所得税の控除は、ほかにも様々なものがあります。

さらに、所得税以外の社会保険や住民税などに対しても、それぞれ様々な控除があります。

税を納めすぎて損をしたり、逆に納税額が足りなくて後から徴収されたりすることのないように、適切に情報を集めるのが大切です

「控除」の使い方

  1. 大学生の息子がアルバイトを頑張りすぎて、うっかり扶養控除から外れてしまった。
  2. 災害などで家財などが失われた分の金額は「雑損控除」が適用される。
  3. 障害者控除は、障害者を扶養する家族にも適用される。
このように、控除は主に「〇〇控除」という制度の名前の一部として使われます。また、ある金額が差し引かれることは、「控除する」「控除される」というように、動詞として使われることが多いです。

「控除」の類義語

「控除」には、以下のような類義語があります。

  • 天引き:給料から予め税金や社会保険料などを差し引いておくこと
  • 差し引く:天引きと同じ意味で使われる場合もある
  • 減算:ある金額を引くこと

天引きは本来「給与からの控除」と言いますが、一般には「天引き」と言います。天引きを指して、「年金が差し引かれている」などと言いますよね。

「控除」の英語訳

「控除」を英語に訳すと、 “deduction” になります。

“deduction” には数学の用語として、「演繹(えんえき)」という意味もあります。ある法則を個別の事例に適用させて結論を出すことです。

日本語では全く異なる言葉が使われている意味が、同じ単語で表されているのは面白いですよね。

まとめ

以上、この記事では「控除」について解説しました。

読み方控除(こうじょ)
意味ある金額から一定の額を差し引くこと。主に税や社会保険料などに対して使う
類義語天引き、差し引く、減算
英語訳deduction(控除)

税や社会保険料の控除は、多くの人が直面する調整工程でしょう。言葉の意味を抑えておくことで、理解の助けとなるかもしれません。