ペルソナとは「商品やサービスなどの典型的なユーザー像」という意味です。
現在はマーケティング分野でよく見かける単語ですが、心理学や、遡るとキリスト教などでもよく使われている単語です。
また、マーケティング分野でも「ペルソナという概念は意味がない」と主張する人もいたり、現在何かと話題になっている概念のため、正確な意味が気になる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、分野ごとのペルソナの意味や、ペルソナの立て方、ペルソナを立てるメリットやデメリットなどを紹介します。
このページの目次
「ペルソナ」の意味
- (マーケティングで)商品やサービスなどの典型的なユーザー像
- 人、人格
- (劇・小説などで)登場人物、または語り手
- (キリスト教で)唯一神が父と子と聖霊の3つの存在様式を持つこと
- (心理学で)社会的・表面的人格
- (美術で)人体、人体像
例:ペルソナを具体的にイメージしておくことで、より良い商品が作れる。
現在はペルソナと言うと①の「商品やサービスなどの典型的なユーザー像」をイメージすることが多いです。
①と③〜⑥までの全ての意味は②の「人、人格」という意味とつながっており、②の意味が分野ごとに派生してそれぞれの使われ方になっていきました。
それぞれの意味を、詳しく見ていきましょう。
意味①:商品やサービスなどの典型的なユーザー像
1つめの意味は、「商品やサービスなどの典型的なユーザー像」です。
これは主にマーケティングの分野でよく使われる使い方です。
ペルソナを立てる際は、氏名や年代、性別に限らず、趣味や住所、ライフスタイルまで含めて、まるで実際にそういう顧客が存在しているかのような人物像を設定します。
たとえば、音楽のサブスクリプション会社が自社の顧客のペルソナを立てるとしたら、以下のようになります。
- 山口実悠
- 20代前半の大学生
- 多摩市に住んでいる
通学時間が長いため音楽をよく聴く - 薄めの茶髪をボブにしている
- 服はいわゆる女子大生風からちょっとボーイッシュまで
- 大学にはそこそこ行っている
- サークルはゆるい軽音サークル
- バイト(居酒屋)に熱心
稼いだお金でイヤホンやギターを買っている - 何事も効率よくやりたい
大学も推薦で早く合格した - 休日は友達と遊ぶか推しバンドのライブ
現在で「ペルソナ」と言う場合は、ほぼこの意味で使われています。
近年は、マーケティングの場で「ペルソナはもう古い」と言われるようになりました。
理由は、デジタルマーケティングの高度化により、ユーザー一人一人の属性に合わせたリアルタイムなマーケティングができるようになったからというものです。
しかし、そもそもの企画/製品作りや、マーケティングのマクロの戦略を立てるときには、ペルソナが今も重宝されています。
意味②:人、人格
2つめの意味は、「人、人格」です。
ペルソナと似た単語に、英語の “person(人)” があります。
そこからイメージされる通り、ペルソナにも「人、人格」という意味があります。
どの分野でも、細部は異なるものの、共通して「人、人格」という意味で使われているため、困ったらこの意味を思い出すと良いでしょう。
意味③:登場人物、または語り手
3つめの意味は、「登場人物、または語り手像」です。
こちらは劇や小説などにおける意味です。
登場人物だけでなく、語り手のこともペルソナと呼ぶことに注目です。
意味④:唯一神が父と子と聖霊の3つの存在様式を持つこと
4つめの意味は、「唯一神が父と子と聖霊の3つの存在様式を持つこと」です。
キリスト教には「三位一体」という概念があり、父(神)と子(キリスト)と聖霊は全て同じものであり、形態が変わっただけのものだと考えられています。
このことを「三つのペルソナ、一つの本質」という言葉で表します。
「位格」「格身」などの訳語で表されることもあります。
意味⑤:社会的・表面的人格
5つめの意味は、「社会的・表面的人格」です。
こちらは心理学でよく使われる意味です。
精神医学者のユングが定義した概念で、彼は「人間の外的側面」や「自分の内面に潜む自分」ををペルソナと呼びました。
意味⑥:人体、人体像
6つめの意味は、「人体、人体像」です。
こちらは美術分野においてよく使われる意味です。
「ペルソナ」の使い方
ペルソナの使い方を、意味ごとに説明します。
使い方①:商品やサービスなどの典型的なユーザー像
ここでは、ペルソナは、以下のように使われます。
このように、ペルソナは「具体的なユーザー像」というニュアンスで使われます。
他には以下のような例文があります。
- 企画のペルソナがしっかりしていると、広報戦略が立てやすい。
- 製品作りでもサービス作りでも、ペルソナ立ては大切だ。
- ペルソナを作るのは大切だが、細部を詰めるには時間がかかる。
使い方②:人、人格
「人、人格」の意味では、ペルソナは、以下のように使われます。
- 彼のペルソナはとても素敵だ。
- 良いペルソナであろうとするのは難しいことだ。
むしろ「人格」の方が有名な単語であるため、特定の狙いがある場合以外は、「人格」と言い換えると良いでしょう。
使い方③:登場人物、または語り手
「登場人物、または語り手」の意味では、ペルソナは、以下のように使われます。
- 使用したいペルソナを選択してください。
- 彼のペルソナが小説中でいい働きをしている。
- 語り手のペルソナも含めて、よく練られた小説だ。
こちらも、特段ペルソナという言葉を使いたい理由がなければ「キャラクター」と言い換えた方が伝わりやすいです。
使い方④:唯一神が父と子と聖霊の3つの存在様式を持つこと
キリスト教では、ペルソナは、以下のように使われます。
- 唯一神はキリストというペルソナで地上に現れた。
- ペルソナは異なるが、御父(みちち)、御子(みこ)、そして聖霊の本質は全て唯一神である。
- 三位一体とは、唯一神が3つのペルソナを持ちながらも、本質が1つであることを表した言葉だ。
三位一体とは、古代キリスト教からある概念です。
唯一神は1つであるが、形は「御父」「御子(キリスト)」「聖霊」の3つの形をとって地上に現れるという概念です。
逆に言えば、3つの形をとっていてもその本質は1つであり、唯一神である、という概念とも言い換えることができます。
また、そのことから「私たちは形は違えど1つである」ということを表す四字熟語としても使われています。
使い方⑤:社会的・表面的人格
「社会的・表面的人格」の意味では、ペルソナは、以下のように使われます。
- SNS社会になって、人々はよりさまざまなペルソナを持つようになった。
- 誰しも自分の外的側面と内的側面という2つのペルソナを持っている。
- ペルソナを使い分けることが悪いこととは言えない。
使い方⑥:人体、人体像
「人体、人体像」の意味では、ペルソナは、以下のように使われます。
- クロッキーでは、ペルソナを素早く写しとる能力が必要だ。
「ペルソナ」の語源
ペルソナの語源はラテン語の “persona” です。
“persona” はもともとは古典劇において「仮面」を意味する言葉でした。
これがユングによって「人間の外的な側面」を意味する単語として定義づけられました。
今では、マーケティングなどの分野においてこの考え方が発展していき、「架空のユーザー像」という意味で使われるようになりました。
「ペルソナ」の類義語
ペルソナには以下のような類義語があります。
- ターゲット
商品やサービスなどが対象としている層
「ターゲット」と「ペルソナ」の違い
ターゲットとペルソナには、以下の違いがあります。
- ターゲット
大まかな顧客の層のことを指す - ペルソナ
具体的なユーザー像のことを指す
- ターゲット
それぞれ、使われる場面などが異なります。以下の通りです。
ターゲット | ペルソナ | |
---|---|---|
情報の特徴 | 定量的(数字で測ることができる) | やや定性的 |
使う場面 | ・広告を出すときの設定 ・メーリングリストなどの条件 | 企画や広告を考えるときの参考情報 |
ターゲットは、機械的に物事の処理をする際に便利です。
それに対し、ペルソナは、企画や広告の作成といった、製品そのものを作る際によく使われます。
「ペルソナ」を設定するメリット
ペルソナを設定するメリットは、以下の通りです。
- ユーザー像のイメージが共有しやすい
- ユーザー視点を具体的に思い描くことができる
- 時間やコストの削減ができる
- より魅力的な商品になる
メリット①:ユーザー像のイメージが共有しやすい
1つめのメリットは、「ユーザー像のイメージが共有しやすい」です。
企画や商品開発、そして広告には、さまざまな人が関わります。
関係者全員に明確にユーザー像を共有するためには、ペルソナが有効です。
たとえば、「顧客は50代男性」と言われただけでは、人によっては独身でお酒が大好きな人を思い浮かべるかもしれません。別の人は子どもがもう独り立ちし、夫婦で静かに過ごしている人を思い浮かべるでしょう。
しかし、「顧客は50代でバリバリ働いている。仕事が好きすぎた故に結婚は遅く、現在娘が10代で、学費や塾代などでお金がかかる」と言われたら、人物像が大きくぶれずにすみます。
メリット②:ユーザー視点の精度を高めることができる
2つめのメリットは、「ユーザー視点の精度を高めることができる」です。
明確なユーザー像があると、商品やサービスを手にしたユーザーの反応を具体的に思い描きやすくなります。
たとえば、現在売り出そうとしているスイーツがあるとして、「顧客は30代女性」という曖昧な状態では、そのスイーツを好むかどうかのイメージがつきにくいです。
しかし、「顧客は30代女性OL、朝ごはんは毎日ホットケーキを食べている。甘いものは好きだがダイエット中」というペルソナがあれば、今のスイーツがその顧客に好まれるかどうかの判断がしやすくなります。
メリット③:時間やコストの削減ができる
3つめのメリットは、「時間やコストの削減ができる」です。
①とも関係がありますが、商品やサービスを作る際にはさまざまな人間が関わります。
関係者が全員共通のイメージを持っていないと、各工程で無駄な試行錯誤が発生してしまいます。
逆に、ペルソナを使って共通のイメージをしっかりと持っておくことで、作業時間やコストを削減することができます。
メリット④:より魅力的な商品になる
4つめのメリットは、「より魅力的な商品になる」です。
ペルソナを設定して、具体的なユーザー像を思い描くことで、そのような特徴を持つ消費者のニーズをしっかりとらえた商品を作ることができます。
「ペルソナ」を設定するデメリット
ペルソナを設定するデメリットは、以下の通りです。
- 作成に時間がかかる
- 場合によっては複数のペルソナが必要
デメリット①:作成に時間がかかる
1つめのデメリットは、「作成に時間がかかる」です。
ペルソナは、ターゲットよりもとても細かい情報までイメージして作ります。
正確に顧客像を思い描こうとする場合、実際にユーザーから情報を集めたり、これまでのデータを整理し直したりといった作業が必要であり、時間がかかります。
デメリット②:場合によっては複数のペルソナが必要
2つめのデメリットは、「場合によっては複数のペルソナが必要」です。
動画視聴サイトなど、多くの人がターゲットになるようなサービスの場合、ユーザー像を正しく思い描くためには複数のペルソナが必要です。
たとえば、YouTubeのペルソナは「20代女性で、通学時間によく動画を見る」以外にも「30代男性で、在宅仕事後に動物の動画を見るのが趣味」「50代女性で、家事の最中に好きなアイドルの動画を見る」なども挙げられます。
これら複数のペルソナを一つずつ作るのには、さらに時間がかかります。
「ペルソナ」の設定方法
ペルソナの設定方法は、以下の2パターンに分かれます。
- BtoCビジネス(顧客に対するビジネス)の場合
- BtoBビジネス(企業に対するビジネス)の場合
BtoCビジネスの場合
BtoCビジネスの場合、たとえば以下の項目を満たすようにペルソナを作ります。
- 氏名
- 性別
- 生年月日/年齢
- 出身地
- 居住地
- 学歴
- 職歴/現在の職業
- 職種/役職
- 年収
- 価値観
- 家族構成
- 生活パターン
- 趣味
- よく使うSNS
- 商品にまつわる現在の悩み
- 悩みを解決してどうなりたいか
- 商品を知ったきっかけ/検索キーワード
- 商品に興味をもった理由
- 購入までの行動の流れ
- 購入を決定した理由
- 今後期待すること
サービスの例 | 製品販売 (ワイシャツ) | 音楽サブスク | カフェ |
---|---|---|---|
氏名 | 佐藤翔太 | 田中凛 | 鈴木彩音 |
性別 | 男 | 女 | 女 |
生年月日/ 年齢 | 1985年8月17日/36歳 | 2000年9月6日/21歳 | 1993年2月10日/29歳 |
出身地 | 秋田県 | 埼玉県 | 東京都 |
居住地 | 愛知県 | 埼玉県 | 東京都 |
最終学歴 | 大学院卒 | 大学在学中 | 短大卒 |
職歴/現在の職業 | 自動車メーカーの設計開発 | 学生/飲食店バイト | 都内企業の事務 |
職種/役職 | 課長 | バイト | 事務 |
年収 | 600万程度 | 80万程度 | 300万程度 |
価値観 | 質の良いものが一番 | 今を全力で楽しみたい | 穏やかな日々が一番 |
家族構成 | 妻(37歳)、娘(7歳) | 父(48歳)、母(45歳)、兄(25歳) | 母(49歳) |
生活パターン | 単身赴任 起きて仕事して帰って寝る | 大学行ってバイト行くか遊ぶ | 仕事してカフェで一息ついて帰る |
趣味 | 娘の写真を見る、機械いじり | 歌を歌う(軽音部) | 紅茶の飲み比べ |
よく使うSNS | Instagram、Tiktok | ||
商品にまつわる現在の悩み | アイロンをかける暇がない | いつも似た音楽ばかり聴いてしまう | 紅茶について知識がない |
悩みを解決してどうなりたいか | 干したワイシャツをすぐ使いたい | いろんな音楽に詳しくなりたい | いろんな紅茶に詳しくなりたい |
商品を知ったきっかけ | 同僚に勧められた | 新規サービスのため未設定 | 会社の帰り道にふと立ち寄った |
興味を持った理由 | ちょうどその悩みを持っていたから | 紅茶の匂いに惹かれて | |
購入までの行動の流れ | 実際に店舗で触ってみてすぐ購入 | 紅茶の説明とテイスティングが詳しく、リピート利用 | |
購入を決定した理由 | 肌触りがよくしっかりしていたから | ||
今後期待すること | 乾きが早くなること | 混雑が解消されていてほしい |
BtoBビジネスの場合
BtoBビジネスの場合は、企業の属性と担当者の属性の両方を踏まえながらペルソナを作る必要があります。手順は以下の通りです。
- 企業の属性を定義する
- 担当者の属性を定義する
- 担当者のペルソナを具体化する
- ①〜③をまとめる
①:企業の属性を定義する
まずは企業の属性について定義します。以下の点を設定します。
- 業種・事業内容
- 企業規模
- 売上高
- 資本金
- 従業員数
②:担当者の属性を定義する
次に、担当者の属性について定義します。以下の点を設定します。
- 役職
- サービス導入に関する決定権
- 部署/部署人数
- 性別
- 年齢
- 仕事で大切にしていること
- 情報収集に使っているメディア
③:担当者のペルソナを具体化する
その後、企業の属性と担当者の属性を踏まえて、担当者のペルソナを具体化します。
BtoBサービスの場合は、以下の点が大切になります。
- 主な業務内容
- 仕事において達成すべき事柄
- 抱えている課題
- サービスの理解度
- どういった点に惹かれるか
- 意思決定のきっかけ
- 情報収集に使っているメディア
④:①〜③をまとめる
最後に、①〜③で得た情報をまとめ、氏名や顔写真のイメージなどをつけて完成です。
氏名や顔写真は必須ではありませんが、具体的に担当者の像をイメージする手助けになるため、つけた方が良いでしょう。
BtoCサービスに比べ、より業務寄りのペルソナが完成するのが特徴です。
「ペルソナ」を設定する際の注意点
ペルソナを設定する際の注意点は、以下の通りです。
- 思い込みや先入観を反映しない
- 必要な情報に絞る
- 関係者がイメージしやすいように作る
- 身近にいそうな人や実際の顧客を参考に作る
- 作ったあとも改善を続ける
注意点①:思い込みや先入観を反映しない
1つめの注意点は、「思い込みや先入観を反映しない」です。
ペルソナを作るとき、どうしても作る人のイメージや希望が反映されてしまうことがあります。
しかし、そうすると実際のユーザー像からは離れてしまいます。特にすでにリリースしているサービスなどであれば、より注意が必要です。
それを避けるためには、SNSなどの口コミやユーザーインタビューなどでデータを取り入れながらペルソナを作りましょう。
注意点②:必要な情報に絞る
2つめの注意点は、「必要な情報に絞る」です。
ペルソナにはどうしてもたくさんの情報を盛り込みたくなりますが、そうするとかえってわかりにくくなることがあります。
あくまで架空のユーザー像をイメージしやすくなるために必要な情報を揃えるという観点で取捨選択しましょう。
注意点③:関係者がイメージしやすいように作る
3つめの注意点は、「関係者がイメージしやすいように作る」です。
ペルソナは関係者が同じイメージを持つために作るものであるため、逆に言うと、共通のイメージが持てないと作った意味がなくなってしまいます。
必要に応じて、写真や動画、イラストなども使いましょう。
注意点④:身近にいそうな人や実際の顧客を参考に作る
4つめの注意点は、「身近にいそうな人や実際の顧客を参考に作る」です。
たとえユーザーの中にそういった人がいたとしても、あまりにも現実離れしているペルソナを作ってしまうと、関係者がイメージを持つことが難しくなります。
そのため、ペルソナを作る際は、身近な人を参考に作りましょう。
また、すでにリリースしたサービスであれば、実際の顧客の中から平均的なユーザー像をイメージしていくことも大切です。
注意点⑤:作ったあとも改善を続ける
5つめの注意点は、「作ったあとも改善を続ける」です。
ペルソナは、以下の理由で、実際のユーザーとずれが出ることがあります。
- そもそも実際のユーザーとずれがあった
- サービスの普及や改善に伴いユーザーが変わっていった
- 社会の環境変化に伴いユーザーが変わっていった
「ペルソナ」のまとめ
以上、この記事ではペルソナについて解説しました。
英語表記 | ペルソナ(persona) |
---|---|
意味 | 商品やサービスなどの典型的なユーザー像 など |
語源 | ラテン語の “persona” |
類義語 | ターゲット |
ペルソナのメリットやデメリット、立て方なども押さえておきましょう。