今回ご紹介する言葉は、熟語の「不退転(ふたいてん)」です。
言葉の意味・使い方・語源・類義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「不退転」をざっくり言うと……
読み方 | 不退転(ふたいてん) |
---|---|
意味 | 信念を持ち、何事にも屈しないこと |
語源 | 仏教において、再び苦しむことのない状態となる「不退転地菩薩」という位から |
類義語 | 不撓、不抜 |
英語訳 | indomitable(不屈の)、grim(頑として動じない) |
「不退転」の意味をスッキリ理解!
「不退転」の意味を詳しく
「不退転」とは、「信念を持ち、何事にも屈しないこと」という意味です。
この熟語は、2つの部分に分けて考えると、意味がさらに分かりやすくなります。後半部分の「退転」という言葉には、「落ちぶれて他の地に移ること」や「中断すること」という意味があります。そこに、前の言葉の意味を否定する語である「不」が付いて「不退転」は構成されています。
「退転」の意味の反対にあたるのは、「一つの場所に留まること」や「続けること」です。
つまり「不退転」には、「どのような困難があっても、決して投げ出さずに一つの信念を持ち続ける」というニュアンスがあるのです。
「不退転」の使い方
「不退転」の使い方の例として、以下のような文が挙げられます。
- 今後の会社の命運を左右するであろう交渉を前に、社長は不退転の決意を固めた。
- その議員は不退転の覚悟で、選挙に立候補すると宣言した。
- 日本チームは先制点を許しながらも、不退転の意志で戦い続けた。
上記の例文のように、「不退転」は「不退転の~」という形でしか使われません。「~」には、「決意」や「覚悟」など、人の強い意志を表す言葉が入ります。
主に、政治家が選挙への立候補や新たな政策を始めることを宣言する際や、スポーツにおいて選手やチームが試合に向けた意気込みを語る際に用いられます。どちらも、強い意志を持ち続けていなければ、結果を出すことのできないものですよね。
また、「不退転」は日常的に多用すべき言葉ではありません。以上の解説にあるように「不退転」は「とても強い信念」を表しています。自分が「決して投げ出さない」という強い意志を見せることが必要な、ここぞという機会にのみ使うようにしましょう。
「不退転」の語源
「不退転」という言葉はもともと仏教用語で、「二度と欲望に染まって苦しむことのなくなる状態」のことを指します。
仏教では、修行を続けることで、現世の欲望に誘惑されないことを目指します。修行の段階ごとに位が設けられているのですが、「不退転地菩薩(ふたいてんちぼさつ)」という位まで達すると、再び欲望に苦しむことはなくなるとされています。
この「二度と以前の状態に後戻りしない」という仏教的な意味から転じて、「不退転」は「決して変わることのない信念」を表す言葉として用いられるようになったのです。
「不退転」の類義語
不退転には以下のような類義語があります。
- 不撓(ふとう):どのような困難にあっても屈しないこと
- 不抜(ふばつ):意志が強くて動揺しないこと
これらの熟語の意味は、「困難に出会っても、心がくじけないこと」を表すという点で「不退転」と共通しています。
どれも書き言葉としてや、演説などの改まった場面で用いられることが多い言葉です。
「不退転」の英語訳
不退転を英語に訳すと、次のような表現になります。
- indomitable
(不屈の) - grim
(頑として動じない)
「不退転」の意味を英語で表すには、indomitable や grim を用います。ちなみに、grim には「不愉快な」という意味もあるので注意しましょう。
例えば、「不退転の決意で~する」は、 “do ~ with indomitable resolve.” のように表現することができます。
より簡単な形で「不退転の意志」を持っていることを表すには、 “There is no second chance.” や “There is no going back.” といった表現が適切です。それぞれ直訳すると「二度目のチャンスはない」「後戻りはできない」という意味です。
まとめ
以上、この記事では「不退転」について解説しました。
読み方 | 不退転(ふたいてん) |
---|---|
意味 | 信念を持ち、何事にも屈しないこと |
語源 | 仏教において、再び苦しむことのない状態となる「不退転地菩薩」という位から |
類義語 | 不撓、不抜 |
英語訳 | indomitable(不屈の)、grim(頑として動じない) |
「不退転」は人の強い意志を示す言葉です。いざという時には、この言葉の迫力に負けないような固い決意を持って事に臨むことができるといいですね。
「不退転」を使う場面が来た時のために、意味と使い方をきちんと理解しておきましょう。